金沢市立「金沢21世紀美術館」の初代館長だった蓑豊氏が書いた「超・美術館革命」(角川oneテーマ21、07/5刊)にはこんな話が出てきます。


・美術館の年間入場者数は5万人が平均のところ、初年度157万人、40%が金沢、60%が県外
・9時から夜10時まで開館
・建設に200億円を投資、初年度の収入は282億円、毎年100億円近くを産む
・館長は経営者だ
・美術館はサービス業だ、エンターテイメントの要素が不可欠
・現在は経済が文化をささえるのでなく、文化が経済をささえ活気づかせる
・展覧会は商品、学芸員はそのセールスマン
・美術館近隣の路線価格が上がった
・日本には公立美術館が350あるが、視察にきて「うちでは無理です」と帰る
・美術館はぶらりと立ち寄るところ、ぼーっとたたずみ何かを想う場所


蓑さんはアメリカで30年近く住み美術館のマネジャーをやった人で起業家精神が旺盛な人ですが、その人が市立美術館を経営するとこんな具合になります。


蓑さんを見ていると、起業家精神は非営利法人で一層輝くことを思います。社会性の強い起業家は、普通の起業家よりも一層社会にインパクトを与えることができることを証明しているいい事例です。


こんなベストプラクティスがあるんですから、起業家精神が旺盛な人を探し、ハコモノの経営を任せれば赤字経営問題は大方解決するんです。


これが本を読んだ感想でした。

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テレビを見ていたらアクアマリン福島 で人工なぎさを水族館の空き地につくる話を放映してました。


プロジェクトの責任者らしき人が出てきて、子供が遊べる人工なぎさをつくるんだと熱心に語り、館員総出でオープンに間に合わせるためにカニ、貝などを採取する場面があったり、工事が予定通りに進まずイライラしてる様子が映し出されてました。


07/4オープンの蛇の目ビーチで、野外体験型水族館、干潟、磯、浜があり子供がはだしで入れる4500㎡の広さがあります。


この水族館は見世物小屋→教育体験型、環境型でショーがない水族館を目ざし2000/7オープン、福島県いわき市の小名浜浜港にある財団法人ふくしま海洋科学館で、あの逮捕された佐藤栄佐久元知事が理事長をやっていた財団です。


典型的な利権にまみれたハコモノで生まれたんでしょうが、無駄な投資になるはずだった施設が一人の起業家タイプのマネジャーの出現により人が集まるソフトウェアが開発されて、施設が蘇ろうとしている様子がテレビに映ってました。


そういえば、旭川市営の旭山動物園も、起業家タイプの職員が出てきて行動展示という新しい方法で300万人以上の顧客を集めました。


金沢21世紀美術館も県庁と小学校の跡地のために90年代に計画したハコモノでしたが、04.10に開館し、初代館長がアメリカで美術館経営した人だったので1年目に150万人以上集まる美術館になりました。


以上、三つの例からわかることは、無駄なハコモノに起業家が入ると蘇ることです。非営利事業では起業家の力は絶大なモノになるんです。


非営利事業には壁があって起業家がなかなか入れない、入っても足を引っ張られてじゃまが多く、一代限りになりやすい(もうたくさんだと元に戻ってしまう)など、すんなりと行きませんが、これしか方法がないので非営利事業を起業家が経営する時代になるのは確かな方向だと思います。

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社会起業家は、社会問題の新しい解決策を見つけるので創造的な仕事である。創造的な活動というと、ITやネットビジネス、アート、旧来の産業での新しいビジネスモデルの開発などを想定するが、社会起業も同じような創造的な活動である。


そこで創造性についてだが、創造力指数というのがある。こえはメイソン大のフロリダ教授が作り出したコンセプトで、著書「クリエイティブクラス」でこの指数を提案してるが、1位はスェーデン、2位日本、3位フィンランド、4位アメリカ、5位スイス、ドイツが10位、イギリスが15位、フランスが17位、意外なことに、日本のクリエイト力を世界のトップクラスと評価した。


