シリコンバレーにある起業家精神の中にある一つの要素。


梅田望夫さんは最近「ウェブ時代、5つの定理」の本を出しましたが、第1定理の「アントレプレナーシップ」(起業家精神)についてそのエッセンスをサンケイ新聞に書いてます。


その中身は
・新しい物事に対する積極的意欲
・リスクを引き受けて果敢に挑む姿勢
・不確実な未来を楽しむ精神
・飽くなき探究心や冒険心や没頭
・変化を求める心
・自分の頭で考え続ける力
・始めたら徹底して勝つまでやりぬく気持
これらが起業家精神です。


こういうことは普通短期間なら続きますが長続きしません。それを永続させるのが「世界をよりよい場所にする」というエンジンです。


「常軌を逸した熱は、やりたいことをやるという気持ちと、社会をより良くしたいという思いの組み合わせによって持続する。お金が最優先事項では長期にわたってそういう熱が持続しない。倫理性と経済性が融合したシリコンバレーのそんな独特の論理が、仕事の面白さを倍化させ、強い働く意欲の源になっている」


若くして金持ちになりたい、誰にも解けない難問に挑戦したい、知的な挑戦・知的な刺激を求めることが動機ですが、梅田さんは社会をよくしたい気持ちがエンジンになっているといいます。


これは社会起業家がもっているものと同じです。だからマイクロソフト、イーベイ、ヤフー、グーグルの創業者や社員が社会起業にも乗り出すのです。


世界中にある起業家精神で世界をよくすると思う強さは他の所にはないことだと思います。日本でも起業家が登場してますがこれはない、インドでも中国でも最近は起業家精神が出てきましたが、世界を変える気持ちがあるとは思えない、世界の起業家精神の中で特異なものです。


なぜシリコンバレーだけそうなのか梅田さんは書いてませんが、アメリカが世界国家なのでこうなるのでしょうか。


インターネット産業はワンクリックで世界につながります。アップルの楽曲販売店はアメリカでウォルマートにつぐ第2位のショップになってしまいましたが、知的な商品はワンクリックで瞬時にカネに変わってしまいます。


しかし世界をよい場所にするという倫理感はネット産業になくてもよいことです。しかしそれがある、その理屈がわかりませんが、感覚としてはなんとなく納得できます。


阿吽の合意みたいなものなんでしょう。社会起業はそうした感覚の一翼を担っている新産業なのです。

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ボブ・ゲルドフ

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今日の新聞にアイルランドの歌手ボブ・ゲルドフが外務大臣に会ったり新聞記者に会って5月にあるアフリカ開発会議や夏の洞爺湖サミットで、アフリカの貧困撲滅では、主催者である日本政府は特別な指導力を発揮してほしいと呼びかけたことが出てました。


受けた外務大臣はどんな反応をしたのでしょうか、あまりない訪問者だったのでとまどったのでは。


ゲルドフがこんなことに関心を持ったのは81年30才のときアムネスティの慈善コンサートに参加したときからですが、以後ずっとこんな活動をやっており、80年代に首相だったサッチャーの政策にも影響を与えたらしい。


2005年にはイギリスのグレンイーグルズ・サミットでボノを動員してアフリカへの債務帳消しや貧困撲滅に先進国は支援するよう訴えて成功し、06年にノーベル平和賞候補になったことがあります。


こうした活動ではボノが有名ですが、奥にゲルドフがいたのです。元祖です。


ゲルドフがつくった歌詞はすぐれているという評価がありますが、言語力が優れてるので言霊で人を動かします。


ゲルドフは歌手になる前はジャーナリストをやってたことがあり、訴えれば人々に伝わる、伝わると世界は変わるとわかってるんでしょう。


そういえば俳優のジョージ・クルーニーも似た活動をやって有名ですが、父がジャーナリストで息子を鍛えアフリカ支援活動を父と一緒にやっている、こうして点で同類です。


アメリカもイギリスも世界を支配していたことがあるので世界を変えるデザインを描くのは自然なことです。ゲルドフもボノもクルーニーも世界国家を経験した産物だと思いました。

