革命カフェ

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昨夜、フローレンスの駒崎さんが主催した社会起業家の集まり「革命カフェ」(駒崎さんが命名しましたが、ソーシャル・イノベーションを起こしたい志の高い人が集まったカフェぐらいの意味)が恵比寿のレストランであり顔を出しました。


駒崎さんの知り合いが集まりましたが人徳のせいか、入りきれないぐらいの人が集まり、大盛況、移動するのも大変なぐらいで、疲れてしまったので途中で帰りましたが、そこで感心した話を聞きました。


慶応の三田で学んでいる学生が、藤沢の総合政策学部の講義を聞きに行っている、ソーシャル・イノベーションの講義を受講したくとも三田でやってないので、わざわざ藤沢まで行っているというのです。「あんな遠いところまでよく行くね」といったら、「学びたいのでそのくらいはやりますよ」です。


また、最近は、就職でコンサルタント会社と銀行に人気があるが、そうするのはそこで経営の基礎技術を身につけて、ゆくゆくは非営利法人の経営をやってみたい学生が増えてるんですとも言ってました。


そういえば日本は官製の公益法人が異常に多い国で、その点アメリカの研究者もあきれてしまってますが、それが親官庁離れをして独立経営をやる時代になります。それが08年から始まる公益法人改革ですが、10年もすれば公益法人が企業と同様に経営するのは当たり前になります。


そんなトレンドを考えると、非営利法人の経営需要はこれから成長して行きます。学生はそんなことを直感してるのでしょう。日本社会でも新しいことが生まれ始めたことが実感できる会合でした。

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前回書いた「世界を変える人たち」の10章に、80年にユニセフの事務局長になったジェームズ・グランドの話が出てくる。


予防接種で子供の死亡を減らすことを始めた人で、型破りな自然児、ビジョンがあり意志の強い人、年功でなく実力で人材登用した人、官僚主義を断ち切った人。。。などの評判があり、ユニセフを改革した。


ハーバード大学で法律を学びアメリカの途上国開発の仕事を続けてきたまばゆいばかりの経歴の人で、子供の生存と発育革命を起こす事業を最初にやった社会起業家だったが、95年にガンで死んだあとユニセフの事業は後退したと批判されたそうだ。


ところがマイクロソフトのビルゲイツが乗り出し、ゲイツ財団が引き継いだ。ゲイツ財団の事業の源流がグラントにあったとは初耳だが、ユニセフの革新的な事業が、ユニセフで再び起こったのでなく、成功した起業家にひきつがれたのがなるほどそうかである。


井上英之さんは、この本のあとがきの解説で、先進国でなぜ社会起業家が登場したのかの理由を書いているが、「どうせ働くなら、何かのために働きたい」と問い、どうしたら「生き方」と「働き方」を重ね合わせることができるのか、これまでの世代からみると、贅沢な悩みですが、社会起業家に人々の関心が向くのは、(社会が)新しい段階に進もうとしてるからだと書いている。


これを読んで思い出したのがケインズの予言である。1930年代に大恐慌を研究し今は悲惨な状況だが、テクノロジーの進歩で経済成長が起こり、イギリスなどの工業国では20世紀の末には貧困がなくなり、労働時間が短くなると予言したが、予言は当たった。反面生活のためだけに働く動機が弱まり、余った時間に何をやるのだろうかと問題を提起したが、この答えはケインズにもわからなかった。


井上さんが新しい段階といったのがこれで、社会起業家になるがケインズへの回答である

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世界を変える人たち

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デービット・ボーンステイン著、井上英之監訳、有賀優子訳「世界を変える人たち」(ダイヤモンド社)が出版されたので読んでみました。


この本については、このブログで05年9月10日以降ボーンステインの雑誌インタビューをもとに6回書きその思想を伝えましたが、その完訳です。


2004年に出た本で、もっと早く翻訳が出てもよかったんですが、出版社探しや誰が訳すのかなどいろいろあったみたいで、遅れてしまったみたいです。 でも、日本では社会起業家について、最近、新聞が書いたりテレビに登場したりと、やっと熟度が高まり火がついた感じで、今出版されたのはグッドタイミングで、商売としては遅れて正解です。


