ドビュッシー:ピアノ名曲集(月の光/アラベスク/月の光がふりそそぐテラス/沈め
        る寺/雨の庭/雪が踊っている/亜麻色の髪の乙女/パスピエ/グ 
        ラナダの夕べ/ゴリウォーグのケークウォーク/夢/夜想曲)

ピアノ:モニク・アース

CD:RVC R32E-3019

 ドビュッシーの音楽は印象派の絵画を思わせる。フランス音楽自体が理詰めというより、感覚の発露といおうか、情緒が中心に展開されるところがある。それに対してドイツ音楽は哲学的で論理的だ。日本人がクラシック音楽というと、何か難しい顔をして聴いている姿を想像しがちであるが、これはドイツ音楽の影響が色濃いからだけのことである。イタリア音楽は開放的で明るい。あまり明るすぎて“テノール馬鹿”(失礼)という言葉も生まれてしまうほどだ。フランス音楽はイタリア音楽ほど開放的ではないが、繊細で洗練された感覚が特徴だ。

 そんなわけでフランス音楽は、本質的には日本人の感覚に近いはずだ。和歌とか俳句の文化を持つわが国の文化も、論理的なものより情緒的なものが優先される。ところが、音楽の嗜好では多くの日本人はフランス音楽よりもドイツ音楽を好む。これは何なのか。自分にないものに憧れを持つためなのであろうか。私には永遠の謎である。

 今回のCDはフランス音楽に馴染みのない人でも一回聴くと絶対にフランス音楽が大好きになるという1枚である。ピアノのモニク・アース(時々ウエルナー・ハースと混同される)は、実に日本人に分かりやすいドビュッシーを演奏してくれている。日本人が思い描くドビュッシーの音楽をそのままピアノ演奏しているのだ。だから何か懐かしくて、ドビュッシーが日本の歌のように聴こえる。印象派の絵画を見て、美味しいコーヒーを飲みながら、モニク・アースの弾くドビュッシーを聴く時は、正に至福のときそのものである。(蔵 志津久)