Sara Horowitz

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前回フリーランサーズ・ユニオンを取り上げたが、今回はその創業者サラ・ホロビッツ(写真)の話しである。


フリーランサーズ・ユニオンはフリーランサーをまとめて、安いグループ医療保険を提供している非営利法人である。主な事業はこの医療保険を売ることにあるが、会員はオンラインコミュニティでプロファイルをつくりフリーランサーズ・イエローペイジにのせて仕事を見つけたり、教育イベント(財務、法律、税、ビジネスなどの実務知識の教育)を開催したりしている。また、フリーランサーの生態について調査をして政治に働きかけて(アドヴォカシー活動)政策を実現することもやっている。


ユニオンと名づけられてるので労働組合とか共同組合を想像するが単なる組織名で、民間の事業でフリーランサーのセイフティネットをつくったのが素晴らしい。


見所は
・創業者Sara Horowitzの社会起業家精神
・広く社会に点在しているフリーランサーと法人客だけ相手にしていた保険会社を結

 びつける触媒機能→社会起業モデルの典型
・日本でもフリーランサーが増える社会になってきたので応用可、似たものは日本に

 もあるが発想が労働組合で物申す団体でセーフティネットではない


フリーランサーズ・ユニオンのホームページの1ページ目にはこうある。
「フリーランサーズ・ユニオンは内国歳入法501条C3項の非営利法人でアメリカで増えている独立した労働者のニーズと関心を代表している。

独立した労働者とは、フリーランサー、コンサルタント、自営業者、秘書、パートタイマー、臨時雇。。。である。

こうした労働者は最近アメリカの労働者の3割近くに達している。

こうした人たちをグループ化し低レートの保険を獲得し(全州で歯科保険、31州で医療保険を販売)、お互いに専門的な質問への回答を行い、一人一人がまとまることでよりよくなる。

この法人は、まだだれもやったことがないフリーランサーの調査を行い、それを通じて政策当局者を教育し、政策を変えるよう働きかける。

現在、全国に渡るオンライン・コミュニティで仕事を探し、知識を分け合っている。」


パブリック・サービス・イノベーターと高く評価されており、ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ワイアード誌、ファースト・カンパニー誌などで取り上げられている。


95年にユニオンの前身となったワーキング・ツデーが創設されてフリーランサーの労働問題を扱い始め、01年ニューヨークのシリコンアレーでフリーランサーを対象にThe Portable Benefits Networkを組成、03年フリーランサーズ・ユニオンに改名した。


ニューヨーク州、ニューク市、フォード財団、マッカーサー財団、ロックフェラー家族財団、モルガン・チェース銀行、ニューヨーク・コミュニティ・トラスト、連邦病院基金などから支援を得ている。


仕事を探すためにフリーランサーズ・イエローペイジに登録するのは無料、グループ医療保険加入者から保険料のほか年50ドルのフィーを取っているが、こうした団体から資金を得て事業を行っている。


サラ・ホロウッツは、労働法専門の弁護士で、祖父、父も弁護士で、コーネル大学で産業・労働関係論を学び、SUNY Buffalo Law Schoolで弁護士資格を取り、ハーバード大学ケネディスクールで修士を取得した。


彼女のやり方は、社会問題を解決するのに、起業家精神でアプローチし、クリエイティブな解決策を追及し、マーケットベースのソリューションを開発するのが特色である。


ファースト・カンパニー誌のリーディング・ソーシャル・アントレプレナー賞に選ばれたり、キャサリン・マッカーサー財団のフェローシップ賞を受賞、エスカイアー誌の50人のべスト&ブライテストに選ばれるほどの有名人である。