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経済産業省地域経済産業グループ地域経済産業政策課が昨年の9月からすすめていたこの研究会の報告書案がハブリックコメントを求めてアップされました。サイトはここ 。報告書案、基礎データ、審議議事録が載ってます。


この研究会は谷本寛治一橋大学教授が座長をつとめましたが、社会性の強い事業を日本に広めるために政策提言するのは意義あること、それでやってるんだと話してましたが、この種の提言では日本で初めてではないでしょうか。


報告書と資料を見た感想をいくつか書いてみます。


・ソーシャルビジネスの市場規模は2400億円、8000事業所、雇用数3万2000人と推計(1300の調査対象へアンケート調査しこれを基にして推計)、イギリスの5兆7000億円、5万5000事業者、77万50000人の雇用規模に比し微々たるものだが、これは日本でまだ広がっていないせいで、ポテンシャルは日本のほうが大きいと考えられる。(日本でも実際にはもっとある感じがする。ポテンシャルが大きいという認識は同感)

・知らない人が84%とほとんど知られてないので、これから認知拡大策が必要。

・信用できない理由は、公的な認証がない62%、継続性に不安31%の二つが上位。(いまさら許認可事業にはできないので、事業が継続できる見通しができるまで3年ぐらい国が信用保証、経営支援するのか、政策を具体化するには知恵がいる)

・今後提携を強化したいところは、都道府県51%、企業45%、教育機関42%。(企業と大学を変えるにはどうするのかです)

・サービス利用理由は、経営理念29%、紹介24%、なんとなくが17%。(社会をよくするために消費を使いたいという新しい消費者像が出てます)

・事業分野は、地域活性化とまちづくりが61%、保健・医療・福祉が25%、教育・人材育成が23%で御三家。(現状はソーシャルビジネス = はまちづくり事業である)

・48%の人が地域や社会に貢献するプラスのイメージを持っており、23%の人が行政や企業では手の届かないきめ細かいサービスを提供できるとプラスのイメージを持っている。(消費者はソーシャルビジネスのサービスを待っている姿が感じられる)

・期待は、事業の継続51%、地域の課題を解決するが44%、地域だけでなく日本や世界の課題を解決することが33%、と期待は大きい。(地域をよくするだけでは不満、社会や世界をなえなくてはという思いがあることを感じる、意外だがまともな思いです)


政策課題は
・社会の認知不足をなくす(産業政策の隙間に落ちていた感があると反省)
・ノウハウや成功事例を学ぶ場をつくる(全国協議会のようなもの)
・モデル地域事業の推進
・中間支援組織をつくり相互間で切磋琢磨する
・中小企業、ベンチャー支援と同様の支援を行う(既存の支援策を活用)
・資金調達策(信用保証、ファンド、寄付税制。。。)
・人材育成(高校と大学、インターンシップ)
・事業評価のガイドラインの開発
などが記述されてます。


どれもそうですが、認知不足が根本にありますので、提言は「国民運動を起こしソーシャルビジネスで社会のひずみを失くし、日本をよくする」「ソーシャルビジネス立国論の提案」ぐらいに大きく構えればいいのにと思いました。


マスメディアを使う、ネットを使うとかしてソーシャルビジネスを起こす大きな作戦を展開するとかやればいいんです

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アメリカの大統領選挙で躍進を続けているバラック・オバマは、85年から88年にかけてシカゴでNPO活動をやっていたことがあります。


コロンビア大学で政治学を学びコンサル会社に短期間勤めたあと、20才代半ばに荒廃していたシカゴの黒人街に入り、低所得者への支援活動をやるNPOに入りましたが、このときの同僚がテレビニュースでオバマのことを語ってました。


彼がいた事務所はここだと映り(この事務所はまだありますが、空き室できたない事務所でした)、彼は税金で生活していた生活保護者に、この貧困から脱出するには「自立することだ」と熱っぽく語り続けていたと話してました。


人びとに語りかける独特のスタイルはこのとき身につけたのでしょう。このときの様子はオバマの自伝「マイ・ドリーム」に長々と書いてあります。後半が第二部、この半分ぐらいはこの話になってます。


