【連載:和田彩花の「乙女の絵画案内」】
新年2回目の更新が有りました
第9回/スーラ『グランド・ジャット島の日曜日の午後』
http://shuchi.php.co.jp/article/1743
ここから転載
目を開けたら急に好きになっていた
点描で描かれた絵が好きになった瞬間を、いまでもはっきり覚えています。
点描とは、ポール・シャニックや、今回取り上げる『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を描いたスーラが用いた絵を描く技法で、絵具を混ぜず、点のようにキャンバスに色をのせていくものです。
そのときまで、私のなかで点描の絵というのは、目が疲れるなぁといった感想しかありませんでした。
西洋美術館に展示されていたシニャックの絵を初めて観たときも、その細かさに目が疲れてしまいました。
そこで、ちょっとだけ目を閉じて、頭の中でそれぞれの色を混ぜてみました。
そしてふたたび目を開けて、しだいにピントがはっきりしてくると、1つひとつの点が、感動的に溶けあっていたのです!
そのとき、点描という絵の描き方が好きになりました。
中略
理想的な日曜日の午後
色を追い求めたスーラにとって、最高のシチュエーションが、この絵のモチーフであるグランド・ジャット島だったのでしょう。
中略
私がこの絵で気になったのは、日傘をさした女性の顔の白さです。
日陰にいて、日傘もさしている女性の顔が、なぜか光があたっているかのように真っ白。
なんだか不思議な感じです。
絵を観ている人に、まずこの女性に注目してもらいたかったのでしょうか。
この女性は、紐でつないだ猿を連れています。
このころは、猿を飼うのが流行っていたのかな?
中略
芸術家としての探究心
それにしても、点描という技法は、その作業を想像すればするほど気が遠くなりそうです。
どんなふうに点を並べていけば絵になるかを、絵から少し離れた自分を計算しながら描いていく。
冷静な分析力と、それを実行に移す精神力がなければ、絶対に完成できないと思います。
アートのなかでも、サイエンスに近いのが点描ではないでしょうか。
そこまで突き詰めてしまった、スーラの芸術家としての探究心を尊敬します。
絵もすごいけど、本人はもっとすごい!
中略
2013年、国立新美術館で開催されていた展覧会『印象派を超えて――点描の画家たち』で、初めて、スーラが描いた絵と出会えました。
点描画は、だれが描いても同じなんじゃないかなと思っていたのですが、直接観てみると、かなり違っていたのが驚きでした。
スーラは、点が細かくて几帳面な印象。
1つひとつの点がすべて同じ大きさなのではと思えるほどです。
やっぱり絵画は、実物を観ないとわからない。
『グランド・ジャット島の日曜日の午後』を完成させるまでの、スーラの執念のような日々に想いを馳せます。
縦約2メートル、横約3メートルという大作を描くのは、とても大変だったことでしょう。
スーラは、きっと心がすごく強いのだと思います。
精神の強さ。
科学者のような探究心。
当時登場したばかりの絵具も、いろいろ使っていたそうです。
スーラの人生は、残念ながらとても短いものでしたが、彼が画家として求めたものは、時間を超えて、現在でもたくさんの人の心をつかんで放しません。
そのことを、1人の絵画ファンとしてとても幸せに感じます。
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2月16日まで広島県立美術館で
『印象派を超えて 点描の画家たち』
が行われています
和田彩花さんがブログで紹介しています
http://ameblo.jp/wadaayaka/entry-11748300136.html
【第8回】 ルブラン『薔薇を持つマリー・アントワネット王妃』
http://shuchi.php.co.jp/article/1743
【第7回】 アングル『泉』
http://shuchi.php.co.jp/article/1734
【第6回】 レンブラント『夜警』
http://shuchi.php.co.jp/article/1713
【第5回】 薬師寺『麻布著色吉祥天像』
http://shuchi.php.co.jp/article/1695
【第4回】 ルノワール『陽光の中の裸婦』
http://shuchi.php.co.jp/article/1660
【第3回】 モネ『舟遊び』
http://shuchi.php.co.jp/article/1658
【第2回】 マネ『鉄道』
http://shuchi.php.co.jp/article/1640
【第1回】 フェルメール『手紙を書く女』
http://shuchi.php.co.jp/article/1615