11月にAERAから蜷川実花撮りおろしの『羽生結弦 孤高の原動力』が発売されると話題になっている。

テーマは「MAGMA」、あまりも強烈な赤の奔流に眩暈がするが、「閻魔様さえ喰らった」阿修羅ちゃんの最終形態のようにも見える。

MAGMAの伏線だったのか?阿修羅ちゃんは赤が良く似合っていた。

 

最新のGiorgio Armani(ジョルジオ・アルマーニ)のコレクションでも赤をメインカラーにしているが、豪華な赤いドレスを纏ってランウェイのトリを飾ったスーパーモデルでさえも、羽生選手のMAGMAインパクトの「美」には敵わない。

彼女は確かに美しいが、比較するとどこか物足りないのである。

羽生選手が衣装に命を吹き込む才能は本当に神!

GUCCIに続き、アルマーニからもお誘いがかかるかもしれない。

 

MAGMA衣装は昨年に引き続き、オートクチュールデザイナーのYUIMA NAKAZATO(中里唯馬)の作品である。

中里はケニア・ナイロビのゴミ山を前にしてインスピレーションを受けたそうで、北斎の浮世絵『凱風快晴』、通称

「赤富士」がヒントだそうだ。

ゴミ山の画像を赤色に変換させることで、風景の一部を切り取ったかのようなグラフィクが形成された。

 

大量ゴミから高価なオートクチュールがイメージされたことは驚きであるが、水の使用量が少ないデジタルプリントを採用したり、大量に破棄された衣類の再生活動など、地球環境に配慮したコンセプトを貫く中里らしい作品だ。

ナイロビのゴミ問題は深刻で、土壌汚染や海洋汚染、大気汚染などを引き起こす元凶ともなっている。

根底にあるのは貧困問題や格差社会であり、日本をはじめとする先進諸国の援助はまだ十分とは言えない。

しかし、中里のような気鋭の若いデザイナーがSDGs

(持続可能な開発目標)の観点に立つ作品を発表することで、社会に環境問題への関心が高まっていくことを期待したい。

 

蜷川実花は、昨年にもAERAでYUIMA NAKAZATOの衣装を纏う羽生選手を撮影した。

その中の一枚がボストン美術館の「北斎展」に掲載されたと話題になっていたが、写真の構図が北斎の名画

『神奈川沖波裏』に似ていたためらしい。

※赤も似合うが蒼も似合う羽生選手。

 

※北斎の名画『神奈川沖波裏』

カメラマンやデザイナーが超一流でも、モデルがそれに負けないくらいのインパクトを持つ表現者でなければ、作品はおそらく輝かない。

羽生選手の容姿や芸術的才能は、今映像や音楽界、ファッション界など様々な分野のクリエイターに刺激を与え、創造意欲を掻き立てているようだ。

 

中里の創る衣装はホログラムや特殊素材を用いた最先端で革新的なものが多いが、羽生選手と親和性が高いように思う。

数年前に発表した中里のコレクションでは、モデルがオーロラをイメージしたドレスを着ていたが、『ホプレガ』の衣装とどこか似ているのだ。

※麗しのホプレガ様、この美はまさに芸術

 

 ※斬新だがどこか優しいホログラムドレス

自分としては、顔にもキラキラメークをした羽生選手が、

中里の最先端衣装で滑る姿をいつか見てみたいと思っている。

曲は『いつか終わる夢』のような電子音楽で、できれば

冨田勲がシンセサイザーで演奏する、ドビュッシーの

『月の光』だったら最高だなどと妄想は尽きない。

プロに転向した羽生選手は様々な分野との交流を深めながら、自分が目指す「フィギュアスケート道」を更に極めてほしいと思っている。