この本には、アショカを創設したビル・ドレイトンやアショカ・フェロー、アメリカ2人、ブラジル2人、インド2人、ハンガリー1人、南アフリカ1人などが登場し、アショカを紹介する本になってます。 みな80年代から90年代の初めに事業を始めた人たちで、社会起業家第一陣の人たちで、見慣れないことをやったために、社会のいろんなところから抵抗を受けて苦労した人たちです。 現在では、この何倍もの洗練されたアイディアとビジネスプランが生まれ、社会起業がますます進化してることを実感しますが、初期この闘う姿がいいんです。


本に出てくるフレーズを目についたまま抜書きするとこんな調子で、社会起業家の本質をついた話がたくさん書いてあります。

・自分の思い描く社会を実現することにより、深い満足を得る

・公共政策の実現に、市場に頼るのはいかがなものかと反対された

・それは政府の仕事だ

・社会起業家は敵を生む覚悟がいる(敵は古いやり方を守る人です)

・この仕事はとても楽しい

・気合を入れて解決策を考える

・同じ志をもった人々とつながりが生まれる

・同じ活動をしたいがどうしたらいいのか

・企業と社会をつなぎ合わせる方法が学べる(マッキンゼーが無償コンサルをやるのは、企業と社会の新しい関係を発見したいためで、慈善ではない)

・目的を果たすまで決して諦めない

・ぼくのアイディアを買ってもらう

・アイディアの伝道師・起業家との違いは、世界最大の靴メーカーを築きたいのか、世界中の子供に予防接種を受けさせたいのかの違いで、社会起業家のほうが強い倫理観に支えられている


登場するケースは、

・リオデジャネイロのスラム街で、感染症になった子供は病院で薬をもらって治癒するが、環境の悪い自宅に帰ると再び病気になってしまう悪循環があり、そこで家庭の衛生状態から改善して子供の病気を減らし、さらに母親(母子家庭が多い)を対象に、ネイルケア、美容、刺繍、裁縫、コンピュタ操作などの職業訓練を行い自立させる


・ブラジルの水田地帯で水不足をなくすために、井戸を掘り、簡易発電機で電気をつくり、水を汲みあげて稲作の生産性を上げる


・アメリカで、勉強のできる高校生は大学からスカウトされるが、中程度の成績の生徒は大学に進む道がわからない、とくに低所得所帯やマイノリティ層がそうで、両親が大学を出てないからで、そこで大学に進むための進学指導と両親の激励・説得、願書の書き方、小論文の書き方を教えて、大学に進学する力のあるがもれた高校生を本来の軌道に戻す


一番目は社会起業家が公衆衛生をやる話、二番目は農業の基盤投資の話で、どちらも日本では公共部門の仕事である、三番目は日本では高校や予備校がやっている仕事で、どれも日本にそのまま応用できるわけではなく、日本の社会起業家とは対象は違う。


しかし、問題解決のアプローチ、周辺を呼び込む力、アイディア・ビジネスプランを社会全体に広める方法などは学ぶことができ、社会起業家がどういう人種なのか理解するのにおすすめです。


次回は、井上さんがあとがきの「解説編」に書いたあることを題材にします。

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教員、特別免許状制度

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グラフは中途採用になった教員の数で、03年から04年にかけて高校(ブルー)と養護学校(ピンク)で増えてます。


学校の先生になるには、教育学部を出て資格をとり、県の教育委員会の採用試験に合格してなれますが、教育委員会から特別に教員だと認定される「特別免許状制度」によって中途採用される道もあります。


どんなキャリアの人がなってるのか調べてみると
・都市銀行の情報部門の管理職→高校の情報担当の先生
・製薬企業の研究者→農業高校の先生
・電気メーカーの予算管理の専門家→商業科の先生
・英語学校の先生→英語の教師
というぐあいです。


何かの専門分野があればいいのですが、そのくらいの専門家なら企業にははいて捨てるほどいるので候補者の分母は大きい。また、自治体では猛烈なリストラが始まるでしょうから、自治体からの転出もおすすめです。


増えているといってもまだ年30人から40人ぐらいですが、教育再生会議が教員の中途採用を増やす答申を出したり、学校では現場崩壊が起こっており、新種の教員を増やして問題を解決したい事情もあるので、これから画期的に増える予感がします。


