みなさま。
新年 おめでとうございます。
2023年も よろしくお願い申し上げます。





本日は、
0時 7時 17時の 3回に渡り、
Make a wish と称して
櫻葉さんの新年の短編をお送りします。


お読みいただけると幸いです。






⭐︎⭐︎⭐︎






 
年が明けた。

年越しそばも食べた。

テレビの あかしろがんばれ大合戦も、
最後まで見て、

除夜の鐘も聞いた。



LINEで友達と
「新年おめでとう」
「さくしょー。あけおめ。」
「A Happy New Year! しょおくん」

とひとしきり
テンプレートの あけおめ のご挨拶を
お互い交わせば、
ひとまず夜はふけ、沈黙に包まれる。




「つまんねぇな。」
一人ほざいてみても、
誰も返事する人のいない アパートのがらんとした部屋で
寂しく呟いてみる。




今年は実家にも帰らなかった。
大晦日の午前まで、ぎゅうぎゅうに詰まった仕事達。
世はリモートやら
学生さんは17連休とかほざいているが、
俺たち運送関係には、
この時期が書き入れ時だ。

大学の片手間で始めたバイク便の仕事だが、
社会の役に立っている自分を実感できる大事な場所だ。

俺を成長させてくれるだけではなく、
いろいろな人との繋がりや語らいが
大学で学問に励みながらも、
就職前のモラトリアムにいる俺に刺激を与え、
これから社会で働くのだという緊張感と希望をくれる。


とはいえ。

一人で過ごす元日の夜ほど
つまらないものはない。


「初詣でも行ってみるか。」

部屋着に、
ダウンをつっかけて。


近くの神社へと出向いて行った。









・・・



「お。あった。あった。
ここ、ここ。

お、意外に賑わってるじゃん。」



アパートの近くの神社。

バイクで通りすがりに
急な石段と鳥居をみて 雰囲気のある神社だなと
横目で見てはいた。

いつもは
鬱蒼と茂った木に囲まれた静寂な場所は、
今日は
元旦を迎えるとあって 
お屠蘇を振る舞う場所や、
巫女さんが破魔矢やおみくじを社務所に並べていたりして
すごく賑わっている。


ぱんっぱんっ

柏手打って 心の中で
今年の抱負をなん度も念じる。



・・・
可愛い恋人
可愛い恋人
可愛い恋人と幸せに暮らせますように
・・・




よしっ。

これで帰るか。


石段を降りようとした時だった。





あ、
お守りが落ちてる。



これ、兎の絵柄だ。
今年の干支だ。
きっと、買った人が落としてしまったのだろう。

緑のお守りに
今にも飛び出しそうにジャンプする兎が縫われた図柄。



うん。
社務所に届けなきゃ。

きっと、落とした人は困っているだろうからな。



社務所の方に届けに行くと、
社務所にいた貫禄がある神主さんがにっこりと微笑む。



「この子。
いや、このお守り、
あなたのそばにいたいようですよ。」



「え?でも?」



神主さんはお守りをそっと俺に突き返す。


「持っていてあげてください。

きっと、
あなたにもいいことが起こりますから。」



何かを得心したような神主さんの言葉に押されて、
その可愛いうさぎのお守りを掌の上に、そっといただく。



「は、はい。
じゃ、じゃあ、失礼して。
ありがとうございます。」




神主さんに、
頭を下げると、



俺はそのお守りをギュッと片手で握り締め、
スウェットのポケットに無造作に突っ込むと
急な石段を降りて行った。







⭐︎つづく⭐︎



あ、コメント非公開です。