方向 | 古今亭志ん輔 日々是凡日

方向

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7時 起床。
食パン一枚、体操、声馴らしをバタバタとやる。
10時 落語協会に向かった。
10時30分 上野御徒町に着く。チェーンのコーヒー店でエスプレッソ 170円也。実はエスプレッソなんかどうだってよかったのでトイレが私を呼んでいたのだ。ところがこんな時に限ってまた「使用中」くくっ・・。心の平静を身体に伝えても体内の自己主張が優っているようだ。今一度と表示を覗くと「使用中」のランプが消えていた。ほぅ!と叫んで(勿論心の中で)何事もなかったかのように席に戻った。いい一日になるかも知れない。
10時55分 落語協会に着くと殆んどの方々が揃っていた。
12時45分 楽屋入り。ほぼ満員のお客様だがなかなか手強い。「目薬」で千秋楽。
14時 日比谷線 上野駅ホームにいる。これから三ノ輪まで行ってデッサンだがかなり遅刻。短時間で仕上げる練習にはなるのかも?
16時 デッサンは惨憺たる物だったが帰りの日比谷線でヤン先生と二人きりになった。
「ねぇ、先生」「ナニ?」先生は中国人なのだ。「この電車の中で今描くとしたらナニ?」「ニンゲンは?」「人間以外で」「じゃあ、吊り革」「なんで?」「ニンゲンにイチバンチカイデショ」「なるほど」・・云々。
今度は先生が言った。「絵はさぁ」もうカタカナはやめます。「絵はさぁ、描き足したかったらモデルを若干変形してもいいんだよ」「条件は?」「それによってインパクトが強くなればね」デフォルメはデッサンでも必要だということのようだ。それならばとまた尋ねた「漫画家の方が自身の絵の個展をすることがありますが 私は見たい気持ちより見たくない気持ちの方が勝るのは何故なんでしょうか?」「それはね、それ以上の物がそこにないからじゃないかな。それが全てで完結しているわけでしょ。それから重みだな」秋葉原で総武線に乗り換えて一人考えた。最近落語をやる時ザックリやる部分を作ることにしている。雑にやるのではない。観客に考える幅を与えるということだ。一から十まで説明していたらその都度受けるかも知れないが観客はそれ以上の刺激を与えられることはないだろう。観客が自分で想像して増幅すれば1の笑が勝手に5にも10にも成り得る。その幅を与えながら噺を進行する時観客席と一体になることがあるしこんな嬉しく楽しいことはない。自分のやり方が全てだとは決して言わないがヤン先生との話の中で自分が間違った方向に行ってはいないことを確認できた。
17時 錦糸町トリフォニーホール事務局で五島氏と最終打合せ後帰宅。