劇場版『クレヨンしんちゃん』の第21作目です。
なんだかもう、この時期の恒例行事のように思えてきました。
今回はB級グルメ。
春日部で行われているB級グルメカーニバルに、しんのすけとかすかべ防衛隊の面々が向かう途中、謎の女からソースが入った壺を渡され、これをカーニバルで焼きそばの屋台を開いているソースの健に届けてほしいと頼まれる。
同じ頃、カーニバル会場はグルメッポーイ率いるA級グルメ機構によって、B級グルメを撲滅せんと会場をめちゃくちゃにし、A級グルメカーニバルへと変貌させられていた。
かすかべ防衛隊に託されたのは、この窮地を脱する可能性を秘めた伝説のソースだったのだ。
はてさて、かすかべ防衛隊は無事にソースを届け、B級グルメをA級グルメ機構の魔手から救えるのか。
というばかばかしいお話です。
このところの劇しんはこういう「ばかばかしさ」が足りないと感じていたので、予告を見た時からこの力の抜けたストーリーは好感触でした。
そのおかげか、全編に渡ってギャグシーンが豊富に入れられ、「泣ける映画?知ったことかっ!!」と言わんばかりの決意を感じさせます。
『クレヨンしんちゃん』はこうでなくてはいけません。
ここ何年かの劇しんはお行儀が良過ぎでしたよ。
メインを張るのはしんちゃんと風間くん、ネネちゃん、マサオくん、ボーちゃんにシロ。
要所でそれぞれのキャラクターに合わせた活躍の場が与えられ、作品を盛り上げてくれます。
対して、しんちゃんとシロ以外の野原一家はやや控え目の出番ですが、この辺りはバランスですね。
限られた時間の中では、何処かで割り切りは必要でしょう。
割り切りと言えば、オリジナルキャラクター陣も役割がきっちり分かれていました。
ソース奪取組であるキャビア、横綱フォアグラ錦、トリュフらは、かすかべ防衛隊との壮絶な(?)バトルが繰り広げられる一方、カーニバル会場攻撃組の寿司夫婦仮面とステーキライダーはいなくてもそれほど困らない扱い。
前作の『オラと宇宙のプリンセス』などは、敵(幹部)キャラが多過ぎて、結局1人1人の扱いが小さくなっていたように見受けられましたけど、今回は表立ってがんばる者とチョイ役とを分けているため、大役を任されたキャラクターたちが印象に残り易かったです。
また、ボスであるグルメッポーイが頑なにB級グルメを否定する背景も描いていて、本作の敵キャラ陣はよくできていたように思います。
ストーリーもただソースを守りながら目的地に運ぶだけではなく、かすかべ防衛隊に解散の危機が訪れたり、敵を欺く策を練ったり、一工夫加えられていました。
こういう一捻りがあると、物語りにメリハリがつきます。
更には、キャラクターの細かい動作にも気を配っておられた様子。
要は作画による演技のことですね。
一例を挙げると、しんちゃんの暴挙が、A級グルメ機構にはマヨネーズの恐怖として映ったシーンで、「人間にまでかけるなんて…!?」と驚き、恐れおののいている人の横で、目を瞑って俯き、首を振っている人がいるのですね。こういうの大好き。
役名としては「グルメッポーイの部下G(仮)」というところで、真っ当な台詞もないキャラクターですが、こんなモブキャラにも独自の演技をさせる気配りが嬉しい。
甚だ僭越な物言いながら、シナリオにしても作画にしても、手を抜き過ぎじゃない?と感じてしまう作品がこのところ目に付いたものですから、尚のことですね。
こういった点でも、ここ何作かの劇しんの中では頭1つ抜けていることが窺えます。
それから、今回はゲスト声優が健闘していたことも印象的。
渡辺直美がなかなか上手い。重要なキャラであるしょうがの紅子役という、ゲスト出演以上の役割を無難にこなしていました。
それ以上に上手かったのがコロッケ。
これはたぶん、事前に知ってなきゃ気付かないレベルじゃないかな。
それと知って聞いていても疑っていたくらいですもの。
声の出演はプロの声優以外認めない、ってな人間では全然ありませんが、作品の出来に関わることですので、これくらいできる人を選んでほしいとは思います。
川越シェフはゲスト声優らしい演技ではありましたけど、本人役ですし、そう重要な役どころでもないので、可もなく不可もなく、でしょうか。
というわけで、今回は全体的に印象を良くしたところが多かったです。
欲を言えば、もっと盛大にバカ騒ぎしてほしいという気持ちもあるものの、ギャグシーンの増加と、シナリオと演技、敵キャラの改善は快く受け止めさせて頂きました。
おかげで次回作への期待も高まります。