青い空。
赤い太陽。
風にそよぐ緑たち。
駆け抜ける女子高生の黄色い声。
休憩中の作業員がくゆらせる紫煙。

「いい天気だなあ。」
「ん~、俺もう眠い。」

堤防沿い、寝転がる俺の頭の下にさっとマンガ雑誌を差し込む
黒目がちな優しいひと。
頬にあたる風が気持ちよくて、ますます眠気を誘う。

「眠いけどさあ、それより腹減った。」

隣に寝転ぶから、自分の下にあるマンガ雑誌を引き抜き渡そうとすれば
いらないと腕で示され、その腕を枕にする。

「あー、あの雲うまそう!食えないかなあ。」
「ふふ、小学生か。」

そう言いながら俺も想像する。
ふわふわの白い雲は確かになんだか美味しそうに見えた。
ふと思い出し、長い腕を伸ばし、届かないと情けない声をあげる
隣の男のくちにポケットに入っていた小さな粒を押し入れた。

「ん、うま!でも、これじゃたりないっ。」
「はいはい、で。なにが食べたいのよ。」

仲間との待ち合わせはあと少し。
その前にキャッチボールでもしようって言ったのはあんただろ。
誰より張り切り誰より腹を空かす、誰よりめいっぱいのひと。

「あの雲みたいなぁ、んーと。あ、クリームパン。」
「は?昼飯パンでいいわけ?」
「それじゃ足んねえけどぉ、うまそうじゃん。あのクリームパン。」

空にはたくさんの白い雲。それらのどれがクリームパンなのやら。
なんとはなしに探していると隣から視線を感じた。

「なによ?」
「雲よりニノの手の方がクリームパンみたい。」
「はい?」
「うっまそー。」

ニヤリと笑って襲いかかって来るバカを反射的に避ける。
俺の手を狙ってくちをパクパクして、まじで小学生。
バカすぎる、けど、嫌じゃない。
大声で笑いながら転げ回る俺たちに聞き慣れた低音が降って来た。

「なにしてんの、お前ら。」

呆れた声だけど面白そうに目が笑ってる。
その低音ボイスの撫で肩の後ろ、さっき隣で眠いと言ってた人よりも
数十倍眠そうな小柄な男と、そいつを支えてる身体を時折ずらして
イタズラに笑う眉の凛々しい男。
仲間が揃った、さあ、昼飯だ。
さっと起き上がり、マンガを隣に押し付けると
当たり前に受け取りながら、そいつも尻をあげた。

「ちょっと、翔ちゃん聞いてよ。こいつ俺の手をさぁ。」
「翔ちゃん、翔ちゃん。まずは俺の話をっ。」
「はいはい、ほら、行くぞ。」

撫で肩にまとわりつきながら歩く俺たちを
キャンキャンうるせーなんて笑う凛々しい眉。
歩きながら器用に寝てるひと。

青い空。
赤い太陽。
風にそよぐ緑たち。
駆け抜ける女子高生の黄色い声。
休憩中の作業員がくゆらせる紫煙。

至極平和なある日の俺たち。






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なんとなく、思いついたお話。
いきなりアップしてみましたw
のんびりとね、梅雨前のこの時期ならではのかんじ。
リアルか、アンリアルか。年齢は?この人たちの関係は?
いろいろ想像してみてくだしね(丸投げか!)