代田昭久

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杉並区立和田中学の藤原和博校長についで4月から二代目の校長になった人です。


今日の毎日新聞の東京版にインタビューで登場し「藤原先生ほどのカリスマ性もリーダーシップもないが、ないのがメリットで、(藤原さんがやったことを)仕組みにして和田方式を作り上げて公開し、日本全体を変えていきたい」と語ってました。


藤原校長のあとに誰がなるのか注目してましたが、トップダウン型のあとは調整型で仕組みをつくる人が就任するのはなるほどです。トップダウン型で改革をやったあと、保守派の人が出てきて元に戻してしまうのは最もありうることですが、そうではなく改革派でも反対派を押しのけるのでなく話し合いながらすすめるので改革は継続しそうです。


代田さんのキャリアをみるとこういう学校の校長に一目散に進んできた人に見えます。


彼は42才とまだ若く、慶応大学経済学部を卒業してリクルートに入社し、新規事業として大学生を対象としたキャリアスクールを起案し実践しました。この事業は失敗しましたが、この経験から「社会を生き抜く力を育むには大学生からでは遅い。もっと早い時期からスタートさせなければならないのでないか」という教訓をえました。


教育事業には関心を持ち続け、村上龍「13才のハローワーク」(幻冬舎)が出たときは共感し、この本の公式サイトを運営する会社、㈱トップアスリート を起業しました。

仕事を選ぶのは13才ごろから準備をすべきという提唱に共感したからですが、前記のインタビューでも「中学校は社会に出て困らない力をつける”世の中予備校だ”」と発言してます。


このIT企業を経営しているとき和田中学の地域本部(父兄や地域の人が集まったPTAに代わる組織)の仕事にかかわり、ここの推薦で都の教育委員会の試験に合格して任期3年の校長に就任したのです。


彼は会社のホームページで退任の挨拶を書いてますが、

「何の前触れもなく突然やってまいりました。ある意味で偶然のような気がしますが、今までの経験や思考の繰り返しから、必然的に出会った運命のような気もしています。」

「学校教育は崩壊しているのではなく、(社会の速い変化に)適応できていないのだと思います。子どもたちには、今まで以上に、自ら考え行動していく力が必要です。」「文部科学省や教育再生会議などの上から提案だけではなく、教育現場からの改革の積み上げが重要です。任期は3年と言われていますが、今のところ33年後のことは考えておりません。」


まともな考えです。彼の信条はDo You Best、3年疾走するのでしょう。


90年代にイギリスでシビック・アントレプレナー、起業家型公務員、が出てきました。学校を改革する校長にこれが多く、空き教室を使い学校を地域のセンターにしてしまうような事業を開発し、エリザベス女王から勲章をもらうほど社会から讃えられた。


学校は教育の場ですが、それからはみ出し広く事業を考えたのが讃えられた理由です。決まった枠を飛び出すから起業家精神なのです。


アメリカのチャーター・スクールは公と民の間の中間点よりも民に寄った経営で日本には合わない、シビック・アントレプレナーのように中間点よりも公に寄っているほうが日本向きじゃないかと思い出てこないかなと待ってましたがそれが和田中学でした。


代田さんによって一層シビック・アントレプレナーに近づいた、日本の「新しい公」とはこういうものではないかと思います。


このモデルを全国に広めるために生まれたばかりの仕組みを発酵させて標準化し、代田さんの任期中に全国に広がってほしいと願ってます。

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Non-Purposeの会

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首都圏の自治体改革派の若手職員がやっている会の名前です。


1週間前の会合で東京都の向本圭太郎さんに会ったとき、こんな会をやってますと教えてくれました。

Non-Purpose ~首都圏のWA」のサイトはここ。


都庁と埼玉県庁の若手公務員の勉強会として始まり、最近では月例会をオープンにして誰でも参加できるようにし、ゲストスピーカーを招き社会起業のベストプラクティスを研究しており、毎回50名ぐらい集まっている様子です。


狙いは、「学習機会の提供」と「行動のための仲間づくり」です。


名前のノン・パーパスの意味がよくわかりませんが日常業務から離れてなのか、WAは「輪」なのでしょう。


私は「公民起業家」を提唱してますが、これはイギリスのシビック・アントレプレナー、イギリスでは起業家精神で公務員の仕事をやっている人のことですが、仕事を民間に渡す民営化でなく公務員自らが仕事を改革し、自治体を変える人のことです。


