マニアというほどではないが，電車の中で読む本は推理小説がほとんど。
よく読んでいるのが夏樹静子さんの作品。私の感性に文章があっているのか。スムーズに読める。もちろん内容も面白い作品が多い。講義の参考になることも出てくるので，そういった意味でも夏樹さんの小説には興味を惹かれる。
勉強の参考にはならないかもしれないが，「量刑」，「蒸発」，「デュアルライフ」，「第三の女」などはお薦め。
今，読んでいるのが「Ｗの悲劇」。この小説は製薬会社の会長和辻与兵衛の殺害という和辻家の悲劇を描いた作品。この小説の一部をお借りして，相続の基本問題を作ってみました。簡単ですが，やってみて下さい。
問 下記の文章中の（ ）に，後記の語群の中から最も適切な語句を補って，文章を完成させよ。
「与兵衛氏はとくに遺言を拵えておられなかったようだし，また実子がなかったわけですから，法定相続人は奥さんと兄弟姉妹ということになります。兄弟姉妹の中で死亡された方がいて，その子に子供があれば，子供が（ ）できることは，みなさんの御承知のとおりです。したがって，今回のケースでは，妻のみねさん，末弟の繁さん，亡くなった妹の娘である淑枝さん，同様に亡弟の息子である卓夫さんの四人が，相続権をお持ちなわけです。民法の規定によれば，この場合は妻に（ ），残りの（ ）をほかの三人で分割することになりますが，なにぶん遺産が巨額なのだから，各人の相続分も大変な額にのぼるでしょう。」
中里が何をいい出すつもりなのかと，一同はまたそろそろと顔をあげて彼を窺った。
「ところが，民法の相続に関する規定の中には，（ ）の条項もありましてね。一言でいえば，不届きな行為をした者には相続の資格がなくなるということです。民法第８９１条の第１項には，被相続人を死に至らしめた者は相続人となることができないと明記されているが，これは常識としても，その２項には，被相続人が殺害されたことを知って，これを告発又は告訴しなかった者もまた相続権を失うことが定められているのです。」
＜語群＞ 相続人の廃除 相続欠格 ３分の２ ３分の１ ４分の３ ４分の１ 代襲相続 相続の放棄
できましたでしょうか。
答えは順に「代襲相続」，「４分の３」，「４分の１」，「相続欠格」。
関連条文；民法第８９１条（相続人の欠格事由）
次に掲げる者は，相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ，又は至らせようとしたために，刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って，これを告発せず，又は告訴しなかった者。ただし，その者に是非の弁別がないとき，又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは，この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって，被相続人が相続に関する遺言をし，撤回し，取り消し，又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって，被相続人に相続に関する遺言をさせ，撤回させ，取り消させ，又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し，変造し，破棄し，又は隠匿した者
第２項の告訴と告発の違いについても，小説を引用させてもらおう。
「告発と告訴とはどんなふうにちがうのかね」と繁。
「それをする者と，被害者との続柄のちがいだけしょう。確か，配偶者と直系親族，兄弟姉妹が告訴権者で，それ以外の者が犯罪事実を告知することが告発に当たるんだと思いますよ。」
調査士試験の勉強での相続欠格は，「相続権を失う事由の一つ」ということだけを押さえておけば，今の過去問レベルでは十分ですが，欠格事由を一つ一つ確認したいという人は参考にして下さい。
１４日の月曜日に，２人の受講生と残念会をやりました。
Ｋの悲劇にＨの悲劇。
もっとも，Ｋさんは３月の大震災で怪我をして，その後遺症からペンが握れなくなり，今年の試験は受けることさえできなかったとのこと。
「１年後は祝勝会をやろう。」と誓った二人が，今年の悲劇を糧にして，来年の合格を勝ち取ってくれることを願っているところです。
今年の試験，悲劇だった諸君，来年の合格に向けて，一日一日無駄にせず頑張って下さい。