クリエイティブ指数が高いのは北欧のような先進国の小国で大国では日本とアメリカが抜きん出ており、経済成長が見込まれているロシア、中国、インド、ブラジルは恐れるに足りずだという。こうした大国はクリエイティブ指数の高い国が捨てた産業で成長するからである。


指数の評価の基準は3つのTで、1、タレント、2,テクノロジー、3、トレランス、教授は類似の評価に比べトレランスを入れたのが独自性だと本で自慢している。


これ寛容精神だがゲイ文化や外国人を受け入れる寛容さがあるかないかで、創造力を発揮するに寛容な社会基盤が必要だと主張してる。


本にはこれ以上詳しく書かれてないのでわからないが、遊びの精神、国家が特定の理念を強制しない、自由な精神、個人の脳を圧迫しないなども寛容の精神と理解した。


クリエイティブと寛容との間には相関関係がありそうなのはわかる。


こう考えると、日本では寛容の精神がまだ不十分で、いろんなところで反動的な古いことを押し付ける傾向が出てきており、最近がそうだがいけないことである。


社会起業では英米がモデルづくりでは先に行ってるが、日本だってここで創造性が発揮されると思う。

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蓑豊「超・美術館革命」(角川oneテーマ21、07年5月刊)を読んでたら、アメリカで美術館や博物館に寄付が多い理由が書かれてました。


アメリカでは10代のときボランティアを最低1年間やらないといい大学に入れない、その履歴がよい成績を取るのと同じくらいに大切です。


そこで美術館や博物館でボランティアになるわけですが、社会に出て金銭的な余裕ができると元働いたところに寄付をする、「美術館で楽しい思いをした」からです。節税になることを寄付の理由あげますが、そんなことでなく寄付の根底に楽しい思い出があることを蓑氏は書いてます。


目から鱗、寄付をするなんてことは合理的な理由でやるのでなく感覚的なものだと思っていたので納得です。


ふるさと納税も同じで、ふるさとに楽しい思い出があるからやるのでしょう。それなら10代に体験した楽しい思い出のある公共施設へ納税できるようにしたらいいんじゃないの、自治体は楽しい思い出になる体験企画を考えればいいんだ、そうすればふるさと納税のマーケティング作戦に勝てる、ふるさと納税の本質を見た思いがしました。


蓑氏は金沢の21世紀美術館(金沢市営美術館で04年開館)の初代館長になり、美術館経営のロールモデルをつくった。慶応の美術・美術史を卒業後中国陶磁器商で丁稚就業を3年やり、アメリカに渡って美術館の学芸員になったが、中国人の東洋部長からあなたは学芸員にとどまる人でなく美術館を経営する器だとすすめられ、ハーバード大で美術史の博士号を取ったあとアメリカの美術館の東洋部長などをやった人で、アメリカの事情に詳しい。


この本を読むと、蓑氏は起業家精神が旺盛な人で代表的な社会起業家だと思ったのです。


これからの美術館の館長はこれくらいのことができないと落第で、蓑氏がその基準をつくった点で画期的なこと、こういう人材は官僚と大学教授にはいないが、探せばとこかにいる、知事、市長はこれを探すのが仕事。

シティは10年間で500億ドル、バンク・オブ・アメリカも200億ドルを環境へ投融資する。


対象は代替エネルギー開発、太陽光、風力、水力。。。などで出資、融資、債券引き受け、個人顧客には太陽光発電システムローンを提供する。


これまで支流でやっていた事業を本流に昇格して大掛かりに取りくむのである。CSR活動としてやるのでなく本業としてやるのが斬新である。


シティの場合10年で6兆円なので年6000億円、世界を相手と考えると少ない感じもするが、始まりとしてはまあまあの額である。


このブログの5月11日号で、ハーバード・ビジネスレビュー掲載論文のうち、昨年1位に評価されたのはポーターとクラマーの「戦略と社会」だったことを書いたが、この論文でフランスのクレティ・アグリコール(大手金融機関)が融資を環境に特化した戦略を新しく優れたものだと書いているが、同じような試みがアメリカの大手銀行でも始まる。


