ギターを弾いている子どもをみて、すごいなと思ったから、わたしも、一年以上放ったらかしのギターを、弾いてみて、そしたら、Gのコードは思い出せたけど、Cのコードは思い出せなくて、残念で、ピアノと違って、弾いていた月日の浅いものは、やっぱり体が覚えているとか指が覚えているとかいうのには限度があって、わたしは放ったらかしすぎたんだなと思った。

インターネットでCのコードや他のコードを調べて、わたしこれ弾いていたはずだよね、わたしこれ弾き語りしていたはずなのに、弾きながら歌うどころかコードを押さえることさえできないよ、と思ったけど、ひとつずつ、調べて、そして、だんだん思い出して、泣かないで、っていう、自分で作った曲の、最初の前奏のメロディや、最後の後奏のメロディとコードをたどることができた。

それからチューニングをした。六本の弦を、一本ずつ、チューナーで、時間をかけて調弦していく。わたしの耳は頼りなくても、機械は正確だから安心して調弦できる。

途中で、弦の長さの半分の所とか、三分の一の所とか、四分の一の所を、指で軽く触れて倍音を出す。高い音が出る。ソの音の弦をはじきながら触れていると、高いソの音や、位置を変えるとシやレの音が聞こえる。

わたしは調弦を楽しんでいた。同じ弦を何度も弾きながら耳をすましながらチューナーを見る。共鳴して鳴る他の弦を押さえる。楽しかった。わたしは音を楽しんでいた。

六本すべての弦のチューニングを終えて、順番に音を鳴らし和音が響くと、それはとてもきれいだった。ただそれだけが、とてもきれいだった。