台湾の声 編集部御中

いつも貴誌を拝読しております。
この度の敗戦は誠に無念であり、皆様の落胆がいかばかりかお察し申し上げます


8年にわたる民進党政権によって台湾人意識は高まり、より一層の民主化が成し遂
げられました。これらは評価すべき成果であり、多くの台湾人の誇りといえ
るでしょう。そうした意味で、総統選を通じて示された民意を私達は受け容れな
ければなりません。今後は捲土重来をはかり、中華文明の脅威に備える必要が
あります。

今回の敗因を分析すると、直接的には
(1) 一度も立法院を掌握できなかったこと
(2) 大陸志向の台湾経済界を敵に回したこと
(3) 政権内部が腐敗して国民の信頼を失ったこと 、が大きいと思われます。

(1) (2)については地方組織や経済界と深く結びついた国民党に利があります。民進党
は大衆を基盤とした政党であるため、これらの牙城を容易に崩せない事情
があります。そうした大衆政党が政権を維持するためには国家存立の明確なビジ
ョンを示し、清廉さを以て政権運営に当たる必要があります。だからこそ、
(3)は致命的なのであり、猛省が必要と思われます(過去の国民党の比ではないに
せよ)。政策ではなく、政治姿勢に敗れたとすれば言い訳は出来ません。
李登輝前総統が著書「
最高指導者の条件/李 登輝
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(PHP)」で述べたように、政治に携わる
者にはその根底に信仰と哲学が欠かせないのです。
(1)(2)(3)を背景に、国民党は狡猾に選挙戦を進めました。2004年の総統選を反省
し、台湾人意識を逆手に取り、急速な統一政策を止めました
(放棄したのではありません)。政治の安定と経済的繁栄を優先して「現実的」
政策を打ち出せば、たとえ謝長廷氏が指導者に相応しくとも民進党に勝ち目は
なかったと思われます。

敗因の間接的原因についても述べたいと思います。これは歴史という時間軸のな
かで分析すればわかることですが、中華文明(=中華覇権主義)の興隆が影響
していると思います。中華文明は華夷秩序を以て政治的・経済的・文化的に覇権
をとなえ、周辺諸国にその恩恵を享受させ、服従を強いるのが特徴です。中国
による台湾併合の野望は、この文明の本能がなせる業です。反対に、台湾は民主
化を通じてこのような覇権主義を否定しており、それは台湾人意識の高まりに
も現れています。
確かに、中国共産党は権威主義(一党独裁)のもと人権弾圧を繰り返し、多くの
台湾人にとって受け容れ難い政治体制を採っています。しかし、台湾は全ての
面にわたって中国を拒めない状態にあります。経済的結びつきが強くなり、国民
生活に無視できない影響力を持つようになりました。これは日本やアメリカで
も同様です。重要なのは、台湾は(言語・宗教・芸能といった)文化面で中国と
類似性を持つが故に、中華文明の浸透力が強いのです。これこそが国民党の政
権奪取につながった最大の原因といえるでしょう。

中華文明勢力は決して台湾人の自決権を許しません。また、自由・人権・民主主
義という価値観も容認しません。それらは権威主義を否定し、中華文明の存在
を脅かすものだからです。
言うまでもなく、民主台湾と中華文明との共存共栄は幻想に過ぎません。国民党
の政策では一時の安寧を得られても、いずれ台湾に災いをもたらすでしょう。
それは香港の凋落や、チベット・ウイグルの悲劇を見れば一目瞭然です。今後の
台湾政治は国民党が行政・立法・司法を完全に支配し、暴走する危険すらあり
ます。それを食い止められるのは台湾人自身しかいません。民進党を始めとして
台湾建国派が成すべきことは、かつての民主化運動の精神に立ち返り、清廉
に、実直に、台湾の民主主義を守り抜くことではないでしょうか。

加油台湾!!
北海道に台湾領事館を!日台友好万歳!

ペンネーム:知床遙かなり


『台湾の声』  http://www.emaga.com/info/3407.html