似たことをやっているのに全米退職者連盟(AARP)がある。これはカリフォルニアで高校の校長を退職した女性が、退職者を対象にしてグループ医療保険をつくったのが始まりだった。このおばあさんは起業家精神豊富な人材で、保険会社から断られ続けてもあきらめずに全国をまわって退職者のグループ保険を引き受けてくれる保険会社を探して実現した。現在では4000万人の会員を持ち、大統領選挙で大統領を決めてしまうほどの政治力を持つまでになったが、90年代にはあまりに政治力を発揮しすぎたので国税当局から収益事業に課税されたり幹部が更迭されたりする事件が起こり(これについてはこのブログの06年4月26日号にある)、ひどい目にあったが、大きくなると政治権力とは微妙な関係になってしまう。


フリーランサーズ・ユニオンはこのフリーランサー版であり、政策提言もやっているので、全米のフリーランサーを結集して、政治に影響力を持つ団体になって行くのだろうと思う。


日本でセイフティネットというと国の役割だと思うが、民間でそれをやってしまったのがすばらしい。まさに社会起業家精神のカガミである。

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アメリカでは世界最高の医療費を使ってるが乳児死亡率が高く平均寿命も低い、生徒一人当たり教育費はOECDの中でノルウェーについで2位だが生徒学習到達度調査では29カ国中24位、こんな問題があり、どうしたら解決できるのかを考えた人がいた。(それは(「破壊的イノベーションで社会変革を実現する」、ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー08年1月号にある)


答えは「社会部門に投資しても的外れの投資のために成果が出ない、投資先のソリューションが古いままなのでそんな所にカネを投入してもだめ、新しいソリューションをデザインしそこへ投資せよ」である。


日本の問題を見抜かれ、こうやるといいですよと響いた。


的外れでなく的に当てる投資は、既得権構造そのものを改革するので、既得権者を窮地に追い込む。そのために規制とか政治家が邪魔をする、しかしアメリカでは社会起業精神が起こり、邪魔があっても新しいソリューションが進み始めている点が違う。


問題を解決する新しい解決策は「シンプルに低価格」にデザインされてるので生命力が強く、既得権勢力と闘っても勝てる。


90年代の半ばにクレイトン・クリステンセンハーバード大学ビジネススクール教授は、イノベーションを、持続的イノベーション(品質を向上したり新機能を追加する、漸進的な改善)と破壊的イノベーション(新しいものを建設することにより古いものを破壊する)に分けた。このうち後者のイノベーションを社会部門に起こすのだが、前出の論文ではわざわざ「触媒的イノベーション」と呼んでいる。


触媒的といったのは、社会のいろんなセクターを励起し新しい組み合わせをつくる触媒のような働きがあるのでそういったのだろうと思う。このやり方は医療と教育、途上国の経済開発に有効だと断言している。


触媒的イノベーションの成功事例はサウスウェスト航空(顧客指向に徹した価格の安い航空会社)、PC(メインフレームに対抗)で、教育ではeラーニングとコミュニティ・カレッジ(数回前に書いたことがある)の例をあげている。


ミニット・クリニックも成功例である。この会社のサイトはここ


クリニックのディスカウンターであるが、ミネアポリスにあり、全米に87のクリニックをドラッグストアや大手小売店に設置している。予約なしでよく、サービスは健康診断、一般的な治療、予防接種などで、主に専門看護士が専用ソフトウェアによる治療管理を行うが、診療リストにない疾患と重病患者は専門医へ転送する。医療保険のない人、保険があっても安い医療を望んでいる人向きで、病院よりもサービスは低水準でサービスの範囲が狭いがこうしたマーケットはあるので伸びている。


つぎがフリーランサーズ・ユニオン、サイトはここ

ニューヨークにありフリーランサーを相手に安い医療保険を提供している。個人契約したのと比べ保険料は3割から4割も安い。保険会社は法人を相手にしているのでこうした個人をまとめるインセンティブがない。その間隙を突いた。


ニューヨーク居住のフリーランサー(コンサルタント、ジャーナリスト、独立事業主、日本とは違い知的専門職で高給が多い、ニューヨークではこのライフスタイルが増えている)は保険会社が想定していたほどリスクの高い人たちではない(若いせい)ことを分析して、数をまとめて保険会社と交渉して常識を覆した。