それによるとコロンビア大学時代に市民活動でボランティアをやりコミュニティ活動に引き込まれ、卒業後は「コミュニティ・コーディネーター」になろうと決心しました。友達にこの話をすると、そんな仕事どこにあるのと怪訝な顔をされるぐらいで、まだ社会にはそんな仕事が認知されてませんでした。


今考えるとこれは社会起業家です。


仕方なくコンサルティング会社で働きますが、そのうちあなたの望んでいた仕事がここのNPOにありそうと友人にすすめられて、履歴書を持って訪ねます。


NPOの経営者は、今の公民権運動はピケをやったり叫んで訴えてるだけだがこれでは前進しない、ビジネス的なやり方がいるが、コンサルタントをやっていたとはいいね、と即座に採用になります。


オバマはここで地域のリーダー、行政、教会などをコーディネートし「雇用訓練センター」「青少年センター」などをつくります。どれも後で定番になるプログラムです。こんなことがシカゴのNPOでやった仕事です。


85年から88年というと、80年から始まったレーガンの小さな政府で連邦サービスはカットされて、権限委譲された地方自治体でも権限があってもカネがなくカットされた公共サービスを補完できない状態で、社会は荒れ果てた底にいたときです。


これじゃアメリカで社会主義革命が起こるとか、アメリカは州ごとに独立しバラバラになってしまうと嘆かれた時代です。社会混乱の底にいて誰にも将来の展望が描けない時代でした。今の日本と同じです。


このときに社会起業家が登場し、民間の力で公共性の強いサービスを提供することが始まりました。


上記の同僚の話しでは、彼は「社会を変える」気持ちが強く、伝統的なNPO活動を飛び越えて革新的な仕事をしていたのです。現在では都市の貧困所帯に自立をうながし、社会起業はそれを支援する事業を展開するのは定番化しつつありますが、当時オバマはその始まりに立ち未踏の道を切り開いていたのです。


私はこの画像を見て、あぁ、この3年間は社会起業家だったんだ、オバマは社会起業家のはしりをやっていたんだと思ったのです。


当時は社会起業家コンセプトなどまだなく彼自身はそんな認識はなかったんでしょうが、行動はそうでした。


このときの経験がオバマの土台をつくったのです。


その後、ハーバド大学ロースクール(88年~91年)を卒業してシカゴで弁護士業をやってますが、公民権擁護の弁護士でカネにはならなかった、NPO活動の経験から高収入の花形弁護士事務所のオファーを断り、こんな道を選んだのです。もしニューヨークの有名な弁護士事務所に入ったら大統領候補になることはなかったでしょう。


不思議なことです。


以後州議会議員、連邦上院議員と進み大統領候補にまでなりましたが、シカゴのNPO活動の経験が大統領候補まで躍進した出発点だったんだと思ったのです。


20才代の半ばに社会起業の経験をやった人材が20年後に大統領候補になった、これがオバマです。


ヒラリーは勢いがなくなった、共和党候補のマケインは女性スキャンダルが出てきた、ニューヨーク・タイムスが自信を持って伝えてるんですから本当でしょう、二人ともおかしくなってきているのでオバマは大統領になる可能性が高い、こうなるとアメリカでは社会起業経験者が大統領になるなんて愉快なことです。


日本でも20才代で社会起業に乗り出す人がたくさん出てきてます。20年後首相になるると面白いのですが、こんなことを考えてると楽しくなります。

ゲイツ財団のトップ辞任

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Patty Stonesifer, ゲイツ財団のCEOですが、来年の1月に辞任、97年にトップになったので11年やっていたことになります。


彼女はゲイツ夫妻とはマイクロソフト時代から一緒に働き、ゲイツ財団に転じてからもともに働いてきており、11年間の間にゲイツ財団を強力な組織にしてくれたとメリンダ夫人は惜別の言葉を送っています。