日本でも同様の人はいるだろう、ただ民営化を叫ぶだけではだめだ、自治体の中を改革しなくてはと思い、「シビック」を「公民」と訳し、「公民起業家」の言葉をつくり提唱してるのです。


3年ぐらい前に公民起業家の集まりをつくり議論したことがありましたが、そこでわかったことは公民起業家らしい人は自治体の中にたくさんいるということでした。


はじめる前は、いるのかな、いないのかなと不安のままはじめましたが、やってみると自治体の若手職員は優秀な人が多く、しかも自分の頭で考えるたちの人たちがけっこういて、日本の自治体は公民起業家の宝庫だと発見し、いいぞと思ったことがあります。


これが私の体験ですが似たようなことをやっている集まりがあり嬉しくなりました。


サイトを見ると、毎月ゲストスピーカーを招きベストプラクティスの研究をしてますが、みなさん自治体の現場で問題に直面してるので、それを摘出して問題を設定し、その解決策のビジネスプランをつくったらいいのにと思うのです。


私は社会問題を聞くとその場で反射的に解決策は何かを考えるクセがあります。その問題は成功したどのビジネスモデルに似てるのか、革新的な解決のアイディアは何か、仮想のビジネスモデルにはどんな問題が起こりそうか、机上のプランになりはしないか。。。


この会に集まった人の利点は自治体の現場にいて現場感覚があることです。その実体験から発想すればリアリティーのあるプランができると思うのです。


アイディア段階でまだビジネスプランまで熟してなくてもつくった解決策をサイトで提案すれば、その先プランは進化して行きます。自治体の問題はどこの地域でも同じなんですから。


ノン・パーパスの会の活躍に期待してますが、同じ志の人はこの会に参加して人のネットワークを広げることをすすめます

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金沢市立「金沢21世紀美術館」の初代館長だった蓑豊氏が書いた「超・美術館革命」(角川oneテーマ21、07/5刊)にはこんな話が出てきます。


・美術館の年間入場者数は5万人が平均のところ、初年度157万人、40%が金沢、60%が県外
・9時から夜10時まで開館
・建設に200億円を投資、初年度の収入は282億円、毎年100億円近くを産む
・館長は経営者だ
・美術館はサービス業だ、エンターテイメントの要素が不可欠
・現在は経済が文化をささえるのでなく、文化が経済をささえ活気づかせる
・展覧会は商品、学芸員はそのセールスマン
・美術館近隣の路線価格が上がった
・日本には公立美術館が350あるが、視察にきて「うちでは無理です」と帰る
・美術館はぶらりと立ち寄るところ、ぼーっとたたずみ何かを想う場所


蓑さんはアメリカで30年近く住み美術館のマネジャーをやった人で起業家精神が旺盛な人ですが、その人が市立美術館を経営するとこんな具合になります。


蓑さんを見ていると、起業家精神は非営利法人で一層輝くことを思います。社会性の強い起業家は、普通の起業家よりも一層社会にインパクトを与えることができることを証明しているいい事例です。


こんなベストプラクティスがあるんですから、起業家精神が旺盛な人を探し、ハコモノの経営を任せれば赤字経営問題は大方解決するんです。


これが本を読んだ感想でした。

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テレビを見ていたらアクアマリン福島 で人工なぎさを水族館の空き地につくる話を放映してました。


プロジェクトの責任者らしき人が出てきて、子供が遊べる人工なぎさをつくるんだと熱心に語り、館員総出でオープンに間に合わせるためにカニ、貝などを採取する場面があったり、工事が予定通りに進まずイライラしてる様子が映し出されてました。


07/4オープンの蛇の目ビーチで、野外体験型水族館、干潟、磯、浜があり子供がはだしで入れる4500㎡の広さがあります。


この水族館は見世物小屋→教育体験型、環境型でショーがない水族館を目ざし2000/7オープン、福島県いわき市の小名浜浜港にある財団法人ふくしま海洋科学館で、あの逮捕された佐藤栄佐久元知事が理事長をやっていた財団です。


典型的な利権にまみれたハコモノで生まれたんでしょうが、無駄な投資になるはずだった施設が一人の起業家タイプのマネジャーの出現により人が集まるソフトウェアが開発されて、施設が蘇ろうとしている様子がテレビに映ってました。


そういえば、旭川市営の旭山動物園も、起業家タイプの職員が出てきて行動展示という新しい方法で300万人以上の顧客を集めました。


金沢21世紀美術館も県庁と小学校の跡地のために90年代に計画したハコモノでしたが、04.10に開館し、初代館長がアメリカで美術館経営した人だったので1年目に150万人以上集まる美術館になりました。