個人と保険会社の中間に立ち触媒となってマーケティングとブローカーの仕事をやったのが成功した理由である。


フリーランサーズ・ユニオンは社会起業コンテストで何度も入賞している高名な社会起業で、前にこのブログでも取り上げたことがある。


このモデルはフリーランサーの多い都市では成り立つので他の州でも展開しており、ソーシャル・インパクトの大きなビジネスモデルである。

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キリスト教精神が慈善精神を生んだという説は昔からある考え方ですが、現在でもそうなのか、そう唱えている人がいます。


ハーバード大学政治学部准教授 Margarita Estevez-Abe マルガリータ・エステベス・アベ(日本政治経済論)は連合総研月刊誌11号に寄稿し、ビル・ゲイツとウォレン・バフェットの慈善活動がそうだったというのです。サイト「アメリカ型市場社会とは何か:日本への示唆」はここ。

こんな具合に書いてます。


『何でも市場化し、利潤動機を社会の公正の原理としているようなアメリカにでさえ、その「市場社会」を支える強固な社会規範という基盤があることは忘れてはならない。

アメリカに於いてこの社会的規範は宗教心と非常に密接に関わっている。先進国中でも突出して宗教心の強いのがアメリカ人だ。市場での競争とは別の原理が社会の色々な部分に存在している。宗教心に支えられた強い無償報酬活動(ボランティア)と慈善の精神が、市場と政府の無策を補っている。

アメリカで最も裕福なビル・ゲイツとウォレン・バフェットの両氏が自己資産の殆どを慈善活動に捧げているのは決して例外的なことではなく、非常に宗教的な要素の強い「恵まれた自分がこの社会に何を還元できるのか」という問いへの回答なのである。

ジョン・ホプキンス大学のレスター・サロモンに依拠した計算だと、フルタイム換算にするとアメリカの無償ボランティア人口はアメリカの労働人口の7%弱に相当する。その巨大な非営利民間セクターに見られるように、アメリカの市場社会は利潤動機だけで成りたっているのではない。』


これを知り、ハーバード大の先生ならそうとな知性なのにまだそう考えている人がいるんだと驚きました。ビジネススクールの先生ならもっと違った解説をしたと思う。


私は「わが頭脳なら出口が見つからない難しい社会問題でも解ける」という万能感、「世界を変える」という貴族的な起業家精神、「起業家精神の新しい発露」。。。というようにもっと進化したものに変っている、そこが面白いと研究しているんですが。


そういう社会起業思想はアメリカでもまだ一部の人のもので、社会全体に広がっているものではないのだと見当をつけました。


ゲイツとバフェットの行動はやはり固定観念ではなかなか理解できないことで、「それどうだ」と実績をみせないと社会の常識にならないんです

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梅田望夫さんとまつもとゆきひろさん(オープンソースのコンピュータ言語Rubyの開発者)の対談がネットサイトにありましたが、そこでこんな話をしてました。


『シリコンバレーの連中は「世の中をよくする」という言い方をよくするんですよ。「Make the world a better place」とか「Changing the world for the better」とか。Steve Jobsもよく言うし,Googleの連中もよく言う。オープンソースの人たちもよく言う』

『Steve Jobsが「世の中をよくするって,どういう意味だ」って聞かれて,Jobsは「簡単なことだ。過去に政府や大企業の一部の人にしか開かれていなかった可能性が個人に開かれるんだから,betterに決まっているじゃないか。当然だ」って。それで本当に世の中がよくなるのか議論はあるかもしれないけど,それがそのとおりだって思われているのがシリコンバレーの思想です』


