それが今日。
昼休みで携帯をチェックすると、カズさんから着信が入っていた。
1回だけなら 間違ったかな で終わるけど、3回の着信とメールが来ていた。
≫至急連絡ほしい。
何かあったんだ。どうしたんだろう。
「今日、ちょっと外で食べてきます。」
「珍しいね。行ってらっしゃーい!」
急いで外へ出て電話をかける。が繋がらない。
とりあえず近くのベンチに座って、膝の上でお弁当を食べることにした。
一口、二口、口に運んだところで携帯が鳴った。
『アコ?ごめん、大丈夫?今。』
「うん、どうしたの?何かあったんでしょ。」
『今日さ、会う予定なかったけど夜ちょっと寄るから』
「あ、うん。分かった。で、どうしたの?」
『うーん。夜にきちんと話す、あとで。とりあえず…知らない人にもし何か聞かれたら、知らないって答えて、相手にしないで。
ごめん、アコ。そばにいてやれなくて。必ず夜いくから。悪い、もう行かなきゃ。』
「あ…うん、いってらっしゃい…」
一体どうしたと言うんだろう。
知らない人ってなんだろう。
きっとカズさんのお仕事に関係することなんだろうけど。
.
幸い私は、カズさんが心配するような “知らない人に話しかけられる” ことはなく、家まで帰ってきた。
心配しているであろうカズさんに帰宅メールをしておく。
>ただいま帰宅しました。
誰にも話しかけられなかったよ。
お仕事、どのくらいに終わるかな?今日はシチューだよ。お疲れ様。
今日の夕食はとりあえず、取り置きのきく物…ってことで、シチューにしてみた。
カズさん食べるか分からないし、食べるとしてもいつ帰るか分からないし。
私とカズさんには変なクセ?こだわりがある。
シチューをご飯の上にかけて食べるのだ。
小さい頃友達の家でやって驚かれて以来、私は人前ではやらないことにしていた。
けど、初めてカズさんとシチューを食べた時、カズさんがシチューをご飯の上にかけたことでとても盛り上がった。
その時のことを思い出して1人ニヤニヤしながら先にご飯を食べた。
寝る用意も全部済んだ頃、携帯が鳴った。
≫今終わった。車乗ったら電話するから。
そして少ししてから電話が鳴った。
『アコ、お疲れ。』
「お疲れ様。カズさん、ごはんどうする?」
『食べる。だから少しにしといたんだよね、弁当。』
「ふふ、そうなんだ。了解。じゃ、気を付けてね。」
『おぉ、じゃ。』
いつもの通り、私はカズさんの帰宅を待った。
ベランダからカズさんの乗る車を待つ。
あ、来た!
しかし、その車はいつもの所で停まらず通り過ぎて行ってしまった。
そっくりだったけど、違ったのかなぁ。じゃあカズさんの車はまだかな~。そのままベランダで待っていると、
ガガッ カチャン
鍵の開く音がした。
え⁉︎帰ってきた!やっぱりさっきのそうだったんだ!
「おかえりなさーい!」
『ただいま。いい子にしてたか?』
「うん、してたよ。いい子にしてた?」
『おぉ、当たり前。』
「ねぇカズさん?今日はなんでいつもの所で車停まらなかったの??」
『あ、あぁ。地下まで行ったんだ。色々あってね。あとで話すよ。ちょ、先風呂いい?』
カズさんがお風呂から上がるタイミングをみて、食事の用意をする。
カズさんは、ごはんの上にかけてあるシチューライスを満足気に見ると、大きなスプーンで数口連続で頬張った。
あっという間に平らげたカズさん。
『ごちそうさまでした。あぁ旨かった。正解よ、やっぱ。弁当よりコッチとって。』
「ふふ。それは良かった。で、そろそろお話聞いてもいいかな。ずっと気になってるの。」
穏やかだったカズさんの表情が一気に曇る。
『アコ、こっち』
カズさんはソファに腰掛けると、自分の隣に座るように言った。
言われた通り隣に座る。
スゥー フゥーー
大きく深呼吸するとカズさんは、ゆっくりと話し始めた。