13 インドからの花冠
猿の王ハーヌマン(Hanuman)の物語という魅力ある話が
ある。彼は自分の音楽の才能に高い誇りを持っており、愚かに
も自慢して歩いた。ラーマヤナ叙事詩の英雄ラーマ(Rama)は、
彼の高慢の鼻を折る計画をたてた。
ジャングルの中には、7つの音を7人のかわいらしいニンフ
に変えることができる高貴なリシが住んでいた。ハーヌマンは
このリシの住まいの近くに連れられて行くと、自分の腕前を見
せびらかそうとして、ヴィーナを取り誇らしげにひきはじめた。
ちょうどその時、7人のかわいいニンフすなわち音が、水を汲
みに行こうとしてそこを通りかかったが、音楽を聞くやいなや
震えだし、とうとう死んでしまった。
ハーヌマンはその音を不正確に歌ったのである。妹の音たち
は悲しみをこめて彼女の死を嘆いたのだった。
事のすべてをつぶさに見たリシはにっこり笑ってヴィーナを取
り、大きく音を鳴らした。死んだ音が奏されるやいなや、彼女は
生き返り、その妹の音たちと一緒になって楽しげに喜び合った。
ハーヌマンは恥ずかしさのあまり頭を垂れ、自分の愚かな虚栄心
を懺悔して演奏したのだった。
(クルト・ザックス「音楽の起源」より)