金融機関はこの20年買収資金やファンドに運用資金を出しマネー経済に火をつけてきたが、それが一転、社会性の強い実態経済へ事業を広げるのはいいことで歓迎である。


日本の金融機関も追随するはずである。現在は風力発電をつくるのに苦労して投資ファンドを集めてきたが、こんな苦労もなくなる。


問題は用意された資金規模の比べて社会性の強い事業開発が足りないことにある。現在は先進国の金融機関は金余りの状態なので、よいとなればいくらでも投融資規模を拡大できるので、これで社会性の強い事業開発が猛烈な勢いで進む。


昔金融機関が重化学工業をつくったり(アメリカの1910年から20年代ごろの話)、大規模なサービス業をつくったりしたが(1950年から60年代)、それと同じで今後20年ぐらいは社会性の強い事業の開発を金融機関が主導するのだろうと思う。


社会起業にとって待ち望んだ変化である。社会起業へ金融機関のいろんな支援が行われるようになるのは助かる。社会起業が画期的に進むようになると思う。

「ふるさと納税」が話題だが、これを聞いたとき直感的に、これは社会起業を促進する、税金が減り代わりに寄付金が増える時代が始まるんだと思った。


こうしたことは80年代のアメリカで起こった。私が企業の社会貢献を現地で調べていたとき、若いジャーナリストから「アメリカには納税するか、寄付をするかの選択肢がある、大方は寄付を選択するようになってきているが、いいだろう」と自慢された。


これはレーガン元大統領が所得税の大幅減税を行い(硬直し停滞していた経済を立て直すには減税が有効という単純な経済理論からやった)、代わりに寄付金税制を拡大し寄付控除の額を大幅に上げた。減税した分寄付を増やせという運動をやったのだが、おかげで寄付が増え、80年代には非営利法人活動が倍増するほどの非営利事業ブームが起こった。


アメリカには税金と寄付金の合計額は一定で、片方が減るともう一方が増えるという説を唱える学者がいる。減税分は企業なら投資になったり、個人なら消費に回るが、寄付金で節税できるなら寄付もしようとなり、寄付金が増える傾向があるのはありそうなことだ。


日本では官が信頼をなくしているときなので、納税よりも寄付金の方が気持ちよく出せるはず、こんな国民の心理をうまく活用するといい。


また日本の寄付金の所得弾性値(所得が増えると寄付が増える割合)はアメリカよりも高いという学者の研究もある。日本の寄付金は、寄付金を変化させるモノに敏感なので税金と逆相関関係は一層ありそうなことである。


こんなことで寄付金化の始まりを予感したのである。こうなると社会起業にとってもいい話である。


総務省が唱えているふるさと納税は、地方税(個人住民税、10% = 県税4% + 市町村税6%)の10%をふるさとに納税できるという内容である(個人住民税は04年度で7,7兆円、10%は7700億円、47都道府県で割ると一県約160億円、自治体の借金の額に比べるとたいした額にはならない)。


中川幹事長は、企業と個人が自治体へ寄付すると全額を税額控除できるようにする、そうすれば所得控除でなく効果絶大、納税者が税の配分を決める発想の一大転換が必要と講演で提案したことが新聞に出ていたが、こちらの方が大胆な提案で、安部政権はこんなことを考え始めている。


いい方向だ。


ハンガリーには税金の1%を寄付金に出来る制度があり、日本のNPO活動をやっていた若い人が日本でも欲しい制度だといっていたが、ふるさと納税の先にこんなことが起こる時代の到来を予感した。


今度のふるさと納税は減税ではないので、税金マイナス、寄付金プラスの話ではないが、進んで行くトレンドはそうじゃないのか。そうなると、受ける方の自治体では獲得のマーケティング作戦が始まり、これが面白くなりそうである。使途を明確にするとか、使途の投資効果を訴えるとか、カネを獲得するための叡智が自治体の側で出てくるなんて、これも大変化である。


