先週土曜日の夜、NHKBS1の未来をひらくシリーズで金子郁容慶大教授がワシントンンD.Cのアショカオフィスを訪問し、ドレイトンにインタビューする番組をやってました。


ドレイトンが語っていたことで、私が、おゃ、そうなのかと驚いたのはつぎの点です。

「アショカ30年の経験から(アショカは80年に設立)、市民セクターが成長し新しい発想で社会問題を解決する方法によって、社会が変るという大変化はまもなく雪崩をつって起こる」

現在は社会起業家が起こす大変化目前にいるという感覚は共感できますが、アメリカはもうそんな先に行ってしまったのかと驚きました。

「アショカフェロー62カ国2000人の半分は5年後立法する力をもつ」

これも自信満々の発言ですが、アショカは前からアショカフェローが起こした事業がそれぞれの国で制度になる願いを持っており、それが実現しそうだという頼もしい発言です。

「ハーバード大Bスクールで一番多く学生が集まるのは今や社会起業家講座だ」
「市民セイクターの事業では給料が上がってきたので就職希望者が多くなった」

就職する大学生の希望ベスト10の就職先に社会起業をやっている事業が最近入ったと番組でコメントしてましたが、社会起業に勢いが出てきたことを思わせます。

ドレイトンがお手本としてあげていたのが次の4つです。

・David Green の Aurolab社
インドで1000万人の白内障失明者の手術をするために安いレンズ(300ドルが4ドル、原価1ドル)を開発して失明をなくし、働く力を取り戻す事業。

・J.B.Schraum、College Sumitt、ワシントンDC
アメリカ国内で最初にアショカフェローになった(2000年)、親が大学に行っていない家庭の子供を大学へ行かせる事業、教育はアショカフェローの一大分野ですがその中でも代表的な事例なのです。

・Rodrigo Baggio
CDI-Committee for Democracy in Information Technology
http://www.ashoka.org/node/3396


ブラジルで低所得地域の子供にPC教室を開いてPCを教えて働く力を身につける。ブラジルにはアショカフェローがたくさんいますがその代表です。

・Mary Gordon、Roots of Empathy
小学校に赤ん坊をつれてきて、一緒に遊ぶことで情緒を育てる事業、暴力を受けた子供が大人になって暴力をふるうことをなくす。

ドレイトンは社会起業家の条件として4つ上げてました。
1、問題解決の創造性
2,アイディアのある起業家精神
3,影響力、真似される、チェンジメーカーのお手本になる
4,道徳性、人をひきつける、協力したい気持ちを起こさせる

1から3はその通りですが、4,が意外です。

ドレイトンは道徳性の例として上記の3番目にあるロドリコ・バッジョ(写真の人)の例を上げてました。

彼は90年代の半ばにワシントンD.Cに来たとき、おぼつかない英語を話し、国際開発銀行を訪れ余ってるPCをくれと申し出て銀行は快諾、ブラジル空軍にそれを運んでくれと頼みこれも実現、彼はそのくらい会った人に道徳性を感じさせることができる人物で、社会起業家には必須だというのです。

ロドリコ・バッジョはリオデジャネイロに生まれ、父が情報会社の幹部をやってたので11才からPCに親しみ13才のときに自分のPCを持っていた。同じ時期地域の教会の活動に加わり、ストリート・チルドレンをサポートする活動を他の地域の教会と連携してやってました。高校と大学、リオデジャネイロ連邦大学で社会科学を学んでましたが、では組織運営術を磨き、公正な社会とPCを結びつけることに興味を集中しました。

こんな10代のキャリアだったので、現在の社会起業を起こすことは自然だったのです。


ドレイトンがあげている道徳性とは、普通使っているのとは違い人を共感させる力のことです。これなら社会起業家に必要な資質です。

最後の方で金子教授は、日本では大学生は豊かなのでなかなか社会起業に向かわないと話したところ、ドレイトンはそれでは社会を変えることはできない、日本は次の社会に行けないと答えてましたが、寂しくなる答えです。

アメリカに比べて日本の社会起業はまだ起こったばかりで社会に大きな影響力を与えるところまで行っておらずに、社会の主役になるのはもっと先のことです。

私は2000年ごろから日本で起った社会起業のトレンドを見てきましたが、一過性に終わって消えるのでなく、いい線行っている、このまま進めばいいぞ、と思ってます。

日本だってドレイトンが言うような大きな変化は起こります。