著者の古市一雄氏は、千葉県・房総半島の南に位置する館山市、鴨川市、南房総市、鋸
南町(きょなんまち)をカバーする日刊新聞「房日新聞」1面の社説「展望台」を客員論
説委員として担当執筆している。3年前の平成17年6月2日に初執筆以来、週2回、ときには
エッセイ風な書き方を交え、まちづくりや観光地再生など、地域活性化のためのメッセー
ジを書き続けている。本書は、初社説から平成18年8月10日までを抜粋して編纂したもの
だ。

 台湾問題とは関係のないテーマがほとんどだが、本誌でも古市氏執筆の台湾に関する
「展望台」を何度かご紹介したことがあるように(最新は9月17日付、第864号「台湾表記
と地方分権」)、本書でも台湾関係としては「微笑ましい便りから」と「台湾との交流に
活路」の2編が収録されている。

 なぜ、地方紙の社説が台湾をテーマとしているのか。それは、古市氏が日本李登輝友の
会の会員だからだ。略歴にも堂々と「日本李登輝友の会正会員」と記す。ご縁は息子にあ
った。「私の息子は大学在学時から台湾に興味を持ち始め、卒業後は台湾の淡江大学へ留
学し、帰国後は台湾に関する本を多く出版している出版社で働いているなど、数年前から
台湾との縁ができてきた」ことで、「我が国の情勢などについて、台湾というフィルター
を通して客観的に勉強する機会にも恵まれた」という。それが、この社説にも反映されて
いる。

 息子とは誰あろう、台湾研究フォーラムの事務局長で、本書を担当したまどか出版編集
部の古市利雄氏である。著者は「まさか自分が出版する本を息子に編集してもらい、世に
送り出すとは思ってもみなかったが、無上の喜びを感じているのは言うまでもない」(あ
とがき)と、その感慨をつづっているが、こういうケースも珍しい。

 単行本を世に問える人は、さほど多くはない。稀と言ってよい。その中で、親が執筆し
た本をその子が編集するというのはほとんど例がないのではないだろうか。

 それはともかく、著者が市役所職員として長年にわたり地方行政に取り組んできた体験
に裏打ちされた地域活性化への数々の提言は、他の自治体の人々にも必ずや役に立つので
はないだろうか。

 というのも、定年まで1年を残して、それも年度末まで勤めれば勧奨退職によって割り
増し退職金がでることを分かっていて、担当幹事長として合併事業を見届けたことを区切
りに退職したことに現れている著者の一途な生き方に共鳴する人は少なくないと思うから
だ。
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