ウォーレン・バフェットも、彼女はどんな仕事をやっても目立っており、特に財団のマネジメント、意思決定では抜群だったと賞賛してます。


ゲイツも彼女を財団に呼んできてよかった、財団がここまで成長できたのは彼女の貢献だと感謝してます。


ゲイツ財団は387億ドルの資産を持ち、500人以上の人員をようする財団まで育て、Global Health,Global Development, the U.S. Programsのプログラム、1番目は途上国での感染症をなくす事業、2番目はアフリカでの農業開発、3番目はアメリカでの教育支援ですが、を先導し、160億ドル以上の寄付に彼女はコミットしてきました。


辞任しても副会長として残り、財団の新しい任務につくようです。


彼女自身、このユニークな財団での仕事では、私のワイルドな夢以上のことを成し遂げられたと満足している様子です。彼女によると、ゲイツ財団のリーダシップチームはかって経験したことのないものであって、良質な戦略があり、とんでもなく並外れたひたむきなパートナーと仕事をやったと語ってるのは本心でしょう。


現在グーグルの経営がかってみたこともないような経営で話題ですが、同様にゲイツ財団の経営も非営利法人の先端を行っているのです。


彼女がつくったこの経営手法はそのうちビジネススクールなどで研究されて非営利法人経営のモデルになるのでは、そんな感じがします。


次のCEOは誰になるのか、ゲイツは誰を選ぶのか見るのが楽しみです

2月16日の毎日新聞にこれがありました。東村山市は10月に開設する「子育て支援センター」を近くの白梅学園大に運営委託します。


東村山市は、旧多摩東村山保健所(統合により余った保健所)の建物を利用して子育て総合支援センターを10月に開設する。就学前児童を対象とした遊び場や、その保護者向けの講習会やセミナーの会場として利用。


その運営を子ども学部を置く白梅学園大(小平市)に運営を委託する。運営費は3900万円。大学は子育て団体やNPOと連携して進めます。


記事になったのはこうした支援センターの運営に大学やNPOがかかわるのが珍しいからです。


白梅学園大学は、保育、福祉、文化をキーワードにして、保育士資格、幼稚園教諭免許、小学校教諭免許を取得し、保育者・教育者として能力を持つ新しい人材の教育をやっている専門大学です。


ホームページを見ますと、昨秋現代子ども学研究所をスタートさせ、学外の地域の人びとが参加する連続セミナーを開催してます。


これは社会起業です。大学はそこまで考えてるのかどうか、たぶん考えてないでしょうが、委託運営費を消化するだけでなく、子育てについてのいろんなサービスをつくって事業にすればいいんです。


イギリスには小学校の空き教室を使って地域センターになって大成功した事例があります。学校だから教育だと狭く考えずに、地域で欠けていたサービスを創造し、学校の枠組みを飛び越えて事業を展開したから成功しました。


成功の教訓は「広く考えろ」です。


この子育て支援センターも同じです。市の施設だからそれらしく、大学の実習施設だからそれらしくでは社会起業になりません。


うまく事業をデザインすれば全国のロールモデルになりそうな種で全国へ波及します。このモデルを全国へ波及させるぐらいの大望をもって取り組んで欲しいと思います。

今回でこのブログも500回目、05年4月からスタートしましたが、書きはじめに比べて社会起業家コンセプトは日本社会でずいぶん広がってきました。おかげで書くネタはたくさんありますのでこれからも書き続けます。


表題は2月11日の日経「スイッチオン・マンデー」の見出しです。NIKKEI NETにはこの記事が載ってませんので簡単に紹介します。(休日の評論はネットに載らないんでしょうか)


慶応大学総合政策学部では「社会イノベーション」を三本柱の一つにして(残る二つは公共政策と国際戦略)、ソーシャル・イノベーションやソーシャル・ビジネス・プランニングなどで、金子郁容教授や井上英之講師が教えてます。


その卒業生が社会起業を始めました。駒崎弘樹(フローレンス)、山本繁(コトバノアトリエ)、宮路勇輔(みやじ豚)、山口絵里子(マザーハウス)、今村久美(カタリバ)、柳明菜(ザ・ウイロウズ)の6人が顔写真で載ってます。


