一日一禅 | おてらさん

おてらさん

大分にある臨済宗のお寺さんです。

「与天下人作陰涼」
(天下の人のために陰涼とならん)


臨済宗の祖、臨済禅師は、はじめ黄檗禅師のもとで修行していた。
しかし、どうしても大悟するまでにはいたらない。
若き臨済は自身の非力を恥じ、修行を断念して黄檗の元を去ろうとしていた。

このとき兄弟子の睦州(ぼくじゅう)が
「彼はきわめて純真な若者で見所があります、この先、自ら鍛錬し成長することによって、一株の大樹となって、天下の人のために陰涼となるはずです」
と進言し、説得によって修行を続けた臨済はそのとおりの大禅者となった。

真夏の太陽がギラギラと照りつける日に、一株の大樹の木陰はまさにオアシスのようなものだ。
大樹は枝葉をのばし、自らは熱い日差しを浴びながら、自らをいとわず直射をさえぎって涼風をもたらしてくれる。

禅者の生き方もまた、厳しい修行によって自身の枝葉を伸ばし、最期には大樹となって、人々のための木陰を作らなければならない。
人生の苦悩という日差しをさえぎり、その心にやすらぎという陰涼をあたえるために。





ただ、大きくなればいいんじゃない。
大樹となって、誰かに安らぎを与えられる人になれ。