アメリカの設計図神話

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ティーチ・フォア・アメリカのウエンディ・コップによると、低所得地域の子供と高所得地域の子供の教育格差はこんなぐあいになります。


・大学を卒業する確率は七分の一
・算数では1~2年、読解では3~4年のギャップ


これでは建国の父たち、ワシントン、ジェファーソン、フランクリンなどが描いた理想国家像に反しており、万人に機会均等になっていない、だから私が設計図に戻してやる、それがティーチ・フォア・アメリカの事業理念だ、と単純明快です。


こうした考え方は万人と共有できます。そのためにティーチ・フォア・アメリカは万人からの支援があり事業が進みました。


国家の基本設計図から外れている、元に戻すんだと立候補したのがオバマで当選しました。


社会起業のアイディアは単純明快、万人と共有できるものでなくてはいけません。

ティーチ・フォア・アメリカの教訓はここにあります。

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15兆円はこう使う

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新潮45、5月号にこの特集があります。編集の意図は、金を使うなら、頭を使え、です。社会性の強い事業の提案が多いのだろうと思い見てみました。


識者の提案はこんな具合です。
大前研一ー消費が出るような政策、例えば自動車の買い替えに補助金を出す
金子勝ー派遣切りへ住居費と生活費、中小企業への融資、救急医療
榊原英資ー消費刺激、補助金、自動車、太陽光発電、風力発電、農業、安全と健康
櫻井よしこー教育、国公立大学に100億円づつ研究費、農業、美しい国土
野口悠紀雄ー20から30兆円の需要、公共投資、2兆円でなく20兆円を一挙に支出、使途は問わず
湯浅誠ー貧困家庭への教育費


答えは意外に平凡です。


景気対策だけなら、生産が増え、雇用が増えればいいんですが、プラス安心、安全ネットも張れるものを提案する傾向があります。


10年以上の小さな政府、市場経済で安心・安全ネットが弱くなってます。これを張りなおそうが時代の雰囲気です。


○○センター、商店街活性化、道路など、昔の支出先はもう出てこないのが時代が進歩している証拠ですが、何か新鮮で新しいコンセプトを打ち出し、国民がその気になることが必要ですがそれがありません。


それが「社会起業だ」と思います。社会性の強い事業に支出するんですから

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ウェンディ・コップ「いつか、すべての子供たちに」(英治出版)の9章「ティーチ・フォア・アメリカ(TFA)の評価」の最後はこう終わってる。


「アメリカのもっとも貧しい地域社会のいくつかで、献身的な若者のグループとして大きな勢力になっている。私たちは、公共心のあるリーダーたちの一群を、未来に向けて育てているのだ」


ちょっと前の市場経済全盛の時代からこんなことをやっていた。現在から振り返ると、かっこよいことをやっていたんだと思う。


TFAは90年に始まり、貧困地域の公立学校へ一流大の新卒を2年間送り込み教育レベルを上げる事業をやっているが、その卒業生は延べ16,000人になる。


一流大学卒は、投資銀行、コンサル会社、ロースクール経由で弁護士になるのが定番だったが、それを覆したのが画期的なことである。


しかも16,000人の卒業生の6割以上は、教育関係、例えばチャータースクール(公設民営校)の経営者、教育企業や教育コンサルのマネジャー、連邦政府や州政府の教育部門の幹部になり、相変わらず教育を仕事をしている。


上記の本の後半三分の一は、卒業生がいろんな場所でアメリカ社会を変える話が語られている。


TFAの参加者は2年後にTFAを離れたあとも、教育でイノベーションを起こそうと挑戦してるのがすばらしい。


会社はスケールアップを目指すが、TFAはスケールアウトし、社会を変えてるところが事業の革新力である。


その影響力の大きさが評価されてるんだろうと思う。

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ウェンディ・コップ「いつか、すべての子供たちに」の8章「上昇軌道」の一番最後に出てくるフレーズである。


ティーチ・フォア・アメリカ(TFA)の創業者コップは2000年の春にクリントン大統領から若手リーダー30人の一人として夕食会に招かれる。TFAは90年の創業なので10年目だった。


このときコップは、ここまで来られたのだと感慨を持ち、友人が表題のメールをくれた。


TFAは93年ごろから苦境におちいる。事業が急成長し組織がまにあわない、創業期だけの資金援助に依存してたので資金援助先を広げる必要があった、などのことで壁にぶち当たる。


また伝統的な教育学部の保守的な教授から、TFAは教育現場を混乱させるだけだと非難される。先生軍団は視野の狭い専門家集団で革新的なことを嫌うのはアメリカでも同じであった。


こんなことで事業は壁に当たり突破するのに90年代の後半までかかった。


クリントンに招かれたのはその壁を突破し、上昇軌道に乗り始めたときでコップはこの時初めて自分の事業に確信を持った。


アメリカの低所得者が住んでいる学校では先生が不足し(教育学部を出た先生が赴任しない)、高校卒が臨時教員だったような状況だったので、一流大学卒が2年間来てくれるのは現地から大歓迎され、コップのアイディアは成功間違いなしだったが、それでも事業化となると10年もかかってしまったのである。