会社名を見ただけでは何をやってるのかわからない、最近はこういう会社が増えました。


くわえて片岡勝さんが山口に引っ込んでやっている社会起業も紹介してます。この系統で3名の人が紹介されてますが、これは慶応ではない。でも片岡さんは慶応卒、こんなわけで表題のような見出しになったのです。


書いたのはベテランの経済部記者で編集委員の石鍋仁美記者、石鍋記者は他にも社会起業の記事を書いてないかと探してみたら、日経ネットで連続的に書いているコラムにありました。『「社会起業家」が示したマーケティングの力』(2007/11/14)で、サイトはここです 。駒崎弘樹さんが書いた本『「社会を変える」を仕事にする』(英治出版)を題材にしており、駒崎さんの事業には感動したようです。

社会起業を継続的に取材しているわけではないので社会起業に深い認識ある記事とは感じませんでしたが、「実学志向のイメージが強い慶応大と社会起業はやや不釣合いな印象があるが、福沢諭吉は非常識な過激派という説もあり、福沢の一面を受け継いでいるのかも知れない」と記事を結んでいます。


21世紀の実学が社会起業に変ってるんですよ。だから福沢諭吉精神です。


慶応総合政策学部の社会イノベーション講座については三田からも聞きにいっている学生がいると聞いたことがあります。他の大学でも社会起業を教えたいという話をときどき聞きます。


社会起業が若い人の知的な好奇心を呼び起こし学びたいと思ってるんですが、こういうことを知ると未来は明るいと確信を抱きます。

5月に横浜で開く第4回アフリカ開発会議(TICAD4)で日本政府は、アナン元国連事務総長が会長をやっている「アフリカ緑の革命同盟」(AGRA、the Alliance for a Green Revolution in Africa)への支援を表明するようだ。


AGRAはメリンダ & ゲイツ財団、ロックフェラー財団と一緒になってアフリカの零細農家の生産性を上げて自立した生活にして飢餓と貧困から脱出する事業をやっている。(ロックフェラー財団が参加してるのは、中南米とアジアでの農業革命で成功した体験がありそのノウハウを移転するため)


政府はここから提携の申し出を受け、日本で開発した乾燥に強い農作物の品種を提供したり、農産物を市場に出すために農道を整備する事業にカネを出す。


1月に福田首相がダボス会議へ出席してアフリカ支援を表明したが、このときアナンやゲイツと話して進めてるのだろう。


従来のODAから一歩出たODAを社会起業よりにする試みで、日本政府にとっては挑戦的な試みである。


従来のODAには官僚主義だったり、利権に集まる政治家や企業の姿が連想されたが、今度はそうは行かない。何しろ相手が事業の効果を追求する点で強力な連中で、古く陳腐化したやり方では跳ね返されてしまう。


下記にゲイツ財団とAGRAついて記述したが、起業家型の途上国開発をやるので、こうした点で日本政府の参加は面白いことになりそうである。NGO活動をやっており、不満の起業家型の人はこういうプロジェクトに参加すると喜びを感ずるのではないと思うのでおすすめ。


日本がはじめる初めての注目すべき社会起業家型政府援助じゃないかと思う。


メリンダ & ゲイツ財団の農業プロジェクト:
メリンダ & ゲイツ財団は、途上国での感染症の撲滅(病気でなければ学んだり働けるので貧困から脱出できる)、零細農家への支援(農業だけで食べてられるようになる)、マイクロファイナンスにより自営業を起こし生活の基盤をつくるなどの活動をやっている。


感染症の撲滅はゲイツの頭にあることだが、それだけでは貧困から脱出できない、もっと生活ができる基盤をつくるところまで事業を広げなくてはというのはメリンダ夫人のイニシアティブでやっており、農業支援事業はメリンダ・プロジェクトである。

