宝塚雪組 20世紀号に乗って観劇感想 | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

 

念願だった瀬戸内寂聴日めくりカレンダーを購入したところ、なんと雪組で日めくりカレンダーがはやっているとのこと。

運命? と小躍りしてたら、ページは1月で停車。

慌てて一気に2か月分読むという、ちっとも日めくりじゃなくなってるカレンダー。

気付けば、20世紀号も出発。

ブロードウェイミュージカルの驚異の肉体(歌声)の披露と少々の宝塚のロマンチシズムの混合は、だいきほと今の雪組にぴったりの作品でした。

 

※以下内容に触れてあります

 

 

誰も貶めないコメディーでほっとした。

人工毛髪とかオールドミスとかの意味の笑いじゃなくて、強烈なキャラクターとオーバーリアクションでとる素朴な笑。(※りーしゃとか人工毛髪はあったけどパロディ的に使ってるように見えて不快じゃない)

体を使ったナンセンスな笑いは80年代のバラエティを彷彿とさせる。

テンポのよさも手伝って、とても面白い。

 

まず、歌のうまさ、それ自体で笑える。

笑いってやつは、脳の推理と現実のギャップがあったときに起こるそうで、下手すぎる時だけじゃなく、うますぎても人は笑うのだな、と新発見。

だいもんの「サインをリリー」の時の講談師かよ?!と思うほどの口説の流暢さ、オーディションに来たあゆみねーさんに駄目だしして真彩リリーがクリスティーヌのシンデレラ物語ばりに美声を初出しするシーン、失笑クラスのうまさ。

 

みんなが舞台を駆け回りながら歌うエネルギーの猛烈さ自体が、笑いの下地になってる上に、コメディーの教科書かいってほど、あらゆる手法が使われとる。

 

・出オチ  だいもん、似合いすぎる。ほかの誰がやるより笑える。そのくそ真面目な必死さとくどさがだいもん。

・演じきりトーク  オスカーが、「あーら、リリーさんOXOX」 リリーに出会ったオリバーになりすます芸

・奇声   蝙蝠しか感知できない真彩ちゃんの耳をつんざく高音

・いい間違い  リリーの名前言えないところとか、タモリのインチキ外国語ネタを思い出す。

・キャラ変    オスカーが急にかわいそうな中年男に変身する (一瞬だけだけど)

・手のひらがえし 金持ちとわかった途端、ストロベリートークに切り替えるオリバー(あーさ)

・口から水を吹き出す  よりにもよってあーさがやる 

・モノボケ  咲ちゃんのブロマイド連発

・天丼  同じ台詞・突っ込みを繰り返すこと。多用。ダウンダウンの人志松本が、アメリカでネタやったとき一番受けたのが天丼だって言ってましたね。

・落差  バベットのとこ、まあやちゃんか社交界の人妻バベットとマグダラのマリアに急に切り替わる。ちょっとくどかったけどうますぎて笑いも引っ込む

・音楽ネタ  オぺラ歌手を誇張してヨーデル歌唱したりするネタ。ドリフでは合唱団ネタもあったね。

・セルフパロディ アルカポネ、凱旋門?、鳳凰伝

 

笑いも音楽も、結局は声とテンポだから、そりゃだいきほがうまいわけですよ。

 

ハリウッドvs ブロードウェイ

最後、結ばれるのが唐突に見えるけど、原作だともっと唐突だからしょうがない。

原作だと、オスカーがあまりにリリーの演技に口出し (歩く場所を地面にチョークで引いて指示する。その線が多すぎて排水溝につまった髪の毛みたいに見える)、嫉妬深くて、探偵までやとってリリーの素行を調べたことで、リリーが去っていく。

オスカーはおそらく全く変わっていないので、何故リリーが元に戻るのか尚更わからなかった。

宝塚版で二人が別れた理由をはっきり書いてないのは、わざとな気がする。

 

今回の舞台のほうが、舞台への欲求という共通点と愛情で結びついたことがわかりやすかった。

リリーは成功しても 「生の感動が欲しいのよ」「そのうち飽きられる」 とハリウッドの軽薄さ、底の浅さを感じているように描かれていて、そこがオスカーの舞台に共鳴しあう。

一世を風靡した女の子のアイドルが大人になると脱アイドルをはかって文芸路線、アーテイスト路線に行ったり、フランスやニューヨークに留学するようなものか。

マリリンモンローも、自分のセクシー路線に飽き足らずアクターズスクールに入ったほどなので、オスカーの言う「見世物だ」というのも、ハリウッドの一面であることは事実。

 