社会起業は社会性が豊富なので、認知も社会から受けることが必要である。この認知はマスコミから「ちやほやされる」ぐらいのことでない。


コップは昨年始めにタイム誌の世界を変える100人に選定されたが、こんな認知でもよい。


この社会からの認知の仕掛けは大事である。まだ日本にはないが整えるべきこと。

1万人のイノベーション

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アメリカでグリーン革命が論じられてるが、パラレルにこれも論じられている。市民が起こすイノベーションのことである。


対する概念がマンハッタン計画(原爆開発)、国家主導のイノベーションである。


IT・ウェブ革命のつぎがグリーン革命とくると、時代は1万人のイノベーションの時代に入った。


社会起業もこれである。


日本では1万人のイノベーション論にはなじみがうすい。国家主導や大企業主導になれてるからである。


1万人のイノベーションになれなくてはいけない。今度の15兆円を使う09年度の補正予算でも、市民イノベーションが起こる土壌をつくることに使えばいいのに、そんな感覚が全くない。


ここがいけません

シンキング・ビック

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大きく考えるクセ、流儀のこと。


ティーチ・フォア・アメリカ(TFA)を創業したウェンディ・コップのやり方がこれである。


ウェンディ・コップは昨年の前半タイム誌の今年世界を変える100人にノミネートされたアメリカ希望の星である。このブログでも昨年の5月7日に取り上げた。


彼女が書いた「いつか、すべての子供たちに」、原題は、ある日、この国のすべての子供はエクセレントな教育を得る機会を持つだろう(英知出版)に、このやり方がしばしば出てくる。


この本は2001年に出版され、TFAの90年代10年間の物語だが、日本では今月出版された。日本でもやっと社会起業コンセプトが広がりTFAの経験が役立つときになったからだ。


面白い本で社会起業の原型を知るにはよい本である。


TFAは一流大学の卒業生を低所得地域にある学力の低い学校に先生として2年間送り込む事業をやっており、2008年には3600人も採用した。(90年以来延べ14,000も送った)


驚くべき雇用力である。


レーガン大統領の8年間で小さな政府のために公共支出がカットされ、低所得地域の小学校から高校までの学校が荒廃した。中退が多かったり、大学進学者が少なかったりと生まれた場所しだいで教育の機会が違い、機会均等になっていないことにウェンディ・コップが怒りを感じ始めた事業である。


1年目の90年には500人の先生を派遣し、2年目は1000人目標のところ700人になってしまったが、スタートにしては多い数である。


ウェンディ・コップがこうしたのは社会に与えるインパクトを大きくするためである。


教育市場は政府が事業をやっているほど巨大である。それを変えるにはビックに考え、急いで成長しなくてはいけない。しかしTFAがこれだけ大きくなっても、教育界が変ったとはまだなっていない。


社会起業は巨大な領域を相手にする。国家が事業をやっていたようなところであるが、ここで創造的で破壊的なイノベーションを起こして古いやり方を変えるアイディアで始まる。


そのために大きく考える流儀ですばやく大きくなって影響力を発揮しなくては価値がない。数十年の覚悟がいる事業である。


この辺りのことが日本ではいまいちで、TFAのほどのものはまだ出てきてない。学ぶことである。

スイスのダボス会議を開催しているシュワブ財団が社会起業家賞を選定してますが、今年は日本からも選定されます。


応募要領は、SEOYアワード日本プログラムのWEBページにあります。
http://www.schwabfoundseoy.org/ja/competitions/competition/88


・受付期間は4月7日(火)~6月15日(月))
・1次書類審査 6月下旬
・2次資料提出 7月20日まで
・最終審査 8月下旬
・アワード式典 9月上旬


日本での窓口はNPO ISL。
http://www.isl.gr.jp/


この賞は社会起業家では世界のブランドです。


イギリスの社会起業家の教訓に、自分で賞をつくってでも授賞せよ(社会の認知を広める)というのがありますが、この賞なら申し分ありません。


賞金はありませんが信用力がつきカネが集まり事業が進みます。


また既に世界中で数百人の受賞者があり、そのネットワークに入ることができます。英語じゃなくてはいけませんが。


すぐれたアイディアから生まれた事業が授賞対象ですが、逆にこの賞があるのでこれを狙ってアイディアが生まれ事業が進むことだってあります。


日本の事業が世界を驚かせるような時代になるといいんですが、まだダメですがきっとそんな時代がくると思いたい

本屋に行ったら、これが雑誌コーナーにたくさん平積みされてました。


こんなにたくさん並べてだいじょうぶなのかと心配になりましたが、副題は「あなたでもできる世直しビジネス」、今はそんな雰囲気なので、そこを狙った企画なのでしょう。


中身をパラパラと見ましたが、社会起業家入門編のコンテンツです。


690円とたくさんのボリュームのわりには安く、おすすめです。


社会起業家は90年代の半ばからイギイスとアメリカで開発されたコンセプトで、日本に入ってきて10年弱になりますが、日本の経済や経営の土壌がやっと社会起業家向きにかわり、人びとの関心がそこに向ってきたことを実感します。