すでに中途採用になった先生の評判は、専門科目を教えるだけでなく、視野が広く学校がかかえた問題に取り組む傾向があり、特別免許教員はいまどきぴったりで、時代が呼んでいる感じがします。どのくらい増えるのかまだ不明ですが、数万人から10万人ぐらいは増えるのではないかと思います。


現在規制改革会議と教育再生会議のあいだで戦いが始まってます。規制改革会議の言い分は、文科省の権限をあまり大きくするなですが、この主張には理があります。学校が直面している現場崩壊は、文化省の通達一枚で解決できるようなものではありませんので。


企業でも相変わらず不祥事続きですが、全て末端の現場崩壊がその原因です。末端ではわかっていたことですが、怠惰に放置されていたのが現場崩壊です。


こういうたぐいの問題は、現場で改革されないとなくなりません。解決は、現場で問題を解決できる人に入れ替えるです。現在はこんな時代の入り口にいるのではと思います。

98年から99年ごろ、イギリスでつくられたコンセプト「ソーシャル・アントレプレナー」を日本語に訳すとき、どちらにするのか、ずいぶん考えたことがあった。ソーシャル・イノベーション、社会的革新、社会革新、ソーシャル・キャピタル、社会的資本、社会資本。。。みな同じである。


私は、外国生まれのコンセプトを日本語にするとき、「やまと言葉」にするくせがあったので、ちゅうちょなく「社会起業家」にしたのだが、アカデミックの人や英語の達者な人はみな「社会的」といい、「ソーシャル」を形容詞にして使うやり方を主張した。


あぁ、岩波文庫の翻訳を読みすぎた連中だなと思い、やまと言葉では「社会起業家」だと押し通し、本の題名もそうして、メールマガジンでもその言葉をひんぱんに使った。


長く学んだインテリは、「 ~ 的」とやる傾向があり、欧州の哲学書や思想書を翻訳した岩波文庫では「 ~ 的」だらけである。今では「的」にしなくてよかったのだと思っている。


今年の1月に出版された鈴木直「輸入学問の功罪」(ちくま新書)ではこの問題を考えている。鈴木さんは大学でドイツ語を教えてる先生で、マルクス、カント、ヘーゲルの翻訳書はなぜあんなにわかりずらいのかと問い、資本論では「人間的労働」「人間的労働力」とやり、「人間労働」「人間労働力」とやらないのはなぜだろうかというのである。


そうなってるのは、日本の翻訳文化は、正確をきすために辞書にのっとった逐語訳をやり、文意をとった日本語にしなかったからだと断定している。「極端な原文模倣原則」、「一語一語対応原則」、「辞書に書いてある言葉に置き換えるだけの作業」が明治以来の翻訳文化なのである。


おかげで、読者は苦行僧の修業となり、たいていは途中でやめてしまうが私もそうだった。もともと難しいコンテンツの本をこんな翻訳にするので、一層読解不能にしてしまうが、「原文の原意を想像し、日本語での文意に転換する作業」だったらもっとわかりやすい翻訳になっていたらろうにと思う。


最近ではこんな反省からか読みやすい翻訳(外国語からの翻訳だけでなく、日本の古文からの翻訳、漢語からの翻訳などいいものが出るようになった)が出るようになっており、これを読んで初めてわかったと思うことがある。


社会革新、ネット産業、金融業、企業倫理、大企業の経営革新、環境主義。。。と相変わらず輸入学問に頼る時代が続いており、良質な翻訳が出て欲しいと思うのである。


こんなへんな翻訳文化が定着し、輸入学問の参入障壁を高くしてしまったのは、帝大を出た下級武士出身のインテリがこんなわかりずらい翻訳文化にして、市民社会で自分の地位を確保するためだったと、はっきりではないが鈴木さんはなんとはなくそう書いている。


江戸時代には高級武士、農民(地主)、商人のなかには教養が高く、漢学、国学をマスターし、やまと言葉に習熟していた教養人がたくさんいたが、こうした人は明治時代に支配者から外れ、かわって教養のない成り上がりが支配階級になったのだが、言われてみるとなるほどと目から鱗である。


これは翻訳文化だけでなく、今問題になっている官僚文化と同質の問題でもある。こんなのははやく捨ててしまいたい。

医療不安

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今日の朝日新聞に日本医療政策機構がやった調査が出ていたが、「医療にも経済力によって大きな格差が生じていることが浮き彫りになった」と結論づけてるが何か変な調査だ。


