さまざまな細胞になりうるヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)から高純度な肝臓組織を作り出す方法を独立行政法人・医薬基盤研究所(大阪府茨木市)と大阪大のグループが開発した。iPS細胞を肝臓細胞に変化させることはできるが、高純度な組織を作るのは難しかった。肝臓は薬物を分解する役割を果たす。

 今回、作られた組織は、薬を分解する酵素をヒトの肝臓並みに備えている。新薬候補物質を作った組織で分解できるか試すことで、毒性試験などへの活用が期待される。

 医薬基盤研究所の水口裕之チーフプロジェクトリーダー(分子生物学)=大阪大教授併任=は、ヒトのiPS細胞を培養したうえで、細胞に遺伝子を注入する働きをもつウイルスを使う。2種類の遺伝子を適切な時期に注入することで、iPS細胞を肝臓細胞に変化させた。

 約10日間の培養でできた細胞組織を調べると、肝臓で作られるたんぱく質「アルブミン」を生産する働きのある遺伝子が非常に多く含まれており、8~9割の純度で肝臓細胞が形成されていることが分かった。薬物を分解する役割のある酵素「CYP3A4」も、培養した市販のヒトの肝臓細胞並みに現れていた。

 水口さんは「製薬企業などに肝臓組織を提供することを目指したい」と話しており、今後は実用化に向け、いつでも使えるよう凍結保存する技術や、細胞の品質を一定にする手法を開発していくという。【野田武】

 【ことば】iPS細胞

 皮膚などヒトの体細胞にウイルスなどを使って遺伝子を入れ、受精卵のようにさまざまな種類の細胞になりうる能力を持たせた人工の万能細胞。京都大の山中伸弥教授が作成し、07年に発表した。induced pluripotent stem cellと名付け、頭文字からiPS細胞と呼んだ。同様の能力を持つ胚性幹細胞(ES細胞)は受精卵を壊して作るため倫理的な問題が指摘されているが、iPS細胞はそうした問題がなく、期待されている。

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