オスカーが舞台にこだわって、映画をとことん馬鹿にするのって、学生時代アングラ演劇やってペンキ頭からかぶって絶叫してたような監督が、自分の劇団を辞めた主演女優がブレイクして月九とかで「カーンチ!!とか (これまた古いね) 叫んでるのを見て、「あいつは商業主義に魂を売りやがった」 って罵ってるようなものか。

散々罵倒してる一方で、だいもんオスカーには、本当にリリーの才能を愛してて、将来のことを案じているんだろうなと思わせる包容力がある。

 

リリーは途中までは、映画権とか、女優としてのキャリアとかの現実的なメリットを考えてるけど、結局どちらが得とかの打算でなく、自分の感情に正直になって一文無しの借金だらけのオスカーに飛び込んでくのがすごい。

オスカー本人のヘタレな必死さとかわいげにやられたんでしょう。

別の方もつぶやいてたけど、ほぼ毎月家で離婚騒ぎを起こして、くっついて離れてを永久運動するカップルになるんだろうなあ。

 

■オスカーリリー vs  だいきほ

二人でソファに並んで座っている時の並びがしっくりしすぎてて、この二人は絶対に同じ種類の人間だとわかる。

オスカーとリリーの丁々発止の対等のぶつかりあいが、実力十分のだいきほコンビにふさわしくて本当に嬉しい。

いよいよ充実期に入ってきたんだなあとわくわくする。

 

大好きなのは、オスカーの死の間際のシーン

モノクロ映画風の格調ある音楽に乗せたオペラ歌唱で繰り広げられるやりとりが、あまりの超絶技巧で、芝居かがった効果を強めてて、素晴らしいやらおかしいやら。

死に行くシーンの二人のかけあいのデュエット、声がぴたりとあってた。

ファントムのラストシーンと構図はほぼ一緒なのに、全く違う声質と表現力に愕然とするばかり。

 

劇中の、初めての主演が成功した後愛を語り合う二人のダンスシーもとても印象的。

だいもんはフィナーレのデュエットダンスだと、優しさを作りすぎるんじゃないかと思うことがあるのだけど、劇中のダンスはリードがしっかりしてて硬さの中にとろけるようなロマンティックさが滲んでてすごくよかった。

 

しかも、結婚式!

自分でもびっくりするぐらい喜んで、泣きそうになってしまった。

 

「独身者とは妻を見つけないことに成功した男である。」 byアンドレ・プレヴォー

 

黙れ!

 

「人生最良の時は結婚式の日だった」「最悪の時は?」「それ以後の毎日」 byシティ・スリッカーズ

 

オスカーもリリーも言いそう。

 

「お揃いの茶碗にされる俺と猫」by 第十八回シルバー川柳

 

どちらも長生きしますように。

 

結婚についての格言は、皆さま揃いも揃って糞味噌だけど、かのダントンさんの断頭台の上に立った時の言葉は

 

「おお妻よ、最愛の人よ! 子供たちよ!  お前たちとはもう会えなくなるのだなあ」

 

うわああーーん、ダントン!!

(ちなみに、結婚に対する男性のいい言葉はこれぐらいしかない)

 

実生活とはなーーんの関係もないのに、舞台上でトップコンビがハッピーエンドで結婚ってだけで、なんでこんなにはちゃめちゃに嬉しいのか。

興奮しすぎて3階席から転げ落ちそうになった。

まさしく明日への活力。

 

■ブロードウェイの王と呼ばれた男・望海風斗

今回 「ブロードウェイの王と呼ばれた男」って歌ってるけど、だいもんってめっちゃキャッチフレーズついてる。

 

夢をうる男( 曲名)  → ベネディクト

顔に傷持つ男 (曲名) → アルカポネ

全てを手にした男 (曲名)  →ドンジュアン

巷で話題の時を越えるカリオストロ

 

どや顔して名乗るのが似合う濃さってことですね。

久しぶりにだいもんのアク×顔を見れて嬉しい。(コードOK?)

 

ずるいな、って思うのはどこかに純粋さがにじんでるところ。

いい意味で、おっさんの哀愁が出る。

 

オスカーがスパークしていないときの演技がソフトで、きゅんきゅんする。

特別室Bでリリーが暴走してるのを奥のソファで待ってるところ、余裕があってジェントルマンな色気がたまらない。

もぐもぐ食べてるところ、超エレガント、超セクシー!

 

あげく、それまでと全然違う、落ち着いた優しい声色で、

「気が済んだ?」

 

こ、これは、これまでのだいもんのやってきた役の台詞の中で1,2を争う名台詞ではないか?!