パソコンやインターネットが世界を変えたことをさしてます。


主に梅田さんがそういう話をして、まつもとさんが、私がやっていることもそんな感じがすると応じてます。


社会起業家も同じようなことをいいます。ネット産業と社会起業はこうした点で親戚です。


この場合、社会といってもネット社会のことでなく、医療や教育、途上国の経済開発のことですが、精神は同じです。


医療、教育、経済開発。。。こうした分野へは大枚のカネが投じられてるが、問題は解決せず成果が低い、アメリカで乳幼児の死亡率が高い、平均寿命が低いなどが成果のない証拠です。


理由はソリューションの悪い所へ投資されているせいで、的外れな投資である、それなら起業家精神でソリューションの優れたものをつくって投資する、これが社会起業です。


成果の悪い所とは自治体、昔の非営利法人です。


社会分野への的外れな投資なら、日本にだってたくさんあります。


事情が同じなのに、アメリカのように社会起業が爆発しないのは、起業家精神が足りないのか、個人の金持ちが少ないのか、まだ大きな政府のままだからなのか、社会がだら~としてるからなのか、タイムラッグなのか、どれも理由になりそうですが、時間の問題、来年こそ爆発して欲しいと願ってます。

2週間ぐらい前のことですが、朝日新聞のネット版にフローレンスの駒崎弘樹さんがインタビューで登場してました。Asahiコラムのサイトはここ。



書いたのは女性記者ですが、駒崎流の働き方がすばらしいと思ったのです。


働くのは自分の生活のためだけでなく、世の役立つことのためにも働きたいという駒崎さんの思いと実行が記者の心を捉えました。


私が2000年のころ社会起業家を提唱していたとき、仕事は自分のためにやるが、それだけでなく社会のためになって欲しいとうすうす願っている人に出会い、市場経済一辺倒、私だけ勝者になればいいんだというフィーリングが変わってきたことを実感しましたが、現在ではそれからずいぶん時間がたっているので、一層そうなってきているんでしょう。


社会起業の土壌はますます耕されてきました

『「毎日、地をはうような努力ですよ(笑い)」。しかし事業は順調に拡大し、行政も連携を求めてくるほどだ。助け合って暮らし、社会に役立つ仕事で生きる。駒崎さんから、温かく、確かな働き方を教えられた。』

起業と社会起業はほぼ同じ、CSRは本業の戦略に組み込むべきとか書きましたがそれにつきコメントをいただきました。


「成功している起業家とは、革新的なビジネスモデルだけではなく、社会に与える影響と責任を十分に自覚している人たちです。。。。目先の利益だけにとらわれず、社会的責任を自覚している企業こそ成功し生き残ることができる。そういった点において、社会起業家も起業家も同じなのだと思いました」


「私も最近強くCSRは本業でこそ成し遂げるべきと最近強く感じておりました。。。。大企業がやるべきこととして、植樹も大切だと思いますが、自社のみならず、日本全国のものづくり人材育成を支援するようなことが出来ないものかと考えたりしました」


日本でもこんなことを考えてる人がいるのは、いいことでまともです。


前回書いたマイケル・ポーターとマーク・クラマーの論文に出てくる旧世代CSRと新世代CSRの具体例はこんな具合です。


旧世代(受動的)CSR:GE
89年から99年まで自社工場近くの成績の悪い高校を支援、一校当たり5年間で25万ドルから100万ドルを寄付、対象は10校、卒業率は3割から6割に倍増した、地域貢献度は高いが本業との関連性が乏しい、工場の雇用や定着率へのプラス効果は小さかった


新世代(戦略的)CSR:マイクロソフトとマリオット・インターナショナル
・マイクロソフト
全米コミュニティ・カレッジ協会と提携して、体系的なITカリキュラムをつくる、教室で使う器機を新しいものに変える、教師の知識をアップデートするプログラムを作成するの三つをやった。マイクロソフトの負担は5ヵ年で5000万ドル、社員からボランティアを募りプロの経験を投入、ここが凡百のボランティア活動とは違う。IT業界の慢性的な人材不足に対処し、コミュニティ・カレッジの存在価値を刷新。