ついでに指定できる納税先は県よりも市町村へ、市町村よりも具体的な○○市民病院、△△高校、××市民ホール、図書館、美術館と具体的な現場へ向かえばいいのにと思う。

5月4日は緑の日なので近くの国営昭和記念公園(立川)に行った。この日は季節がいいせいか、入園料400円が記念日なのでタダのせいか、たくさんの人が訪れていた。


日本人も公園で休日をすごす習慣が定着してきたことを実感した。


歩きながら、この間NHKハイビジョンテレビで放送されていた「セントラクパーク管理財団」のことを考えていた。


60年代にニューヨーク市が財政赤字になり、公園の管理ができずに荒れ果て犯罪の温床になったとき、ひとりの女性が「シティズンズ・イニシアティブ」方式を提案し、市民が参加する再生プランを雑誌に発表したが、「子供のときに遊んだ公園だ」「子供と遊んだ楽しい思い出がある」「プロポーズした場所だ」などの投書がおしかけ、これがきっかけで市民による公園の再建が始まった。


現在はニューヨーク市から離れてこの財団が運営している。労働奉仕は100人/日、救急医療隊150人もおり、3000回出動/年というぐあいである(本格的な自転車レースをやるので転んでけがをする)。


日比谷公園にはベンチにネームプレートを貼っているが(有料)、この方式もセントラルパークで始まったらしく2000人がネームプレートを貼っている。文字はなんでもよく「○○さん、愛してる」もあった。


シティズン・イニシアティブになって公園は市民のものになり、利用価値があがった感じである。


昭和記念公園でもボランティア活動が活発でその活動状況はこのサイトにある。でも下請けの仕事で自主性はなさそうである。
http://www.showakinenpark.go.jp/volunteer/index.htm


昭和記念公園にも長いサイクリングロードがあるので本格的な自転車レースをやれば盛り上がると思うのに、国営の経営で堅く面白みがない。国営をやめ市民の経営に任せたらいいのに。

㈱ボーネルンド

テーマ:

デンマークの知育家具を売っている会社で、渋谷に本社があり売上高は35億円。
http://www.bornelund.co.jp/


CAC・社会起業家研究ネットワークの服部篤子さんが、社会起業コンセプトがまだなかったときからそれらしい企業はあったはずだ、その話を聞いてみようと企画した会合が5月10日の夜に明治大学であり、しょっぱながこの会社の中西弘子社長の話でした。


この知育家具、ショッピングセンターの屋内遊び場などで見かけたことがありますが、ボーネルンドについてはよく知りませんでした。


1981年設立、ご主人が商社の欧州駐在員のときボーネルンドを知り、日本にはないコンセプトで、それが新鮮で輸入会社を設立したようですが、30年たち日本でもやっと「知育」といい始め、時代に合ってきました。


北欧には知育玩具の長い歴史があり研究開発の厚い蓄積がありますが、これが世界的な競争力の源泉らしい。そういえばレゴのロゴブロックもデンマークのものです。


知育玩具なので社会性が濃厚で社会起業だという感じがしました。


日本や欧州のように歴史の長い国では古くからある企業で無意識ながら社会性の濃厚な企業があります。この会合は2回目、3回目。。。と古い社会起業の実例研究が続くので関心のあるむきはどうぞ。



ところで私の不思議はボーネルンドの知育玩具に使われている色でした。鮮やかな赤・黄金色の黄・濃くくすんだ青、これは絵具の三元色で、三元色を使ってるせいか、どぎつい感じがして目がチカチカします。子供はこういう色の中にいると脳が発達するのかしら。


家具のイケアについても同様のことを感じます。スェーデンカラーというがあるらしくブルーとイエローですが、それがイケアの色です。イケアのロゴマークはこの黄色が使われており、ボーネルンドのロゴもこれです。スェーデンの国旗(青地に黄色の十字)もこれです。









デンマークの国旗は赤地に白い十字、この赤がボーネルンドの赤です。


どれも強烈な原色で白をまぜた中間色になれた私には違和感を感じますが、日本だって奈良時代や平安時代には強烈な赤や黄色を使っていたんですからなれなんでしょう。


ボーネルンドの話を聞きながら、ボーネルンドの色は北欧の個性なんだ、それが日本で自己主張してると思ったのです。日本文化にはない個性色なので新鮮に映り若いお母さんに好まれてるのでは