調査は1月、全国の20才以上の男女4000人を対象に実施、回答した1318人を低所得層(年間世帯収入300万円未満)、中間層(300万~799万円)、高所得層(800万円以上)に分けて分析した。


将来、医療費を払えない不安を抱える人は、
・高所得層36%
・中間層74%
・低所得層84%


受診を控えた人の割合は、
・高所得層16%
・中間層25%
・低所得層40%、低所得層の26%は医師に勧められた検査や治療などを受けなかった


現在の医療制度に満足している割合は、
・高所得層57%
・中間層31%
・低所得層21%


医療費を払えないとは、自己負担3割分のことなのか、医療保険料のことなのか。将来の不安なら、高所得層は前者で、低所得層は後者と想像できる。受診抑制の反対側で健康を維持するための消費を増やしてることはないのか。高所得層はそうしてる感じがする。医療制度に不満なのは、待ち時間のことなのか、医師の説明不測のことなのか。。。いったい何なのか。


「所得によって医療に対する意識に大きな格差があることがわかった。医療政策を考えるうえで重要な要素になる」と分析しているが、どんな政策がいいというのか。何かしまりのない、ぼんやりした調査である。

家族財団会議

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三井物産戦略研究所の新谷大輔さんからきたメールで、スタンフォード大学ソーシャル・イノベーションセンターの告知が転送されてきました。


新谷さんはソーシャル・イノベーション研究では今売り出し中の研究者です。この間ある会合で会った時、今は教育に関心があると言ってたので、それなら安部さんは教育改革で教員の中途採用をうんとやるので、君、校長か副校長に応募しなさいよ、やりがいのある仕事ですよとすすめたのですが、そんな人材です。


スタンフォードの告知は、ソーシャル・イノベーションについて全米のイベントの告知でしたが、私がおゃと思ったのがファミリー・ファンデーションの会議でした。


Council on Foundations Family Foundation Conference が2月25日からメリーランドのボルティモアで開催されます。ゲストスピーカーが Robert Egger, founder and president of DC Central Kitchen、この人、1月19日のこのブログで紹介しましたが、ホームレス、ニートを料理人に再生する事業をやってる社会起業家です。


家族財団は、法律にそういう分類があるわけではありませんが、企業が作った企業財団、コミュニティが作ったコミュニティ財団と同じで、機能の属性から金持ち一族が作った財団のことで、主に金持ちの家族の行く末を金銭的にめんどうを見る財団です。


この種の財団は日本にはありませんが、アメリカやドイツにはあり、一族のめんどうを見るだけでなく、余剰資金を社会のために提供しています。


10年ぐらい前ですが、日経金融新聞に「日本でもアメリカの家族財団のようなものを創設すべき」というコラムを書き、創業型の金持ちが出てきてるが相続税で取るのでなく、これでは政治家や官僚の乱費が起こります、家族財団にして金の使い方を一族に任せたらどうかと主張したところ、翌日日本に進出しているアメリカの投資銀行の数行から電話があり、主張に賛成と反応があったので意を強くしたことがありました。投資銀行は顧客にして運用を狙ってたのでしょう。


アメリカで家族財団がこんな会議をやってるなんて知りませんでした。家族財団は最近では社会起業にずいぶん助成するようになってますが、そんな最近の経験を交換する会合なのでしょう。社会起業を応援する勢力が増えてきてるのです。

村上さんは、昨年夏に経営破たんした夕張市立総合病院を指定管理者制度によって引き受けるためにこの1月に市立病院の医師になりました。公設民営の病院長になるんですが、夕張市に乗り込んだ最も社会起業家らしい人材です。


村上さんは北海道出身で、北海道瀬棚町立診療所で老人医療を大幅に減らした実績のある人で北海道では有名人です。ネットで検索すると地元のテレビや新聞に彼の活躍談が出てきます。


頼棚町での挑戦は予防医療で、医師、看護師、保健師、薬剤師などがグループとなって老人医療に取り組んだ話ですが、これは昨年NHK教育テレビ(?)で放映され見たことがあります。地域医療改革、老人医療改革では旗手としてマスコミでは注目の人材だったのです。