コミュニティ・カレッジは2年制の公立(例えば州立)短期大学、大学生の半分はここで学び、4年制に比べ授業料が安く(研究重視の大学でないのでコストが安い)、入る難易度も低いので低所得所帯でも大学に進学でき専門知識が身に付く、最近では4年制大学の準備校として4年制大学とのつながりも深くなっているようだ。


アメリカで教育分野の社会起業には、黒人、マイノリティの高校生をカレッジへ送る事業があり、2年間で雇用される実務型の技術を習得しよい仕事につかせるためである。こんなことも2年制大学に人気がある理由である。


日本では短大を大学に改組することが多いが、そんなに大学で学んでどうするんだろうと思う。代わって専門学校がコミュニティ・カレッジの役割を担っているが、短大でも即戦力の技術を教えれば存在感が増すのにと思う。


・マリオット
失業者に無料で180時間の研修とOJT、地域のNPOを支援しその見返りに適性のある求職者を探してマリオットに紹介、訓練後9割がマリオットに就職、採用コストが節約でき定着率も65%と業界平均よりも高くなった


「企業と社会の一体化」を狙ってるかどうか、これが受動的な戦略的かどうかの基準である。大きくなったCSR活動をこの辺りで見直し、戦略性あるものだけ抜き出しそれに投資を集中しようという提案である。


社会の変動に合わせてCSRもまた進化を始めた。

CSRを止める

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「ほとんど意味のないCSRランキングがはびこっている」
「ありがちなのが、戦略とも実際の業務とも関係なく、うわべを装うだけの対応である」

「(CSR報告書は)単に社会への配慮を示すために、ばらばらな活動を紹介する記事を集めた冊子にすぎない」


マイケル・ポーターとマーク・クラマー「競争優位のCSR戦略」(ダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー08年1月号)に出てくる社会貢献活動についての表現である。


これは両氏の直感だが、CSRが陳腐化してしまった理屈も書いてある。


CSRには誰もが疑いを持たない4つの理由があったが、よくよく考えると根拠がない。
「道徳的義務」→道徳的に分析すべき評価基準がない、支援先の選定があいまい
「持続可能性」→あいまいすぎて意味をなさない
「事業継続の資格」→圧力団体を懐柔する手段、場当たり的な自己弁護を繰り返すだけ
「企業の評判」→測定不可能、恣意性がありすぎる


この論文は昨年の12月に載ったが、昨年のハーバード・ビジネス・レビューに掲載された論文の中でベスト論文に選ばれマッキンゼー金賞を受賞した。


CSR活動が時代に合わずに陳腐化し、世代代わりしなくてはいけないという思いは皆にあり、その的を突いたから金賞になったのだろうと思う。


これまでのCSRが企業と社会を対立関係で考え、相互依存関係で考えないから陳腐化してしまった。CSRコンセプトがつくられたのは80年代のことで、もう20年もたっているので刷新されるべきだと聞いても、そうだろうと思う。


CSRは企業防衛的で、一時的な善意や外圧への対応として行動するクセがあったり、周囲への迷惑を減らすレベルでやっているが、そうでなく「自社事業に関連性の高い社会問題だけを選択」「社会に大きなインパクトをもたらす」「指標とすべきは社会への影響」を考慮したものにすれば、時代の変化に合ったものに変る。


「CSRという考え方を止めて、企業と社会の一体化について考え始めるべきなのだ」

「優れた企業がその豊富な経営資源、能力、人材を、利害があり勝手知ったる社会問題に振り向けるならば、いかなる機関、いかなる慈善団体よりも大きなメリットを社会にもたらすことができる」


