社会起業家イクバル・カディーア

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数回前に書いた「グラミンフォン」の本を読みましたが、社会起業家イクバル・カディーアの成功物語でした。ユヌスに負けないぐらいの社会起業家です。


彼は勉強のできる子供でしたが(全国統一テストで満点を取るぐらいのでき)、バングラディシュを嫌い奨学金をさがしアメリカの高校に留学、大学でエンジニアリングを学び、ペンシルバニア大学ウォートン・スクールの博士課程終了後世銀に入ります。


ここで2年間働きましたが、世銀の仕事では貧困はなくならないと幻滅して、ニューヨークのベンチャキャピタルへ転職します。


これが92年ごろのことですが、このときからバングラディシュの貧困をなくすビジネスプランを考え続けます。


マンハッタンを歩いているとき「携帯電話を牛のように使えばいいじゃないか」とひらめきます。牛は乳を出して農家を助けます。携帯電話も同じように使えばいいじゃないかというのです。


このアイディアをアメリカの携帯電話会社へ話したところ、バングラディシュは投資するところでない、行くのは赤十字と断られます。


しかし理解してくれる人もいました。弟(アメリカに留学)の高校時代の友達の知り合いのジョジュア・メイルマンがソーシャル・ベンチャー・ネットワークの事業をやっており、アイディアに賛同して12万5000ドルの資金を出してくれました。


これは事業を始めるためのシードマネーでしたが、以後携帯電話会社が認可になるまでの4年間、この資金が役立ちました。


バングラディシュには国営のバングラディシュ電信電話公社がありますが、都市の電話だけやっており農村部はカバーされてません。一時帰国してグラミン銀行のユヌスに事業化をうったえますが、面白いと賛成してくれますが農村の極貧地帯に携帯電話をひくなどユヌスですら腰が引けて投資をしてくれません。


こんな調子でニューヨークでやっていたはだめだと知り、帰国して本格的にやらなくてはと思い、20年ぶりに36才のとき帰国し携帯電話をつくる会社を起こします。


ユヌスは事業化のためにコンサル会社に頼む資金は出してくれました。ユヌスのほかにもバングラディシュにも賛同してくれる人はおり、それを支えにして動き出します。


携帯電話は北欧がメッカなのでそこへ行き、インドへ進出経験のあるスェーデンの電話会社と話をつけますが、この会社はインドへ投資を集中するためことわり、代わりにノルウェーの携帯電話会社テレノールをすすめられ、結局ここが進出することになります。


テレノールの出資のほかグラミン銀行はジョージ・ソロスの資金援助で出資し、日本からは丸紅が参加しました。


最後に残るのは政府の認可ですが、国営鉄道沿いにひかれた光ファイバーケーブルが使われてないのを見つけて、これを使うと提案したり、農村に銀行を展開しているグラムン銀行と提携する、北欧の進んだ携帯電話技術を導入する、なんども行った北欧のコンサル会社の緻密な事業化計画があり事業の信頼性を高めた、ユヌスが政治家に対しロビー活動を行ったなど、認可する政治家や官僚に納得させて96年に認可になり、マンハッタンでアイディアを思いついてから4年たって97年にサービスを開始します。


この4年間のさまざまな問題を突破する精神は起業家のものです。現在では売上げ10億ドル以上、利益2億ドル以上の会社になりました。


グラミンフォンのビジネスモデルはこうです。


農村部の主婦がグラミン銀行からマイクロクレジットを受けてグラミンフォンから携帯電話を買い電話サービスに加入します。買った人は自宅の机の上に携帯電話を置き、誰でも利用できるようにします。電話屋になるんですが、すでに25万人のテレフォンレディがいます。


この利用料でグラミン銀行へ返済し、グラミンフォンへ回線利用料を払いますが、残った額はそれまでの年収の2倍になるので電話屋の仕事は広がります。


バングラディシュでは農村部の若い労働力は中東などへ出稼ぎに行く人が多く、そこから残った家族へ仕送してきますが、このカネで出稼ぎに行っている家族と通話したり、グラミン銀行からマイクロクレジットにより家業を起こした成功した起業家が利用するのです。


海外に出かけている出稼ぎ労働者は安心するでしょう。またグラミン銀行がすすめているマイクロビジネスにも好都合です。この電話を使い農家が農産物の価格を調べ高値で出荷したり、経済開発のインフラなので用途は多様です。


カディーアは世銀にはできないプロジェクトで、世銀に代わる新しい経済開発モデルだと自信満々で、このモデルは世界中に応用可能といいます。


社会起業家は先進国内のイギリスやアメリカで、効率の悪い政府に代わって事業を代替したり、政府がやっていなかった社会性の強い事業を起業しますが、もうひとつグラミンフォンタイプの事業を起業するのも仕事です。


このタイプを「貧しい国の貧困を撲滅する」といいますが、このやり方はアメリカが大好きでビルゲイツも来年からこれに専念します。


ここでの先進国の役割は海外投資をやり技術を提供する、一方貧しい国での社会起業家づくりの支援をやります。


「グラミンフォン」の著者、ニコラス・P・サリバン(アメリカのジャーナリスト)は三つの条件、「IT」「現地の起業家」「先進国の投資家」を上げてます。現地の起業家はアメリカの大学に留学した現地人、グラミンフォンの場合カディーアですが、これがあるのでアメリカはこの新しいやり方に強くすすめやすい、ここがアメリカの新しい競争力です。


こんなことではアメリカが途上国の市場をみな占拠してしまうんではとう感じがします。


日本にはIT(技術)も先進国の投資家(大企業)もありますが、現地の起業家に縁がうすい、だから添え物として誰かについて行くしかないのが残念なことです。


途上国の経済開発はこの数年で様変わりしてしまいました。

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