私が書いた「社会起業家」(PHP新書)にイギリスの名門マイルドメイ病院を再建したヘレンの話があり、彼女はイギリスを代表する社会起業家で、シンクタンク・デモスの報告書にはヘレンのことを「イギリスの誇り」と書いてありますが、村上さんの登場はこれに大変似てます。


村上さんの再建策はこうです。
市立総合病院は170床ですが、医療法人「夕張希望の杜(もり)」を新たに設立し、19床(診療所)と40床(介護老人保健施設)を公設民営で引き受けます。


再建を指導する総務省には、20床以上の病院をすすめる意見もあるようです。診療所では地方交付税交付金はほとんど入らないのに、病院なら年3億円規模の交付金を5年間もらえるからです。


これに対し、村上さんは、「それでは、さらに税金を無駄遣いするということです。赤字でも交付金が入るからいいと営業努力をしてこなかった。それが破たんの原因なんだから、一度断ち切るべきです。診療所は訪問診療などの診療報酬も高いし、ぼくは東京から経営のプロも招く。採算は取れます」


またこうもいいます。「夕張は将来の日本の縮図なんですよ。ここで新しい医療の仕組みをつくるのは、本当に最先端の取り組みだと思う。。。いい結果が出れば、将来すごく役立つノウハウになる。そう考えたら、こんなに楽しいことはない。わくわくしています」


村上さんが指定管理者になるかどうか2月に決まり、4月から挑戦を開始します。医療では初めて社会起業家らしい人材が登場したのです。

Pursuit of Happiness

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田辺大さのメールで知りましたが、週間朝日「船橋洋一の世界ブリーフィング」2月16日号に、1月末にあったダボス会議で面白かったのが社会起業家だという「スポーツは人生と世界を変える力持つホームレスW杯立ち上げた社会起業家」があります。サイトはここ、全文があります。
http://opendoors.asahi.com/syukan/briefing/823.shtml


今年のダボス会議では、社会起業家コーナーがもうけられマイ社会起業を語ったようです。ダボス会議では年毎に社会起業家のプレゼンスがあがってるみたい、それだけ存在感を増してるんです。


さて、ホームレスの話をもう一つ。
「幸福の追求」は、映画「幸福のちから」の原題です。主演のウィル・スミスがアカデミー賞主演候補になっているうえ、ホームレスから成り上がり金持ちになった物語だというので見に行きました。


驚いたことに、Pursuit of Happinessは、トーマス・ジェファーソンが起草した独立宣言の前文に「生命、自由、幸福を追求する権利」と書かれており、映画では何度もジェファーソンのことが出てきます。ホームレスだって幸福を追求する権利があり、それを阻んではいけない、これがこの映画の主題の一つです。映画の題名は「幸福のちから」ですが的外れで、ほんとうは「アメリカでは誰でも幸福になれる権利がある」です。


日本では「幸福の追求」は誰でも持っている基本的な人権だなど教わりませんが、アメリカでは神聖不可侵な権利でDNAに組み込まれている空気のような感性なんです。


映画の舞台は80年代の前半のサンフランシスコで、主人公のウィル・スミスは毎晩教会のシェルターに泊まりに行くホームレスです。


彼は5才の男の子がいるホームレスですが、日中、子供は中国人のおばさんが経営するいいかげんな保育所に預け(預かっている間教育しないでテレビを見せているだけ、おもてにはPursuit of Happyness と落書きがあり、主人公は子供を預けるつど、中国人のおばさんにYはIだと文句をいう場面がしばしば出てきます、それだけこの言葉を強調してるんです)、本人は証券会社ディーン・ウィッターで6ヶ月間の見習い社員をやって電話セールスの仕事をやってます。


物語は財団の理事長と偶然知り合い、その取り巻きとたくさん知り合い顧客にして見事に正社員になるところで終わりますが、正社員になれるのは20人に一人です。字幕でその後、彼は自分の投資会社をつくり、さらに証券会社にまで発展させたと出てきます。実話です。


この映画の売りは、自助努力で成功した物語のうえ、妻に逃げられても男の子を大事に育てる父親の苦闘物語の点にあるのでしょう。離婚というと日本では母子の組み合わせが普通ですが、アメリカでは父子の組み合わせがナウイようで、映画の主題になってるのだと思いました。


