片隅 夏喜⑥ | ♡妄想小説♡

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主に妄想記事をあげています。作品ごとにテーマ分けしていますので、サクサク読みたい方は、テーマ別にどうぞ。 ※物語はすべてフィクションです。  
たまに、推しへのくだらん愛も叫んでます

なるほど、そういうことか、と思った。



雨が残る駅前、希子と一緒にいたのは、北人だった。



図書室に寄るから先に帰ってて、そう言われて、俺は一人で学校を出た。



だけど、駅に着く頃に雨が本降りになってきて、希子のことが心配になった。



"傘持ってる?"



"今どこ?"



何度かラインをしても、全く既読にならない。



あんまりしつこくするのも性に合わなくて、そのまま電車に乗ったけれど、どんどん強くなっていく雨と共に俺の心も同じようにざわついた。



普段、スマホの返信は早い方の希子。



もしかしたらこの雨で、事件とか事故や、変なことに巻き込まれていたら。



いや、もしそうでなくても、傘を持たずに、学校から出れずにいるのかもしれない。



とうとう俺はもう一度電車に乗り引き返した。



迎えに来た、と引かれたとしても、傘がなくて濡れていたら心配だった、と伝えよう。



再び駅に降り立った時、スマホを確認したけれど、やっぱり既読は付いていない。



今どこにいるのだろう、着信をかけた瞬間だった。



見えたのは、希子の後ろ姿だった。



こちらに背を向け、誰かと向かい合っている。



その向かいにいたのは、北人だった。



一瞬にして、心臓がドクン、と跳ねる。



二人は、一つの傘を分け合うようにして立っていた。



希子、とすぐに声をかければよかったのかもしれない。



傘がなくて、北人が送ってくれたんだ、ありがとう、って言えればよかったのかもしれない。



今、希子に一番近いのは、この俺だ。



北人なんかよりも、俺が一番、希子に近い存在なのだから。



だけど、二人のその異様な雰囲気に、俺の足は一歩も動かなくなってしまった。



ぽつぽつ、と雨が弱まっていく中、二人のシルエットが、完全に、一致した。



スマホを持ったままだった右手がだらん、と下に垂れる。



ふらりと、体ごと揺れてしまいそうだった。



やっぱり、希子は、北人のことが好きなんだ。



俺がどんなに希子のことを好きでも、彼女の気持ちは、抑えられないのかもしれない。



俺が希子のことを好きな気持ちが、消えないのと同じように。



そう思わせたのも、二人のシルエットが重なったのは、希子の方から近づいたような気がしたからだ。