私達が繋がった日から1ヶ月程経ったある日。
私は仕事帰りに、おしゃれ雑貨屋さんへ寄っていた。
お目当ては…夫婦茶碗と夫婦箸。
“めおと”の響きにドギマギしながらも、お揃いのお茶碗とお箸を2組ずつ探す。
1組は私の家。もう1組はカズさんの家。
私の家で一緒にご飯を食べる時、割り箸を使ってお客様用のお茶碗を使って食べるカズさん。
また逆も然り。
なんか淋しいな~ってずっと思っていたので、買いに来てしまった。
お箸はすぐに気に入った物が見付かったけど、お茶碗が1組しか気に入った物が見つからない。
うーーん、どうしよう。妥協…は嫌だな。
もう1組はまた別に探すことにして、夫婦箸2組と夫婦茶碗1組を購入し帰宅した。
私達のそれぞれの家には少しずつ、お揃いの物が増えていっていた。カズさんと会えない日は、そのお揃いを見てニマニマするのが私の幸せ。
今日は、さっき買ってきたお箸とお茶碗をニマニマ見つめながら一人で夕食を食べていた。
カズさん今ごろお仕事頑張ってるかな~。今日は夜までお仕事入ってるって言ってたもんな~
なんて思いながら。
夕食を済ませひとりまったりとしていると携帯が鳴った。
カズさんからだった。
『アコー?ちょ、帰り寄ってもい?』
「うん、いいよー。あ、カズさん、お疲れ様。」
『おぉ、お疲れ。じゃ寄るわ、あとでね。』
カズさんが帰ってくるのがわかる時は、ベランダでカズさんが乗る車が来るのを待つのが習慣。
今日もベランダに出て外を眺める。待ち遠しくて、まだかなまだかなってウキウキして。
あ、あれかな⁉︎
うーん、違ったぁー。残念。
あ、あれだ!絶対そうだ!!
当ったり!カズさん帰ってきたぁ~!!
私はまるでご主人様の帰りを待つ犬のよう。尻尾フリフリ、ご主人様からのチャイムがなるのをソファで待つ。
♫ピンポーン♫
あ、カズさんだぁ!
「はぁーい!」
スコープで確認してから鍵を開ける。
「おかえりなさい!」
満面の笑みで迎える私。
『ただいま。…って言っても今日は帰るけどね?』
そう話しながらカズさんはいつも通り、カバンをドサッと玄関に置いてリビングへ進んで行く。
「ふぅーん、分かってる…。で、どうしたの?わざわざ。」
『あ、そうそう。今日ね、仕事でこんなんもらってきたのよ。』
そう言って一つの箱をダイニングテーブルの上へと置いた。
『開けてみ?』
「うん。」
開けてみるとそこには1組の素敵な夫婦茶碗。
「どうしたの!これ⁉︎」
目を輝かせて聞くと
『仕事でもらったのよ。俺のためにって作ってくれたの。』
「え?でも、もうひとつのは??だって夫婦茶碗でしょ、これ?」
『あぁ、そのちっこい方ね?それはさ…』
そういうとカズさんは珍しくお仕事の話をしてくれた。
嵐のメンバーの人が、お仕事で陶芸をしたそうで、メンバー 一人一人にお茶碗を作ってくれたらしい。で、収録後「これ、もし良かったら」って、こっそり小さい方のお茶碗もくれたらしい。
『え?なんすかこれ。』
そう聞いたけど、そのメンバーの人は笑いながら「まぁまぁ。受け取ってよ。」
そう言って帰ってしまった。と。
『俺、書いてるのかな、顔に…“アコ”って。』
そう笑いながら聞くカズさん。
「えー?気付いてなかったの?大きく書いてあるよ、“アコ大好きー!”って」
『まじで⁉︎やばいな、それ!』
そう言って自分の顔を両手で撫でた後
『お前もな。』
カズさんは顔をくしゃくしゃにして笑いながら私のほっぺを両側からつまむと、おでこと鼻を私にくっつけ目をジーッと見た。そして、唇が付くか付かないか…のところで離れていってしまった。
カズさんの顔を見ると、明らかにいたずらっ子の顔。
その顔のまま
『じゃ、帰るわ。アコ、戸締まりしっかりな。』
と言って玄関へと歩いていく。
お預けをくらった私は、玄関へと歩いて行くカズさんの背中へと突進して抱きつくと、
「嫌だ、まだ。」
と力を込めて体をくっつけた。
『アコ…。』
振り返って私を正面から抱き締めてくれるカズさん。
「カズさん…」
そう呼んで私がカズさんの首に両手を絡ませると、2人の顔はどちらからともなく近付き…
あと少しで触れ合う!というところで、私はカズさんの唇を避けて頬へとキスをし、そして言った。
「さっきの仕返し」と。
「『………。』」
一瞬お互い笑いを堪えたが、堪えきれず噴き出すように2人笑い合った。
『じゃ、帰るわ。』
「うん、またね。おやすみ」
『おやすみ……。』
唇への不意打ちのキスを残して、カズさんは帰って行った。