ヒト・モノ・カネ主要企業の動き④不動産業界
テーマ:不動産不動産流動化ビジネスにも影響?国際会計基準に戦々恐々の企業各社
不動産業界が、国際会計基準(IFRS)の導入に向けた議論の行方を注視している。
IFRSは従来の純利益に、株や土地などの資産価値の増減分を加えた「包括利益」を重視しており、不動産会社にとっては、保有するオフィスビルなどの値動きが従来以上に大きな意味を持つようになる。
日本での導入は早くて二〇一五年頃とみられ、時間的に余裕があり、現時点では早期採用を検討する動きは表立っては見られない。各社の間では「まずは情報の収集や整理をしたい」と、慎重に準備を進めようとする雰囲気が大勢のようだ。
多くの店舗と自らで土地を所有するスーパーやコンビニなどの流通各社やチェーン展開する外食産業などは、場合により含み損を被るケースもあり戦々恐々としている。
業界に影響しそうなのが、賃貸収入や売却益を得るために持つ投資用不動産の評価方法だ。IFRSでは①毎期末に時価などの公正価値で評価した上で、前期からの変動額を損益として明示②取得原価を明らかにするとともに、公正価値を注記──のどちらかで処理する。
いずれの手法でも含み損益が鮮明になり、投資用不動産を保有するリスクが高くなるため、IFRS適用時期が正式に決まれば、業界各社の間で物件を取得してから短期間で売却したり、投資先をより慎重に選んだりといった動きが広がりそうだ。なお、日本基準でも一〇年三月期から注記で時価が開示される。
一方、含み損が出る企業もある。野村證券が大手不動産会社の一〇年一月末時点の賃貸不動産の含み損益を試算したところ、東京・丸の内で優良な資産を多く抱える三菱地所の含み益は約1・5兆円、三井不動産が約7000億円、住友不動産が約6000億円。不動産市況が低迷する中でも大手不動産は多額の含み益を持つことが分かる。
また、オフィスビルや商業施設などを流動化するために設立されたSPC(特別目的会社)に関し、IFRS適用後は、親会社が株の過半数を握っていなくても、実質的に支配しているとみなされれば、すべて連結対象となる。
その場合、グループ全体の資産や負債が膨張し、結果として自己資本比率が大きく低下することもあり得る。業界内には「SPCを活用した流動化のビジネスモデルが変わる可能性がある」との見方が出ている。