この論文には新世代のCSRの例として
・トヨタのハイブリッド車、ハイブリッド技術を世界標準にした、
・フランスのクレディ・アグリコールの環境問題への融資、省エネルギー住宅融資、農場のオーガニック認定への融資
・ホールフーズ・マーケット、オーガニックによる天然食品を提供、農家ごとに直接買い上げ(100種類近くある基準で仕入れ)、店舗の電気は全て風力発電、業務用車両はバイオ燃料で走る、バリューチェーンのあらゆる面で社会問題に対処し他社との差別化に成功しプレミアム価格を支えているなど、いろんな例を上げている。


トヨタはハイブリッド車をCSRだとは思っておらず、本業だと思っているが、21世紀のCSRは本業でやる社会変革事業である。


ホールフーズ・マーケットは、テキサスの雑貨商からスタートした食品スーパーであるが、フォーチュン誌の企業ランキングでは上位にきて、アメリカでは評判のよい話題の会社で株価も高い。その理由が理解できなかったが、事業を社会に密着させて事業 = 社会をやってみせたからである。


こんなのがアメリカの企業社会の先端の話題である。


この論文を読み、企業の中から社会起業家が登場して企業と社会を結びつけたり、社会貢献部は社会起業家と密着するように変るんだと思ったのである。


日本の企業には無縁なことにみえるが、タイムラッグでそうなって行くのは確かなことである

オミディア・ネットワーク

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オミディア・ネットワーク はイーベイを創業したオミディア夫妻がつくった非営利法人。(写真が夫妻)

前回、アショカのドレイトンが、起業と社会起業の違いを問われ、98%同じという意外な答えをしたことを取り上げたが、オミディアは98年につくった自分の財団で非営利法人だけを支援していたが、これを改めて営利、非営利を問わずにソーシャルインパクトの大きい事業を支援することにして04年に改組した。


イーベイが世界最大のネットオークションサイトに成長して、営利企業でも社会に巨大な影響を与え世界をよりよくする力があったことに改めて気づき、支援する対象を非営利に限定せずに営利を付け加えたのが面白い。


また財団をネットワークに変えたのも今流のことで、財団、センターはもう過去のもの、ネットワーク、イニシアティブは今日のものである。住民、NPO、自治体、企業を結びつける意図があるからこうなる。


イーベイを創業したもう一人の創業者のスコールはスコール財団で社会起業家を支援する事業をやっており、タイム誌で時の人に選ばれるぐらいの有名になったが、オミディアも巨大な個人財産を社会を変えることに投資する。


オミディア夫妻が考えている事業とは、人間が本来持っている力を解放するもので、貧困だったらマイクロファイナンスで事業を起こし、慢性病ならそれを治して健康を取り戻すようなもので、対象は広い。


その一弾として05年にタフツ大学に1億ドルを寄付し、オミディア-タフツ・マイクロファイナンス・ファンドをつくり、マイクロファイナンス・セクターの事業を加速するために投資する。


オミディアはタフツ大学のコンピュータ・サイエン学科を卒業し、妻のパムはタフツ大学生物学科卒業、カリフォルニア大学分子遺伝子学で修士、こんな縁でタフツ大学につくった。


オミディアのやりたいのはベンチャー・キャピタルであるが、投資先を社会を変える投資まで広げたのは奥さんのパムの影響が大きかったようである。


オミディアにとっても起業と社会起業の境目はなく、世界を変える、社会を変える事業ならどちらでもいい。


企業が社会寄りに進み、非営利法人が事業を加速する、こんな流れの先で両者の違いはなくなってくる、アメリカではこんな雰囲気が出てきているのだろうと思う。




アショカを創業したウィリアム・ドレイトンは両者の違いを問われ「98%は同じ、ともにビジョンを持ち、実行に移す最善の方法を求める点で同じ。起業家にはすべてのことにオープンな精神が必要で、目前の問題に目を大きく開けて見る、そこにシャンスがあるからです」と答えた。