80年代のサンフランシスコは、全米ではホームレスが多くひどい生活だったので、これを救済する社会起業が起こったところです。映画でもホームレスの生活が出てきますが、聞いていたほとのひどさでないので、えぇ、こんな程度だったのと意外な感じがしました。


ホームレスに宿を与え、仕事の技術をつけさせるのはアメリカの社会起業の定番です。なぜこんなに多いのだろうとずっと思ってましたが、この映画を見て納得しました。


独立宣言でうたわれている「幸福の追求」なんです。誰でも生まれながら持っている権利享受のために、それがない人を支援するというのは独立宣言の精神なんです。


それで日本にはなくアメリカにあるのかと得心しました。



建て替えていた家が1週間前に完成し引越したためブログが途絶えてましたが、落ち着きましたのでまた始めます。


昨日の毎日新聞トップに『地域間の所得格差「小泉政権下で拡大」実証』が出てます。毎日新聞が東大の神野直彦教授の協力で計算したところ、02年を境に格差は上昇していることが証明できたと自慢げな記事でしたが、これ奇妙な調査です。


計算はこうです。
・総務省の「市町村税課税状況等の調」をもとに、市町村ごとの総所得金額をその自治体内の納税者で割った一人当たり平均所得を99年~04年の間で計算
・これでジニ係数を求めた
・ジニ係数は02年に0.070だったが04年には0.079まで上昇(グラフの赤線、ここが格差拡大を証明している一番かんじんなところです)
・この変化は小泉政策の悪弊だと断定


なお04年の平均所得ランキング上位3位と下位3位はこうです。
上位3位:
1、東京都港区947万円
2、東京都千代田区812万円
3、東京都渋谷区705万円

下位3位:
1、北海道上砂川町211万円
2、熊本県球摩村214万円
3、熊本県山江村215万円
(棒グラフ、最下位の所得は6年間ほぼ横ばい、最上位は03年までほぼ横ばいだったが04年から上昇)


ジニ係数はゼロが完全平等、1に近づくほど不平等をあらわしますが、80年代から上昇傾向にあり、規制緩和、市場経済化をやると上昇して行くが、問題はその程度で、現在は0.3~0.4ぐらい、この程度が競争のインセンティブが働き格差は許容できる範囲に収まる、0.5を超えると格差是正の政策が必要になるというのが定説です。


毎日新聞の調査では0.1以下と低くなったのは個人所得よりも平均所得を使ってるので差が出ないためとわざわざ苦しい位コメントしてますが、0.1以下は平準化の仕組みが組み込まれてる水準で、これでは格差が拡大しているといっても是正の必要はないレベルです。


計算のもとになっている市町村税は、個人・法人市民税、固定資産税、事業所税などですが、法人の多い都市で高くなり、高齢者の多い過疎村では低くなるのは当たり前のことです。


毎日新聞は、なぜ上昇し始めたのかコメントしてませんが、ここを分析することが大切です。思いつく理由は、
・景気回復が都市ではじまったからで、まだ地方に波及していない時点では格差は開く過渡的な現象なのでは、そうなら待てば格差は縮小して行きます。ただ、産業構造が昔と変り、ソフト産業が成長してますので、景気回復が昔と相似形で地方に波及するのかどうかが問題です。

今回の景気回復は、半分はアジアの成長にともなうオールド産業の復活と残る半分は情報通信産業のようなソフト産業の本格的な成長のためです。オールド産業の復活は地方まで及びますが、情報通信産業はどうでしょうか。。。

・もう一つの理由は財政改革で、都市の所得の移転を過疎地に向かってやる余裕がもうないことです。東京だって財政は苦しいのに、それを地方に移転するといえば都民は大反対です。また所得移転は財政を通じてやりますが、その財政部門が非効率になってしまってるので、移転効果は昔ほどないでしょう。


毎日新聞が1月末におこなった世論調査では、格差は早急に是正すべきは40%、格差はやむをえないが42%と、世論は割れてます。地域格差をなくすために公共事業を増やすべきだという設問でも、賛成27%、反対61%というぐあいです。


マスコミは格差是正を記事にしますが、国民は財政改革を行い、経済の生産性を上げるのこそが格差問題よりも上位の課題だというのでしょう。


所得を移転しようにも財源はなく、移転の効率も悪いときてはどうしようもなく、袋小路に入ってる状況です。この袋小路を抜け出すには社会起業家が登場しなくてはと思います。