市場経済一辺倒や自由主義経済から世間の思潮は一変し、社会性濃厚な時代になってきました。


これからの先進国の成長産業はグリーン産業や医療・福祉産業と「社会性」が成長の必須の要件になってきました。


「社会性」の味付けがないと成長しない、収益をあげるために社会性が不可欠なものになる、これまでの全く反対の時代になってしまいました。


つれて社会起業のコンセプトも第一世代をおわり、第二世代や第三世代へ進化して欲しいと願います。ダイヤモンドの特集もそのあたりを狙ったらいいのにと思ったのですが。


このブログはしばらく休んでましたが、グリーン革命から再スタートしました。「グリーン革命は社会起業家が先導する」といいたいのです。第二世代、第三世代のものへ進化させたいと思ってます。


そんな試論をこれから展開して行きます。

G20のグリーン産業

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この間あったロンドンのG20で、グリーン産業への投資を増やすことに合意した。


景気対策のためで、経済を回復し雇用を増やす。


日本の新聞やテレビではあまり報じてないが、ITやネットでなくグリーン産業が成長分野だと合意し、ここで付加価値や雇用をつくると決意したのが新しい時代になったことを感じさせた。


この合意を受けたのだろうか、麻生政権は追加経済対策で省エネ家電やエコカーに対し、数千円から数十万円の補助金を出すことを考えてるようだ。


選挙前の経済対策はばら撒きになってしまうが、グリーン産業育成のためには好ましいことである。


でも財源をどうするのか。


グリーンイノベーションを起こすには、国家は石油や石炭に課税し価格を引き上げ、一方、太陽電池や太陽光発電、省エネ家電、エコカーへ補助金を出し、エネルギー価格を画期的に変えることが必要である。


太陽や風で電力を生産しても石炭や石油から生産した電力とは差はない。そこで価格だけが問題で、安いほうが広がる。


そこで炭素エネルギーに懲罰的な税金を課し、反対にクリーンエネルギーを補助し価格を下げる。


これがグリーン産業成長の核心である。


財源は財界は反対してるが炭素税を導入し、それをクリーンエネルギーに使えばいい。ロンドンの合意をプレッシャーにして課税をやればいいのに、その議論はまだない。


政府はグリーン革命を起こす決心が足りない。炭素税でグリーン産業に乗り出すことを示せば、バラマキをやるよりもよほど市民の心をつかまえると思うのだが。

スマート・グリット

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昨秋、オバマ大統領のグーリーン産業にこの言葉があったが、以来気になっていた。


「頭のいい高圧送電線網」のことである。アメリカではこの投資が増え、日本でも関電が実験を始めた。


ニューヨーク・タイムズのコラムニスト、トーマス・フリードマンが書いた「グリーン革命、原題はホット・フラット・クラウデッド、温暖化、フラット化、人口過密化、われわれはなぜグリーン革命が必要で、それはアメリカをいかにリニューアルするか」、10章、エネルギー・インターネットにスマート・グリットのことが詳しく書かれている。


日本の新聞やテレビでは、家庭の太陽光発電で電力を生産し電力会社に売ったり、電気自動車に蓄電していた電気を電力会社へ売る(夜間の安い電力で蓄電し、日中高くなったときに売ると儲かる)ようなことを報じているが、ほんとうは電気料金を季節ごと、時間ごと、例えば昼間と夜間、に変えることができる送電線網のことである。


電力需要は夏の日中が最も多く、夜間は少ない。需要の多くなるときに料金を高くすると需要は減る、今はこれができないがこうすると無駄な電気の利用がなくなる。


エネルギー省の研究所がワシントン州で2007年に実験し、15%の電力が減ることがわかったが、以後GEなどが率先して研究開発と投資をしている。


SBB、スマート・ブラック・ボックス、電子レンジぐらいの大きさのものをビルや家庭に設置し、送電専門のコンピュータだが自動的に電力を双方向に扱うことが出来るようにする。


エジソンとビルゲイツのドッキングといっているが、アメリカでの関心が高い。


アメリカには日本と違い3200社もの電力会社があり、その送電線網はつぎはぎなので境界を越えて送電するのがたいへんである。スマート・グリット投資が増えるのにはこんなアメリカらしい事情もある。ここは日本と違う。


節電型家電は日本の得意芸であるが、家電製品にマイクロチップ、送電線網にやさしい家電コントローラーをつけると料金の安い夜間に家電を稼動させることができる。夜中に家電が動いているなんて今は不気味だが、そういう世界がくる。


また、電力会社は「エネルギー効率サービス企業」、インターネット・プロバイダーのような役割の企業であるが、ここがスマート・グリットを使うサービスを新しく開発し提供するようなこともやる。


電気自動車はガソリン自動車を電気に変えるだけのことで新しくはない。


しかしスマート・グリットからは全く新しいサービスが出現する。何が出てくるかはやってみないとわからないが画期的なビジネスが創造されそうである。


グリーン産業ではこんなビジネスが出てくるが、それゆえ高頭脳がここに関心を持つのは当然である。