アショカは社会起業家支援の非営利法人だが、80年代の初めからそれをやっており、ドレイトンは「社会起業家の父」と崇められている人である。


ドレイトンはこの11月に初来日して1日だけ滞在したようだが、そのときにダイヤモンド・ハーバードビジネス・レビュー編集部がインタビューを行った。(インタビューは1月号に出ている)


違いについて問われると、起業家はビジネス市場の支配者を望むが、社会起業家はその予備軍であるチェンジメーカーの雇用者として大きくなることだと答えてるが、ここはよく解らない。


98%も同じなので違いなんて考えたこともないのが本心だろう。


私は両者は挑戦する分野が違い、経済価値と社会価値のブレンドされた価値をつくるが、社会起業家の方が社会価値のブレンド割合が半分以上もあると考えているので、98%も同じだと言われると意外な感じがする。


両者はほとんど同じものという認識はアメリカにはありそうなことで、シリコンバレーの起業家を見ていると、そういう認識があってもなるほどという感じはする。


アメリカの社会起業家を理解するのに心得ておいたほうがいい知識である。

今朝、朝食を食べながらボゥーとNHKニュースを見てましたら、突然、東京を訪問しているジョン・ウッドのインタビュー画面が出てきて驚きました。


ジョン・ウッドは、マイクロソフトのアジア担当のマーケティング・ディレクターを最後に退職し、アジア中に小学校をつくり、英語本の図書館や英語教室をつくる非営利事業 Room to Read を創設した社会起業家で、アメリカでは高名な人です。


画面には、パーティで日本のビジネスマンが競ってジョン・ウッドと名刺交換している様子や、アナウンサーとのインタビューで「寄付金をもらうには、事業の目的だけでなく実績を具体的に言わないとだめだ」と言ってました。


ジョン・ウッドは40才代の前半でなかなかイケメン(彼の本では、デイトしてる間がなかったのでまだ独身だと書いている)、明るい表情で人当たりのよさそうな感じでした。


放送では、マイクロソフトの役員を辞めて社会起業家になったと紹介し、この転進に話題性があると取り上げたのか、アメリカの新しい有名人でマイクロソフトのビル・ゲイツ、アップルのスティーブ・ジョブズの次ぎの世代の起業家を紹介するためなのか、日本でも社会起業家コンセプトが広がってきたので、そのトレンドに乗って番組にしたのかわかりませんが、NHKの朝7時代のニュースに登場するなんて社会起業家コンセプトも躍進したものだ、いいぞと思ったのです。


日本でもアジアの貧困地域に小学校をつくるプロジェクトは流行ってますが、せいぜい1校から3校ぐらいのことで、ジョン・ウッドの数百分の一にすぎません。


彼のすばらしさは迅速にしかも大規模に進める手法にあり、これこそNHKが日本に使えるべき核心ですが、それがなかったのはいけません。


彼の手法は「マイクロソフトでは出会えなかった天職」(ランダムハウス講談社、彼の自伝)に詳しくありますが、アジア旅行で見つけた社会問題を彼なりに考えて(現場主義)、解決策を具体的にデザインし(前代未聞のビジネスモデルを直感し、アイディアの骨格をデザイン)、それをインターネットで発信して同志を集める(自分の考えを世に問うて賛同者とのリンクをつくる)です。


小さなアイディアやデザインをインターネットで何百倍、何千倍に拡大するのはインターネットだからこそできることですが、彼はそのツボを習得してます。


本の原題は「世界を変えるためにマイクロソフトを去る:世界の子どもを教育するための起業家的な冒険旅行」ですが、ここには世界を変える精神があります。日本語の題名は原題を離れてつけたもので、あのマイクロソフトの役員を辞めるなんてという感じですが、世界を変える思いは消えている。


NHKもそうですが日本の受け取り方はこうです。


日本でも「世界を変える」「社会を変える」という思いを、知恵を使い、アイディアを出し、ビジネスモデルをデザインし、インターネットを使いやってもいいときだと思いますが、NHKの皆様 !、そんなことを伝えてください。