忘れられない、6年前の昨日と今日。
開け放したドアから家出をして、コタロが迷子になって20日間ほど経っていた。
もともと家猫で、近所を散歩したこともないコタは好奇心にかられて外に出て、そのまま忽然と姿を消してしまった。
実家からすぐの距離にバスロータリーもあり、車に驚いて走ってしまったのかもしれない。

家族から連絡を受けて、震えながら迷子のチラシを作った。家の中で撮ったコタの写真を貼り、祈るような気持ちで携帯番号を入力した。

見つかるまでの20日間は地獄だった。
不安と焦り、胸が苦しくなるほどの後悔と心配。
当時コタと私は一緒に暮らしていなかったので、後悔なんてしても仕方ないのに、頭の中はコタのことだらけだった。
夜、眠れない時間はコタを思ってテレパシーを送った。
「必ず見つけに行くから、待っててねこっちゃん。待っててね、待っててね、待っててね…」
目を固く閉じ、両手を力いっぱい組みながらコタを思った。

誕生日の朝、公衆電話から着信があった。
電話の主は幼い女の子。
「あのね、ポスターの猫ちゃん見つけたと思うよ。ポスターに書いてある、水色の首輪はしてないの。でも多分、おんなじ猫ちゃんだと思う」
彼女はひと息に言って、ちょっと大人のひとと変わるから待ってください、と付け足した。
そこから、野良猫に去勢・避妊手術や餌やりをしている高齢の女性につながり、まだ保護はできていないことを知る。

その足で探しに行っても見つからず、次の日。
家から1キロほど離れた雑木林の中から、コタは必死で鳴いて出てきた。
体は空腹でペシャンコになり、顔は頬骨が浮き出ていた。でも、生きていた。
探す時に使ったのは普段から使用しているステンレスのごはん入れ。カリカリを数粒入れて音を立てながら、何度も名前を呼んだ。いや、ほとんど叫んだ。

あれから6年。
コタは元気で、今日もごはんをたくさんねだる。
誕生日が来るたびに思い出す。
コタが見つかった、最高の誕生日を。

写真は、保護した後に病院へ行く途中で撮った。どうにも気が動転していて、病院でこれを見せなくてはと思いながら撮影した記憶だけが残っている。

Twitterや街の張り紙で、迷子のワンコや猫さんを知ると、どうか見つかりますようにと祈る。
飼い主さんの、自分を責めてる心が伝わってくるようで悲しくなる。

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