ホームページにはこうある。


「一日1ドル以下で生活してる最貧困の人は10億人もいる。ほとんどは零細農家で食べえるのに十分な作物をつくれないでおり、余剰を産むどころではない。


どの国でも農業生産性を上げることなくして飢餓と貧困からすばやく向上することを成し遂げたことはない。(ゲイツ財団の農業プロジェクトは)パートナーとともに、完璧な農業のバリューチェーン、それは種と作物を改良し、マーケットへのアクセスをつくることだが、そのために投資することを第一義にする。零細農家、ほとんど女性が牽引している家庭へ支援の焦点を合わせる。


こうしたステップによって、数億人が貧困と飢餓から脱出することを助けることができると確信する」


メリンダ & ゲイツ財団の投資(資金付与)の基準は
1、農家の生産性上昇
2、マーケットへのリンク
3、アフリカの気候に合った新しい技術
4,データ、研究、政策分析
の4つである。


4番目があるのは意外であるが、これが入ってるのは投資効果を極大にするためと、評価をやるためだろう。これまでの出しっぱなしの援助と違いビジネスのやり方を踏襲しておりゲイツ流の厳しい姿勢が感じられる。


この基準でメリンダ & ゲイツ財団はロックフェラー財団と一緒になってすでに1億5000万ドルをAGRAへ拠出し、アフリカ大陸の小規模農家の生活改善事業を開始した。


さらにメリンダ & ゲイツ財団は1億ドルをPASS( Program for Africa’s Seed Systems )へ拠出したが、PASSはAGRAの最初の事業で、16カ国の1200地域に適合した作物を開発、種を生産して供給、9000の小売農業ディーラーのネットワークをつくり、零細農家へもっとアクセスできるようにして農業投入物(種、灌漑設備。。。)を増やして生産性を上げる。



AGRA:ホームページはここ


活動の狙いはこうである。



AGRAはアフリカの数百万の零細農家を貧困と飢餓から助けるために、ダイナミックにアフリカを先導するパートナーシップ事業である。プログラムは貧困農家の生産性と所得を顕著によくする実践力ある解決策を開発する。種、土壌改良、水管理からマーケットへのアクセス、農業教育まで、キーとなることを農業文化のバリューチェーンでつなげて働けるように(パートナーに)支援策を呼びかける。ゲイツ財団とロックフェラー財団の支援で、ナイロビ、ケニア、アクラ、ガーナにオフィスを置く。


アナンが今年の1月ケープタウンのワールド・エコノミック・フォーラムでAGRAについて長い演説をしているが、エッセンスはこんな内容である。


・3年前に国連事務総長として、アジス・アベバであったアフリカ農業革命についてのセミナーに出席して、数千万人のアフリカのわれらの子どもたち、両親、兄弟、姉妹たちが貧困と飢餓から抜け、機会と希望の世界へと引き上げることを話した。


・わたしはロックフェラー財団、ビル&メリンダ&ゲイツ財団、私たちのアフリカ・キャンペーンを支持してくれる他の人と、このチャレンジを受けることにした。


・われわれのゴールはドラマティカリーに生産性を上昇させ、小規模農家、ほとんどは女性がやっているが、の食料を確保し、収入を上げ、生活をよくすることである。


・2006年にパートナーとともに農家のための新しい種子を開発、農業教育プログラムもスタートした。


・2007年には土壌を改善するプログラムを放ち、アフリカの農地は世界で最も痩せているが、2008年には農家がそれぞれの農地で穀物を栽培できるような水管理をはじめ、2009年にはマーケット情報システム、穀物貯蔵、輸送システムへ挑戦する。


・5年をこえて、AGRAの仕事はアフリカの農家、女性団体、全ての農業分野のパートナーとリーダーに知らせ続けたい。


・5年で100種の新しい穀物を生産する。


・水管理は私たちのプランの試金石である。前途には水使用の改善、特に水が少ない所のそれは至難な挑戦が横たわっている。私たちは、ローコストで、少なく希少な水管理と灌漑テクニックの開発を熱望している農民と一緒になってやり遂げる。


・私たちのものは、野心的なアジェンダである。人びとは言う、私たちは野心的だがまだ何も変っていない中で波間にただよっていると。しかしいろんな資源、才能、パートナーシップにバックアップされて特別なソリューションをつくり、こうして明確な成果を上げると確信している。


