『BLACK LAGOON』#90感想(ネタバレ有) | ~ Literacy Bar ~

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ここはイマイチ社会性のない自称・のんぽりマスターの管理人が、
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※基本、ネタバレ有となっていますので、ご注意下さい。

 

 

 

先月号の煌樹まみかに続き、今月号も『レクリエイターズ』のキャラクターが表紙を飾った『サンデーGX』。よりにもよって築城院真鏨というチョイスには意外性を通り越して、悪趣味という言葉しか出てきませんが、レヴィやバラ姐のように畜生極まりないキャラクターが大手を振って活躍する作品がメインを張る雑誌なので、むしろ、好適な選出といえるでしょう。感想を書くに当たって、栞代わりに真鏨のクリアファイルを『ブララグ』の頁に挟んでおきましたが、ロックや馮亦菲よりもロアナプラの雰囲気に馴染んで見えました。本編エピソードに深く関わっているであろう、ロニー・ザ・ジョーズ率いるコーサ・ノストラの一員として登場しても、全く違和感ないレベル。嘘の嘘をクルリと真実に裏返す真鏨の能力を以てすれば、回収不能に陥った洗浄資金を取り戻すことも可能な筈なので、作品の垣根を越えて、登場人物をクロスオーバーさせる『エリミネーション・チャンバー・フェス』を誰よりも望んでいるのは、実はロニー・ザ・ジョーズかも知れません。あ、次号の表紙は菊地原さんのプライベートショットでお願いします。できれば、黒の上下下着を希望。

『ブララグ』よりも『レクリエイターズ』の話題が前置きの九割を占めてしまいましたが、後述するように本編も『レクリエイターズ』に引っ張られた感があるので仕方ないね。そんな今回のポイントは2つ。頁もネームも多かった割に話が全然進んでいないからなぁ。

 

 

1.胡散臭斎

 

馮亦菲「一個の目的のために脇目も振らず、頓着もせず、超然として良きサマリア人を演じてみせる、誰もが思い描く素敵なナイスガイ。現実にそんな人間がいたら、私はそいつに近づかない。折り紙付きで、そいつは『どこかおかしいわ』」

 

ハリウッドのSF大作にありがちな主人公像をド正面から粉砕する馮亦菲の一言。全く、そのテの人物像ほどに気持ちの悪い存在はありません。物語上でも充分胡散臭いのに、現実にいたとしたら、私も確実に距離を置くでしょう。日本の作品でいうと『ギャラリーフェイク』の地蔵大作のようなものでしょうか。コイツほどに人間としての徳の高さと薄気味の悪さを両立したキャラクターはいなかったなぁ。本当に気持ち悪い。

さて、馮亦菲によるカウンセリングタイムとなった今回の『ブララグ』。個人的にはロックがガルシアとファビオラに罵倒されたことを、これほどに引きずっているとは思いませんでした。この問題に関しては、誰がどう考えてもロックが悪党であり、しかし、悪党であったからこそ、ガルシアとファビオラを救えたことに異論の余地はないのですが、当の本人は自分が善人と主張しないまでも、不当に貶められるのは心外と思っていた模様。ある意味で自分が悪だと気づいていない最もドス黒い悪といえなくもありません。この辺の善悪の境界線については、ロックは鷲峰組の一件で既にルビコンを渡っていたと思っていたので、些か今更感が拭えない内容になりました。善人が雪緒以外の鷲峰組構成員を全員始末して欲しいとか頼む訳がないんだよなぁ。

 

 

2.freedom

 

馮亦菲「あなたは、やりたいようにやって、それこそ、好き放題にやって、彼らの物語を多いに愉しんだ。そうでしょう? 大事なのは、あなたにとってそれこそが、この世の果てのこの場所にいる理由だったってことじゃない」

 

そんな『普通の人間としての見返りが欲しかった』ロックに対する、馮亦菲のカウンセリングがこれ。ロックが求めているものは人並みの感情ではなく、規格外のスリルである以上、ガルシアやファビオラの謝意を期待するほうがおかしい。アナタが求めているものは別の形で既に手に入れているという内容でした。概ね同意。馮亦菲はロアナプラに馴染む前のロックの要素を濃厚に有しているキャラクターなので、ロックの置かれている状況や彼の抱えるジレンマを当人以上に的確に指摘できるのでしょう。置かれた立場が逆であれば、ロックのほうが馮亦菲に指摘する側になったと思われます。

尤も、先項でも触れたように読者的には何となく察しのついている事案なので、何故、この段階で再確認するような内容になったのかという疑問は残ります。この辺は現在進行中の『レクリエイターズ』の制作が影響しているのかも知れません。第十四話の『世界の都合よりも自分の世界観が大事』という、創造主たちの角突合いに通じるものがありますね。あの回は承認力を得ることの大事さ以上に、自分が楽しむことが何かを成す動機であると説いていましたので。嘗て、サンデーGXで連載されていた某漫画の、

 

炎尾燃「作品が作者の人格に反映する! マンガの影響力をあなどるなよ、一番影響を受けるのは作者だからな!」

 

という台詞を思い出しました。広江さん、自分が原作を務めるアニメの影響が漫画で出ちゃっているのかも知れません。