さようなら、ヨシさん | 乞食blog

さようなら、ヨシさん

今日、ヨシさんにお迎えの人が来た。
借金でどうにもならなくなり逃げてきたというヨシさんだが、
その問題が片付いたということで、
九州の温泉宿での就職が親類の人のはからいで整ったというのだ。

最近、姿をちょくちょく消すなと思っていたら、
家族と連絡をとっていたということだった。

「新聞でね、保証人やっていた
前の店のオーナーが死んだというのを見たのよ。
そうなると保険金が出るでしょ…
だから片付いたんじゃないかなと」

お金の問題より、重圧に負けて黙って姿を消してしまった
家族への謝罪とわだかまりを解くのが、
こころから情けなく、申し訳なく、
つらいことだったというヨシさんの話に涙が出そうになった。

「どうして何もいってくれないの!
もっと早くに相談してくれたら」

という、あの日の妻の泣き顔がどうしても忘れられない。

ヨシさんがこの公園で暮らしていたのは、ほんのひと夏だ。
きびしい冬を前に、人間らしい暮らしに戻れることになり、
こころから祝福したい。

それはまちがいないのに、やはり心のどこかで、
技能を持ちそれによって、
すぐに自分の居場所に戻れるヨシさんをねたましく思うのだ。

うらやましい。
ほんとうにうらやましい。
自分にもなにか料理とか、特別な才能があれば、
こういう生活になっても、戻りやすいと思うのに。

別れ際、ヨシさんは何故かマクドナルドのホットケーキを
プレゼントしてくれた。
それは、この公園で初めて寝たヨシさんに、
自分が差し出した思い出の食べ物なんだという。
しかしその話を聞いても、そのことはすっかり忘れていた。