・私は10年間、アフリカ問題について人とびとに耳を傾け、援助の約束をつくろうとしてきたが、具体的なアクションプランでは私を渇きに置いたままという経験をしてきた。(しかし)AGRAが現在語っていることは、明確で意味ある方法である。


アナン会長の演説はAGRAの戦略を語ってるのだが、高邁な戦略を実現するには、それを実践する部隊がいなくてはいけない。


この点AGRAのボードメンバーを見るとやりそうな陣容である。


ボードメンバーにはメリンダ & ゲイツ財団のCOOでグローバル・ディベロップメント・プログラムのトップである Sylvia M. Mathews(写真)、2001年にメリンダ & ゲイツ財団入ったが、ハーバード大学卒業、ロードスカラー、マッキンゼーで金融機関担当コンサルタント、クリントン時代の連邦政府に入り、予算局、ルービン財務長官のチーフスタッフをやっていた人物、が入ってたり、ロックフェラー財団の新事業担当バイスプレジデントの Nadya K. Shmavonian が入っていたり、タイム誌で世界に影響を与える100人に選ばれた現地のリーダーや南アのベンチャー・キャピタリストやゲイツ財団でアフリカ・プロジェクトをやっているディレクターが入っていたりと、名誉職でない実践家が理事になってるので、事業の開発力はありそうである。


以上、春に面白くなりそうなことがある話でした。



数日前にNHKBS1で2人の対談をやってました。


バフェットが母校のネブラスカ大学に呼ばれたとき、ゲイツを誘って学生の質問に2人が答える番組でした。大学の経営者、教授なども聞いてましたが(画面にそういう人が前の方に並んでました)、質問できるのは学生に限るというルールで、2人が若い人に語るという構えです。


二人合わせた個人資産は900億ドル以上もあり、ゲイツはメリンダ・ゲイツ財団へ寄付し、バフェットもゲイツ財団へ寄付して世界を変える事業をやってます。2人は10年来の知り合いですが「価値観が似ている」(巨大な個人資産を慈善に使うべきとか世界の問題を事業の手法で解決すべきとかのことでしょう)ので一緒に新しい事業をやってるのです。


学生を相手にした対談なので高度なものではありませんが、2人の考えがよく出てました。


「世界を変えるために何をやったらよいか」と質問を受け、二人とも個人財産を慈善に寄付して「富の循環をつくる」、バフェットは99%寄付すると語り、バフェットはゲイツ財団へ寄付する理由はこの目的を最も最も効率的にやる団体だからだといいます。


「富の循環」とは恵まれた人から恵まれない人への循環のことで、この循環をつくるのが金持ちの義務だと思ってます。


投資する場所は「幸運な切符のない人」で、これは教育を受けられない人と生活できない人のことで、アメリカ国内だけでなく世界に向かって投資されます。


ゲイツは富を支出するだけでなく「頭脳」を提供することを強調してました。これなら若い人でも参加できます。世界を変えるために問題解決策をデザインせよです。頭脳を駆使して社会起業をデザインすることです。


カネをもうけるのも世界の貧困を失くすのも「頭脳を使う」点で同じで、ゲイツはこれを学生にすすめてましたが、この姿勢が頭のよい学生を世界を変えることにチャレンジさせているのです。


「2人がやった大失敗は」と問われて、2人ともやって失敗したことでなくやらなかったことをあげてました。バフェットは投資を逡巡して投資をしなかったことで膨大な利益を手に入れそこない、ゲイツは技術開発すべきところを見落としていたことを大失敗だといってます。


若い人はリスクをとってチャレンジせよです。


ゲイツはバフェットが経営している投資会社バークシャー・ハザウェーの非常勤取締役ですが年収900ドル、マイクロソフトの年収20万ドルに比べやすくボランティア活動だといってます。


マイクロソフトの年収20万ドルも安くて驚きです。所得税が高いので少ない給与になっているんでしょう。


ゲイツがバフェットのスケジュール表を見たとき白紙だらけで驚いたことを話してました。


バフェットはバークシャー・ハザウェーは40数社の投資管理をしてるが、極度に分権化しており、バフェットの仕事は投資配分しかやらず、人にも会わないようにしているのでそうなんだといいます。