 

SVスパボイ風に言うなら、Have you done???

イケオジvsイケメンの恋のさやあては、だいたいイケメンの勝利で終わるけど、そりゃブルース、負けるわ。

最後、リリーの本名を呟くとき、寂しげで、真実味がにじみ出ちゃってるのはほんとにずるいと思う。

 

 

■グラミー賞ならびにオスカー賞:真彩希帆

リタ・ヘイワースみたいな美しさ。金髪ゴージャス美女、銀幕の女優役、はまってる。

「サインしてリリー」 のところ、ミュージカル的には意味がいろいろあるらしいが、リリーめっちゃかわいそう。

だって、汽車の中っていう密室空間で、死ぬほどうるさい元カレ今カレにはさまれて、キャリアダウンかもしれない転職を一人で決めなきゃいけないんでしょ? 

エステ初回いったら別室連れてかれて、やり手のおねえ様方に囲まれて契約迫られるようなもんじゃないか、しかも六重奏。ブルースはなーーんの役にもたたないしねえ。

そんな狂騒の中で、迷いつつも流されず自分を貫けるリリーという女性像は素敵だし、真彩希帆というトップ娘役によく似合う。

 

リリーが契約書のサインをためらってるとき、オーディションで伴奏を始めたときと同じポーズで気合入れてるのを見て、リリーの中の素の女の子が見えた気がしてぎゆっとなった。

すごくバチバチ言い合ってるんだけど、オスカーに惹かれてる部分がちゃんと見える。

ソロナンバーもそうだし、好きだからあんなにムキになるんだろうな、とか真彩ちゃんリリーはただの自己主張の強い女じゃなくて、そこはかとなく愛が見えるのがうまい。

 

■ベストドレッサー賞: 彩風咲奈

あまりにバンバンドアに叩きつけられてつぶれるから、壁に人の形の穴開けて逃げる昔の漫画思い出した。

 

頭の足りない馬鹿役、はまってます。

添加物一切なしのオーガニックな馬鹿

バカなのに品性が卑しくないのがいい。

オスカーの死の時無駄に号泣してるし、結婚式の時はるんるんになってるし。

 

それにしてもリリーにとっての咲ちゃんの存在って、金魚並み

一応大事に買ってはいるけど、間違って死んじゃったり排水溝に流しちゃっても、まあいいかっていう存在の軽さ。

 そういうのに救われるときもあります。

 

スタイルのよさも、甘くて高めの声も、全部面白いほうにふっきれてとってもいい。

衣装見たときに組子が笑ったっていってたけど、あんなピンクのロンパースみたいなスーツ着て、まるで揺るぎない脚の長さ。

確かGQでベストドレッサー賞をもらってた韓国の俳優さんが、トムフォードの全身ピンクのスーツ着て、「人間イチゴミルク」「人間エチュード」「ピンク王子」ってほとんど悪口でしかない褒められ方してたけど、咲ちゃんにも謹んで「人間ストロベリーフラペチーノ」の称号をお送りします。

 

 

■すさまじきは宮仕え:

まなはるのオリバーと、あーさのオーエンは原作よりオスカーとの上下関係を強調したことで、なじみある新橋・有楽町感覚が出てぐっと親近感がわく。

三銃士じゃなくて水戸黄門あんたら助さん格さんや、と思うけど、あーさがでろでろに酔いつつも、リリーに 「オスカーはいいぞ (才能があるぞ)」ってにやりと言うところ、凄みがあってとても印象的。

きっとこの二人も舞台馬鹿なんだろうなあ。任侠すら感じさせるチームワークが見事でした。

 

 

■翔ちゃんで賞 

翔ちゃんの声で車内放送が入るとほっとする。一番まともな人間。

台本は売りこみに来るけど、一曲歌うほど押すけど、ぜんっぜん理解可能。

車掌姿なのになぜか隠しきれない二枚目感があります。

翔ちゃんが翔ちゃんでいるだけでありがたい。

 

タップのシーンは、屋根にあたる雨みたいな弾んだ音で楽しかった。

ブロードゥエイでタップを多用するのは、1にも2にも、肉体で歌う、肉体で表現する、の精神。

訓練され統制された体を誇る技術でもある。

宝塚のタップは、それより人肌を強く感じる

細身の妖精たちの靴音は軽やかで、鼻歌やスキップのような楽しさがあっていとおしい。

 

本年度最優秀助演女優賞にはもちろんプリムローズ演じる京三紗さん、最優秀男優賞にジョンソン先生演じる久城 あすくんを謹んで推薦させていただきます。

 

 

 

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