ロシア外務省のザハロワ報道官はG7が制裁で凍結したロシアの資産を活用してウクライナを支援することについて「ロシアから盗んだ資金をウクライナ政府の軍事的冒険に向けることは犯罪的だ」と批判した上で「報復措置が必ず取られることになる」と警告しました。
〈中略〉
ウクライナ支援 凍結のロシア中央銀行資産を活用で合意
アメリカ政府の高官は、G7各国の首脳が制裁で凍結したロシア中央銀行の資産から得られる収益を活用しておよそ500億ドル、日本円にしておよそ7兆8000億円の支援をウクライナに行うことで合意したと明らかにしました。
ウクライナへの支援は今年中に始まり、軍事や、人道支援、復興などの分野にあてられるということです。
また、G7各国の首脳はロシアがウクライナに賠償するまで資産の凍結を続けるとしています。
〈中略〉
ウクライナ支援に年内約500億ドル融資へ
イタリアで開幕したG7サミットの首脳宣言の案が明らかになりました。
ウクライナ支援のため、G7として年末までにおよそ500億ドルの追加の融資を行うとした上で、その返済に、凍結したロシア資産の運用益を充てる方向性などが明記されています。
イタリア南部プーリア州で開幕したG7サミットは、14日までの実質的な討議の成果を首脳宣言としてとりまとめる予定で、その案の全容が明らかになりました。
《ウクライナ》
この中では、長期化するロシアによるウクライナ侵攻をめぐり、ウクライナに対するゆるぎない支援を続けていく方針を再確認し、G7として年末までにおよそ500億ドルの追加の融資を行うとしています。
そして融資の返済に、制裁で凍結したロシア中央銀行の資産から得られる運用益を充てる方向性が明記されています。
さらに、中国がロシアに軍事転用可能な物資を提供しているとの懸念が出ていることも踏まえ、中国を含め、ロシアを実質的に支援する第三国の団体に、必要な措置を講じるとしているほか、ロシア産石油を代替輸送するなど、いわゆる「制裁逃れ」への関与が疑われる人物に対し、追加制裁を科す方針も盛り込まれました。
〈中略〉
<G7サミット 議論の焦点は>
ロシアの凍結資産の活用
2022年2月にロシアがウクライナを軍事侵攻したことを受け、欧米や日本などはそれぞれの国内にあるロシアの個人や企業の資産を凍結する経済制裁を科してきました。
このうち個人についてはプーチン政権に近い「オリガルヒ」と呼ばれる富豪などが抱える預金や別荘、それに豪華船などが対象となり、資産凍結などの総額は、2023年3月の時点でおよそ580億ドル、日本円にして9兆1000億円以上に上っています。
今回、焦点となっているのは欧米や日本がそれぞれの国内で凍結したロシア中央銀行が保有する2850億ドル、日本円にして44兆円規模の資産です。
〈中略〉
フランスの経営大学院の教授で3年前までドイツ財務省で金融政策などを担当していたアーミン・シュタインバッハ氏は制裁で凍結しているロシアの中央銀行の資産そのものを没収してウクライナへの支援に使うことは、法的に認められない可能性が高いと指摘します。
一方、資産の利子から得られる収益は、資産を管理する決済機関のものとみなされるため法的なリスクが低く、活用が可能だとの見解を示しています。
そして一連の議論の背景について「アメリカとEUが置かれた厳しい状況を示していると言える。アメリカやEUは国内でウクライナ支援への支持が十分にないなか、ウクライナが死活的に必要としている資金を探している」と話し、アメリカやEUがウクライナ支援に政府の財源以外の利用を迫られていることのあらわれだと指摘します。
また、アメリカが凍結した資産から将来得られる収益も含め最大で500億ドル、日本円で7兆8000億円を融資したい考えを示していることについて「ウクライナにかなりの金額を生み出せるため、よい解決策かもしれないが、戦争がいつ終わるかわからないというリスクが伴う。近く戦争が終わって、収益が無くなったときに、EUやアメリカは自分たちで融資を保証する必要がある」として、戦争が終わった場合には凍結した資産の解除を迫られ、G7は財政負担を強いられるおそれがあるという見方を示しています。