「どいてっ。どいてっ。どいてっ。!

江戸の往来、砂利道を、
裾をからげてかけていく。
手に携えたのは俺の命でもある刀。
肌身離さず身につけてる。



「おうおうっ。雅。
今日も威勢がいいなぁっ。

何かあったのかいっ。」


太腿さらけ出して、
必死で駆けてく俺に、
周りの野郎が声をかける。




「なんもねぇよ。
だけどなっ。
行きたいところがあるんでぇ。」



声をかけられたものの
すごい勢いで走っていくのを止めなかったものだから、
片手で刀。
片手で着物の裾を握りつつ
振り向きながら答えてやる。




だってなぁ。


愛しい翔ちゃんの頼みとあれば、
何がなんでも
1秒でも早く馳せ参じる。

それが、
俺の生きる意味ってやつよ。



だっだっだ。

俺のいく後ろには砂煙。
足元が真白の煙となり、
剥き出したふくらはぎに小石が跳ね上がるが
そんなことは、
かまっちゃいられねぇ。


松本家の雅様のお通りだいっ。


俺の方をうっとりと見つめる町娘や茶屋の看板娘など知らんぷり。
俺は翔ちゃんのところまで、
足をもげるくらい必死に動かした。




⭐︎つづく⭐︎