山本洋一ブログ とことん正論

元日経新聞記者が政治、経済問題の裏側を解説!


テーマ:

 今月23日、衆議院本会議で電波法改正案という一本の法案が可決された。電波利用料で地方自治体の行政無線のデジタル化を進めるという単純な法案だが、実は本来盛り込まれるべきだった、ある重要な政策がすっぽりと抜け落ちていた。電波(周波数)オークションである。この件は自民党政権の限界の一端を示している。


 電波オークションとは電波の利用権限を入札、もしくは競り方式によって事業者に割り当てる制度のことだ。日本のように所管官庁の裁量で決めるのに比べて透明性と公平性を確保することができ、多額の落札額を得ることもできる。実際にOECD加盟国で最近加盟した4か国を除く30か国のうち、日本とアイスランド、スロバキアの三カ国以外はすべて制度を導入している。


 各国がオークションの導入を急いでいるのは、携帯電話や通信サービスの普及で電波の経済的価値がぐんぐん高まっているからだ。電波と言っても高周波から低周波までいろいろあり、事業者によって使い勝手のいい周波数帯は限られている。


例えばテレビの地上デジタル化によって空いた700メガ~900メガヘルツ帯は携帯事業に最適とされ、その貴重さから「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯だ。このうち900メガヘルツ帯を巡っては各携帯会社が熾烈な争奪戦を繰り広げ、ソフトバンクが勝ち取った。そのソフトバンクは今、「つながりやすさ№1」をキャッチフレーズに顧客争奪戦を優位に進めている。


例えば米国では2008年に700メガヘルツ帯オークションの総落札額が約190億ドル(約18400億円)、英国は2000年の3Gオークションで約225億ボンド(約39900億円)、ドイツは2000年の3Gオークションで約994億ドイツマルク(約5600億円)にのぼった。日本のプラチナバンドでもオークションを使っていれば落札額が12兆円になったとの試算がある。莫大な借金にあえぐ我が国財政にとっては貴重な財源だ。


政府は民主党政権時代の2012年に携帯事業者に限ってオークション制度を導入する法案を提出していた。しかし、突然の衆院選により廃案に。政権交代によって誕生した自民党は有識者会議で導入が提言されたこのオークションをあっさりひるがえし、今回の法案からごっそり取り除いた。導入を見送った理由は明らかにしてないし、今後議論しようという気配もない。


なぜ自民党が後ろ向きなのか。NTTを筆頭とする通信業界と政治、官僚のもたれあい構造を壊したくないからだ。当然ながら総務省は業界ににらみをきかせるために許認可権を手放したくない。今回は負担の増加を恐れる通信業界との利害が一致し、関係の深い自民党に泣きついたというわけだ。自民党にとっても総務省を通じて通信行政に影響を及ぼすことで政治資金を確保する狙いがある。「通信族」議員のパーティー券を誰が買っているか、容易に想像がつく。


オークションの導入にはマスコミも慎重だ。現在、電波利用料はアンテナ数を一つの基準としているため、一つ一つの携帯端末がアンテナを持つ携帯事業者が不利、逆に放送局が有利な設定となっているからだ。実際に電波利用料の4分の3を携帯事業者、つまり携帯利用者が負担しており、アンテナのカバー範囲が広いテレビ局はキー局でも年間4億円程度しか払っていない。年間数百億円の利益をあげておきながら、だ。


オークションが導入されれば「じゃあテレビ局も対象に」との議論が出かねない。そのためテレビ局もテレビ局を傘下に抱える新聞社もオークション導入の機運を盛り上げようとしない。ただしこうした状況は各国ともに共通なようで、放送局をオークションの対象としている国は英米だけ。しかもすでに免許を割り当てられている国は対象外となっているそうだ。どこの国でも第四権力、マスコミの力は強い。


テレビ局の報道の仕方や番組内容については不満がたくさんあるが、最大の要因は「競争のなさ」にあると思う。テレビ東京が昭和49年に開局して以降、民放キー局5社体制はずっと変わっていない。だからぬるま湯につかっている中で報道の質が落ち、番組制作の質も落ちているのだ。


まずは電波利用料の負担のあり方を「経済的価値」に従って見直し、中期的にはオークションを導入して放送局も対象とする方向で検討すべきだ。まずは新規事業者から対象にすべきだが、将来的には既存の放送局も同じ舞台に上げていかなければならない。しかし、政官財の癒着構造をこれまで認めてきた自民党にそうした大改革はできない。安倍首相がリーダーシップを発揮できれば別だが。

AD
いいね!した人  |  リブログ(0)

山本洋一さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。