席に戻ってデザートを
食べ終わると出番が
やって来た。
夫は落ち着かない。
最後の最後に新郎の父の
挨拶があるからだ。

両家の両親が前に出て行き
会場が暗くなった。
記念品贈呈が行われる
新郎、新婦一言言葉を添えて
両親に贈られる。
新郎側はあまり格好がつかないが
新婦はいいなぁ、涙を誘う。
『さて、次に、新郎のお父様〜』
夫の挨拶が始まった。
さっきまで必死で覚えてたけど
大丈夫かなぁ。

出だし完璧に入って行った。
次に息子のサッカー経歴に
移る。ここは息子にとって
メインの所なのだ。もっと強調して!
新婦のアスリートとしての経歴は
もっと華やかだ。最近まで知らなかったが、
会場を驚かすほどだ。
よし!クリア。
さて次、若く未熟である事を述べて
諸先輩方のご指導を願うはずが
なかなか夫の話が戻ってこない。
自由に喋っている。えっ、どこで
まとめるの?やきもきしたが
なんとか戻ってきた。
スピーチの内容がわかっているだけに
心配なのだ。何故かって?私が添削したから。
挨拶が無事終わった。
夫と共に深々とお辞儀した。

あっ、思い出した‼︎
30年前、私達の結婚式でこの場面
夫の父が深々とお辞儀した時に
スタンドマイクにおでこをぶつけた。
暗くなった会場でクライマックス
『ボコッ!』という音が
会場に鳴り響いた。
私は不謹慎だけどお辞儀しながら
笑いをこらえていた。

後日、夫の友人が
『お父さんのおでこの網の目
もう消えた?』
ん?しっかりばれていた。(つづく)