以上、三つの例からわかることは、無駄なハコモノに起業家が入ると蘇ることです。非営利事業では起業家の力は絶大なモノになるんです。


非営利事業には壁があって起業家がなかなか入れない、入っても足を引っ張られてじゃまが多く、一代限りになりやすい(もうたくさんだと元に戻ってしまう)など、すんなりと行きませんが、これしか方法がないので非営利事業を起業家が経営する時代になるのは確かな方向だと思います。

アメリカの公民起業家

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今回から何回か、アメリカからゲスト・スピーカーを招いてやったフォーラムと専門家会議のトッピクスを書いてみます。その第一回目。


公民起業家は、役人の起業家のことですが、イギリスのシビック・アントレプレナー(シビル・サーバントの起業家のこと)を、私がこう訳しました。


8月29日、アメリカから来日した社会起業家助成非営利法人、ASHOKAとREDFの経営者を招き、アメリカンセンターで専門家会議がありました。日本側の参加者は、社会起業家、その研究者、官僚、大学の先生など、30名ぐらい。


前半に、日本の社会起業家7人が、”私の事業”を5分ぐらいずつ話しましたが、それを聞いたアメリカ側の感想は、数年前に比べ、日本では社会起業家が急速に事業を進めている、アメリカとかわらない、たいしたものだというものでした。
日本人として、うれしい感想です。


午後の討論の時間に、日本の公民起業家のことが話題になりました。来日したASHOKAのビル・カーターさんは、ビル・ドレイトン(アメリカでは高名な人です)といっしょになって、ASHOKAを創設したメンバーですが、ドレイトンとともにEPA(環境保護局)にいたことがあり、ここで排出権取引のモデルをつくった人なので、カーターさんは、公民起業家をやっていたことがあるでしょう、それ話してくださいといったところ、こんな話をしました。


マッキンゼーでコンサルタントをやっていたとき、ある州から環境対策のプラン作りの依頼があり、排出権取引を提案しましたが、州の側からこれは全米に広げたほうがよいとなり、カーター政権に働きかけ、EPAでも取り上げることになり、マッキンゼーを辞めて転職し、現在の排出権取引の政策をつくったそうです。彼が、30才代の半ばのことでした。

政策ができると、もうここでやることはないと、EPAを辞め、ASHOKAをつくったのです。


コーヒーブレークのとき、カーターさんは、私のところへ来て、さっきはよくぞ言ってくれた、私は排出権取引の研究を10年もやってきたのだぞと、10年を数回繰り返し、その政策が、京都議定書で世界中で実現できそう。。。と誇らしそうな顔をしました。


カーターさんは、もう60才ぐらいの人ですが、目の前のこの人が、排出権取引の元祖なのかと、私は感動しました。また、マッキンゼー → EPA → ASHOKAと渡り歩いたキャリアを思い、元祖に甘んぜず、面白い仕事をもとめて、転々とした生き方がナイスだなと思ったのです。

社会起業家運動のリーダーには、こういう人がいて、うらやましいですね。

分権化した地方政治のすごい話。
アメリカは、京都議定書を批准してないが、シアトル、ニューヨーク、ロサンゼルスなど130以上の市長が超党派の有志グループを作り、京都議定書の排出削減目標を独自に目指す協定に調印した。州レベルでも9州が、排出量取引などを通じた自主削減の取り組みを進めている。議定書が米国に義務付けた1990年比7%の削減目標を目指すほか、議定書から離脱したブッシュ政権に対しても国としての復帰を働きかける。(5.17読売新聞 )


温室効果ガスは都市で生まれるので、都市連合でやれば実質国全体でやったようなもので、アメリカの都市連合の気概はたいしたものだ。この間の大統領選挙ではブッシュが圧勝したわけではないので、今度は民主党自治体首長の反撃なのか、そんな感じもする。


日本では今分権化議論が盛んであるが、自治体は国家の政策に反し、ここまでやる気概はない。地方に権限と財源を寄こせと自治体は声を上げているが、声だけでなく、国家よりも地方自治体の方がずっとよい政策をやると、国民が感心するほどの実のあることをやって市民に見せればいいのにと思う。


日本の憲法の英文版 には、自治体の首長のことを「CEO」と書いてある(8章地方自治、93条2項)。企業のCEOと役割は同じなので、自分の地域を良くするビジネスモデルを作り、実行するのが首長である。だから国家よりもずっと先に行った自治体が出てきてもよいのだ。そんな自治体を早く見たい。