『PERFECT DAYS』。 | アーシングエブリナイト

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10年間、夜は導電性シートを使ってアーシングをしながら寝ています。目覚めた時、ゼロボルトの脳とカラダは純正の私そのもの。紡ぐ言葉も私そのものでありたい。

『PERFECT DAYS』。(パーフェクトデイズ)

カンヌ国際映画祭で主演の役所広司が男優賞を受賞した作品だ。

鑑賞前の情報で、

監督がドイツ人であること、

主人公平山(役所)が初老で寡黙で、生業が公衆トイレの清掃員であること

などから、日本人に対する思い込みあり、初老男性のありふれた孤独ありの

普通の映画と思っていた。

でも違った。

平山の判で押したような日常は、彼が必死でしがみつく唯一無二の彼の人生そのものである。

彼の日常は人を憎んだり恨んだりしなくていい世界、

差別のない公平な世界だ。

そこで彼は「好きなもの」を慎重に選び、求め、愛しむ。

消極的で意気地のない生き方だろうか。

違う、と思う。

差別のない公平な世界で生きることの晴れがましさー彼にはそれがある。

人が人生をかけて辿り着いた幸福感ともいえないか。

映画では平山のそれまでの人生についてほとんど触れていない。

圧倒的な幸福感を前に、過去の説明は無用なのだと感じた。

 

ラストシーンが素晴らしい。

平山を幸福感へ誘う好きなもののひとつに

職場への行き帰り、車中で聞くカセットテープある。

繰り返し聞くことで彼の感情と一体化したかのような名曲たち。

この日、朝焼けの中、仕事に向かう車中を流れるのは、

ニーナ・シモンの『Feeling Good』。

リフレインされる歌詞がある。

It’s a new dawn,it’s a new day,it’s a new life for me

(夜が明けて、新しい一日が始まる、さあ、私は私らしく生きる)

And I’m feelin’good

(なんていい気分)

ここ数日、平山には人の優しさに心揺さぶられるいくつか出来事があった。

歌声に気持ちが高まったのか、

ハンドルを握る彼は泣き笑いのような顔になっているー

 

 

私は大切な人を送った。

これまで、何度も取り返しのつかないことをしてきてその度に

落ち込み苦しんだ、と思ってきた。

でも、それは間違いだった。

彼を失うことこそ取り返しのつかないことであって、

それ以外のことは、いくらでも挽回できて、実際そうしてきたではないかーと。

そう考えて

彼はそれを気付かせてくれたのだと悟った。

これからの人生、何も怖がるな、と私に告げているのだ、と。

『PERFECT DAYS』。

ラストの主人公の泣き笑いの顔。

私も確かに同じような顔をして

ありがとう、何度もそう言ったのを覚えている。