バフェットは一人で考えるクセがあり「内側の視点」を大事にしてます。戦略スタッフに相談したり会議で論じ合うようなことは嫌いなようです。


ゲイツは自分のことを偏りの人といい、パーティに招待されても招待してくれた人に挨拶をすることを忘れる人で、夫人のメリンダに指摘されてあわてて挨拶するようなことがあり、二人合わせて一人前です。夫人はゲイツが社会活動をやるには欠くことのできない人です。


ゲイツは50才で今年の夏からマイクロソフトの技術戦略をつくる仕事を若い経営者を指名して引退し、60才まで10年間ゲイツ財団の仕事をやると話してました。


ゲイツもバフェットもまだ金持ちでない学生に、世界を変えるために頭脳を使えとすすめてるのが面白いことだと思いました。世界を変えるのはカネでなく頭脳だからでしょう。


2人の話を聞いた学生たちは、新種の金持ちを目撃して大きな刺激を受けたんではと想像しました。

橋下知事が就任の初日に「財政非常事態宣言」を発し、府幹部と府議会、記者会見で「倒産会社の社員と同じ」「今日からルールを全く変える」「赤字資産の売却、民営化」「赤字を支出カットにより収支をゼロにする」「5兆円の借金削減策を考えよ」と宣言しました。


こういうことは評論家がいうことで行政の責任者はいいません。言うなら「徐々に」とつけるでしょう。そこが異常です。


これを聞くと、そんなことできるわけない、守旧派の猛烈な抵抗にあって失敗すると普通は考えますが、橋下知事はまだ30才代と若くエネルギーに満ちてるので突進してやるに違いない、そうなると大阪府では80年代のイギリスと似たことが起こり社会は大混乱する、しかし大阪再生の早道だと思いました。


イギリスのサッチャー元首相は79年に首相に就任し、国有企業の民営化、労組の力をそぐ政策、所得税と法人税の減税と消費税の引き上げ、医療・教育予算のカットなどを一気に進めましたが、その副作用として医療は崩壊し、公教育は荒廃、失業者が増えました。


こうした社会の混乱は大きな政府を小さくするときに必ず起こることです。あとで振り返ると83年から84年が社会混乱の底だったとわかりました。


混乱の底を経験すると「裏道が健全でないと生活できな、ビジネスは成り立たない」と誰でも実感することになります。そこから困ったら税金に依存する精神がなくなり、自分でなんとかしなくてはと考えるようになり、市民の創造が始まります。


政治家が古いものを破壊し、市民が新しいものを創造するようになるのです。壊す速度が速ければ、創造も速く起こります。破壊と創造がタイムラッグなく進むと混乱も少なくてすみますが、それはほとんどないことで混乱だけが目立つ数年を経験することになりますが仕方のないことです。


こうして小さくなった跡地に社会起業の花が咲きます。これが社会起業が起こる一番初めです。


アメリカでも80年に就任したレーガン元大統領がサッチャーと同じような政策をやり社会が荒れたのは同じです。荒れたあとのことはイギリスと同じことが起こりました。


この混乱は大きな政府から小さな政府に行くとき必ず通る道です。日本では小泉改革で副作用が出てきて驚き、元の道に戻ろうとしてますが、戻る道はもうないので小さな反動現象はすぐに行き詰まり、再び古いものの破壊が続くでしょう。


大阪府でも2年から3年後に混乱の底を経験し、そのとき創造が起こり社会起業家が登場し、企業や市民がそれを支えるようなことになるのかどうか、大阪なら起業家精神がふんだんにあるところですからやりそうな感じがします。


橋下知事は周囲に気配りをするような人材ではなさそうなので、大阪は小さな政府になった日本の最先端の都市になり、そのモデルが日本に広がって行くでしょう。このときが大阪が元気を取り戻したときになります。


2010年代の初めは大阪が日本を先導するイメージが浮かびます。橋下知事はそのプロセスの入り口に立ったんだと思いました。