前回書いたハーバード・ビジネス・レビュー12月号「戦略と社会」(マイケル・ポーターとマーク・クラマー著)が、昨年のハーバード・ビジネス・レビューのベストの論文「マッキンゼー賞金賞」に選ばれましたが、これを知り、へぇ、こんな当たり前のことが書いてあるものが、と意外な感じがしました。


この論文はCSRを行政や社会からの圧力でやるのでなく、企業戦略としてやれというすすめです。受身のCSRから企業が率先して社会を導くような攻撃的なCSRへの転換を提唱してます。


企業価値を増すと同時に社会価値も増すようなバリュー・チェーンをつくれです。こうなれば出来る若い社員はブツブツ言うのをやめ嬉々と働くんじゃないか。


トヨタのプリウスはハイブリッドカーで世界標準をつくりました。社会を巻き込み社会価値をも創造すれば世界標準がつくれるビジネスモデルができるのです。


マイクロソフトがアメリカのコミュニティカレッジ(公立大学)のITカリキュラムを、社会貢献活動で最新のものに刷新したのは、不足してる中級ソフトウェアエンジニアを確保できるからです。


GEが工場近くの公立校のレベルを引き上げる活動をやったのも良質な労働力を確保するためでしょう。


ネスレは、インドの原料を供給してもらっている農家の医療と教育を支援したのは安定供給のためです。アメリカの鉱山会社がアフリカでエイズ治療を支援するのは鉱山労働者を確保するためです。


アメリカのCSRの先端はこのように事業戦略と密接に結びつくようになってきている。


こんな論文が金賞に選ばれた。その理由をいろいろ考えましたが、ビジネススクールの研究が企業だけを狭く緻密に研究するのでなく、反対に広く社会との相関関係から考え直してみよう、そのほうが急がば回れ、社会から企業にお返しがある、という当たり前のことに気づき、方向転換を始めた証拠だと思いました。


また現在の社会問題が行政や企業だけで解決できないので、企業がヘッドクオーターになって旗を振り、社外のいろんなところと連動して解決しようという気持ちに転じたこともあるでしょう。いろんな組織を統合させる技法は大企業の得意なところですから。


この金賞からビジネススクールの大転換を感じました。大企業が社会起業に乗り出してきたのも新しいことでいい兆候です。

遅れて日本もそうなるね。

クリエイティブクラス

テーマ:

ちょっと長いブログになりますが、社会起業家の仕事はクリエイティブなものだという話です。


表題はビジネスで創造的な仕事をする人たちのことです。アメリカでそういう人たちが増えるにしたがって彼らの特性を研究することが行われるようになってますが、その一つがダイヤモンド・ハーバード・ビジネスレビュー06年12号の巻頭で、リチャード・フロリダジョージ・メイソン大学教授著「クリエイティブクラスの世紀」(ダイヤモンド刊)を取り上げ、フロリダ教授に編集部がインタビューした記事「クリエイティブ資本主義」があります。


私は長く産業調査をやってきたので、ソフト経済、知識経済、クリエイティブ産業立国などのことに関心があり(そんな本も書いたことがあります)、このインタビューも本屋で立ち読みしました。


フロリダ教授の主張はこんな風なものでした。

・創造性は組織にあるのでなく人にあり、属人的な知、組織はそれを活用するだけ(創造的な人間がいなければ会社も創造的にはなれないという当たり前の話)


・ゼミの学生でおとなしい女学生がいたが、彼女はゼミの発言では創造力豊かの感じはなかったが、話してみるとラジオでディスクジョキーをやっており、音楽の演奏活動もやっている、こういう人材がクリエイティブな人材なのだ(一見しただけではわからない、その人の全人格をみること)


・クリエイティブな人材は大都市に住む、こうした人を引き付けられる都市は世界で20ぐらい、日本では東京と大阪(湖の水辺で仕事をしない、常識の反対)、都市に住むのはクリエイティブな人材の集積を使い仕事の生産性を上げるため、相互に刺激し合う環境が大事


・アメリカの大都市を去り世界の都市へ向かう傾向がみられる、流動する労働力、クリエイティブ産業でアメリカの競争力は衰えるかもしれない(欧州とアジアが成長)


