♪懐かしいにおい…などと歌詞にも多用され、人の情緒に深い印象を残す香り。その力をビジネスに生かす企業が増えている。

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 近ごろパワースポットとしても注目される神奈川県箱根町の富士屋ホテル。明治24年建築の壮麗な本館に足を踏み入れると、優雅な森の香りに包まれた。クラシックリゾートの世界にうっとり…。でも、屋内でなぜこの香りが!?

 ロビーや廊下などの公共スペースに、計14台の芳香拡散器がさりげなく仕掛けられていた。このホテルのために開発されたオリジナルの香りという。以前には感じられなかったかぐわしさである。

 2年前にアロマを導入。メンテナンスに月14万~15万円をかけているそうだ。「ホテルはお客さまがくつろぎや癒やしを求めてお越しになる場所ですから五感、特に嗅覚(きゅうかく)は大切な要素。香りが旅の思い出として体に記憶され、次に訪れたときに『ああ懐かしいな』と感じていただけるよう、末永く続けていきたい」と安藤昭総支配人。

 ブライダルのカタログにも、小さなエッセンシャルオイルを添えて送っている。後日、下見に訪れたカップルがチャペルに漂う香りに気づいて、「あ…!」とほほ笑む姿も。「よく『敷居が高い』と緊張されますが、香りが一気に距離を縮めてくれるんですね」

 同ホテルの婚礼実績は平成19年度が205組、20年度304組、21年度は360組とアロマ導入を境にうなぎ上り。昨秋「週刊ホテルレストラン」が発表した婚礼部門売上高増加率ランキングでも全国1位に輝いた。

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 「かつて営業に出向いたときには『無臭が大前提』と門前払いだったホテルから、導入したいとの連絡をいただくこともある。日本人の香りに対する意識が劇的に高まり、この3年ほどで関心を持つ企業が一気に増えた。癒やしや集中力アップなど香りの機能性を生かしたり、ブランドイメージ創出や伝達に活用されている」とは、アットアロマ(東京都渋谷区)の片岡郷社長。植物由来のエッセンシャルオイルによる「アロマ空間デザイン」を10年前から手がけ、首都圏を中心に富士屋ホテルなど現在555カ所に導入されている。

 顧客はホテルなどの宿泊施設が2、3割。カメラや自動車のショールーム、大手セレクトショップ「シップス」などのファッション系から進学塾にも顧客を広げており、20年の年商は6億4400万円に達した。

 今月17日、三菱自動車本社で行われた新型RVR「カワセミブルー」の発表会も、杉の葉やミントを思わせる香りで演出。「渓流の宝石とよばれるカワセミのすがすがしさや躍動感を表現しました」とは、アロマ空間デザインディレクターの深津恵取締役。来月までこの香りでショールームを彩り、車内や家庭でも同じ香りが楽しめるグッズも販売されている。

 アットアロマとは無関係だが、21年末の日本上陸で話題になった東京・銀座のカジュアル衣料品店「アバクロンビー&フィッチ」は、店の内外に漂うフレグランスのにおいが賛否を呼ぶ。むせる香りが本国アメリカの空気感や非日常性を演出しているとは思うが…。相性や使い方次第で人の快・不快を左右する、見えない存在の威力はやはり大きい。(重松明子)

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