・退職者とワーキングマザーはクリエイティブな人材としてこれから有望なかたまりである、企業で働いていたので企業の不文律を知り、経験の蓄積で暗黙知も持っているから、これを活用してこなかった日本は眠っているクリエイティブ人材のストックがあるので有望


・10人ぐらいのコミュニティ(仲間)をつくる傾向がある、相互扶助精神の体現


・「クリエイティブ・インデックス」(フロリダ教授が作成)では、日本はスェーデンに次ぎ2位、スェーデンは昔は保守的な集団主義の働き方をしてきたが、現在は個の創造性を重視した経済に転換した、日本でも同じようなことが起こっている


立ち読みですから厳密なものではありませんが、インタビューのコンテンツはこんなもので、フロリダ教授の書いた本と同じです。


クリエイティブな人材とは
・左右の脳で思考できる人
・専門性があり、しかも全体を俯瞰できる才能の持ち主
・論理的であり、しかも美的で遊びの感性も持っている人


左脳・専門性・論理力をトレーニングされて身に付けたうえ(受験勉強で鍛えられた人です)、さらに文学・音楽・美術をやる人なんですが、後者については普通趣味と考えられており、創造性にカウントしませんが、フロリダ教授はこれが大切と面白いことをいいます。


大昔の貴族や官僚、教養人が備えていた資質で、言われるとそうかなと思います。


実は、私は社会起業家もクリエイティブ・クラスだと思ってます。クリエイティブ資本主義とは社会起業家もまた中心になる経済のことです。フロリダ教授はこんなことに言及してませんが、そうなのです。


ハーバード・ビジネス・レビュー06/12月号に「Strategy & Sociaty」という論文があります。マイケル・ポーターとマーク・クラマーの共著ですが、企業のCSRを抜本的に変えよ、本業と離れてやるのでなく合体してやれ、企業活動は経済価値をつくるだけでなく、社会価値もつくるのだ、経済と社会のバリュー・チェーンをつくれ、それをStrategicCSR、従来のものをResposiveCSR(行政や社会から押し付けられたのでそれにこたえるためにやるぐらいの意味)と呼んでます。


あげてる例はトヨタのハイブリッドカー「プリウス」で、ハイブリッドの世界標準をつくったのが経済価値で、排ガス問題を解決するのが社会価値です。(TOTOのウォシュレットもそうなのかな)


また、GEがアメリカにある工場の近くの高校のレベルを上げるために99年までの10年間に10校を対象にして、5年間で一校当たり25万ドル~100万ドルを投入して著しい成果を上げた例も戦略的なCSRです。GEが手にした経済価値は良質な人材確保です。


さらに、マイクロソフトはアメリカにあるコミュニティスクール(公立大学、生徒数1160万人)を対象にして、IT教育のカリキュラムを刷新し(標準化されてないうえに時代遅れなものになっていた)、生徒のIT力をあげる目的で5年で5000万ドル投じた話もでてきます。


マイクロソフトは、カネ、製品、人の三種を提供しましたが、こうして全米で45万人も不足しているソフトエンジニアを育成したのです。


フランスのクレディ・アグリコールは、環境、エネルギー、オーガニックに特化した融資プログラムをつくり、そうした産業に投融資を増やしましたが、これも戦略的なCSRです。


企業は自分の事業に近いところで社会問題を考え、自分の価値と社会の価値をともに増やせるところを探し、双方の価値を作り出す連鎖を設計し実行する、これがいいんだというのです。


戦略的CSR、これはクリエイティブな仕事でこれをやる人はクリエイティブクラスです。自分の事業と社会の双方の価値の連鎖をつくれといわれても簡単にできることではありません。やれと命令されても連鎖を発見し、ビジネスプランにまとめることに成功する確率は小さいと思います。だからクリエイティブな仕事なのです。


上記の例で社外の社会起業家の力を使ったのかどうかわかりませんが、成功するには連動した方がとく、また社内の社会起業家の活躍もあったはずです。


クリエイティブ経済の一端を社会起業家がになうといいたいのですが、社会起業家の役割はそのくらいの広がりを持っていると思ってます。