2012-09-04 09:30:49

【該非判定の留意点①】輸出令別表第1の1の項(3)火薬類

テーマ:はじめに

今日はkatsutoshiさんに書いて頂いた記事を紹介します。


1. はじめに
 今回から輸出令別表第1について、私が専門とする化学品を中心に述べていきます。今回は輸出令別表第1の1の項(3)火薬類を取り上げました。平成22年3月5日、経済産業省により輸出貿易管理令の運用についての一部を改正する通達(輸出注意事項22第12号)が公布され、火薬類の解釈が改正されました(*1)。この改正によって、私たちはどのようなことを考えなければならないでしょうか。


2. 輸出貿易管理令の運用についての一部を改正する通達(輸出注意事項22第12号)
(1) 改正の概要
 ① 公布:平成22年3月5日
 ② 施行:平成22年4月1日
 ③ 法令:輸出貿易管理令の運用についての一部を改正する通達(輸出注意事項22第12号)


(2) 改正の内容
 改正前:火薬類取締法第2条第1項に掲げる火薬、爆薬又は火工品(中略)をいう。
 現 行:火薬類取締法第2条第1項に掲げる火薬、爆薬又は火工品(中略)を含む。

 「通達における解釈として、火薬類取締法の対象であることを規制対象としていたところ、同法の対象ではない軍用火薬も対象に含まれうることを明確化」するためです(*2)。
改正前では、火薬類のみが規制されていましたが、現行では、火薬類を含む貨物であれば該当貨物となりました。ここからは私の記憶ですが、安全保障貿易管理説明会において、経済産業省の担当官は、火薬類を湿潤させた貨物を非該当とするケースがあり、湿潤させた火薬類も同様に規制するため改正したと説明しました。


3. 「他の貨物の部分をなしているもの」の許可要否判断
 運用通達1-1(7)(イ)に規定された「他の貨物の部分をなしているもの」の許可要否判断によると、輸出令別表第1の1の項(3)火薬類に掲げる貨物が混合された貨物は輸出の許可が必要です。(*3)。この規定は平成22年3月5日以前からありましたので、火薬類の解釈を改正するまでもなく、火薬類が混合された貨物は許可が必要です。


4. ケーススタディ
 このケーススタディは、記事を書くために作成されたものであり、実際の取引ではありません。また、許可の要否については、あくまでもkatsutoshiの個人的な意見です。個別の貨物について、該非判定に疑義が生じた場合は経済産業省に相談してください。


(1) ピクリン酸-火薬類を微量に含む貨物の場合
 ピクリン酸は火薬類取締法第2条第二号ホに規定されていますので、該当貨物です。ピクリン酸はグラム染色といわれる細菌の染色法に用いられます(*4)。具体的には、ピクリン酸1-4%程度のアルコール溶液を用いて細菌を脱色したのち、染色します。このように火薬類を微量に含む貨物であっても、輸出の許可は必要であると思います。


(2) ニトロセルロース-火薬類として利用できないことが明らかな貨物の場合
 ニトロセルロースは、ニトロ基を三以上含むその他のニトロ化合物として火薬類取締法第2条第二号ホに規定されていますので、該当貨物です。ニトロセルロースはラッカーといわれる塗料に用いられます。ラッカー塗料は塗料であって、火薬類として利用できないことが明らかな貨物ですが、輸出の許可は必要であると思います。


(3) ニトログリセリン-旅行者の携帯品の場合
 ニトログリセリンは火薬類取締法第2条第二号ホに規定されていますので、該当貨物ですが、ニトログリセリンは狭心症や心筋梗塞の薬として知られています。旅行者がニトログリセリン製剤を携帯品として本邦から出国する場合、輸出令第4条第2項第四号に規定された特例により許可は不要であると思われます。


5. おわりに
火薬類の解釈を改正しなくても、「他の貨物の部分をなしているもの」の許可要否判断により火薬類が混合された貨物は許可が必要であるため、この改正は非常に疑問でした。私の解釈が誤っているのでしょうか。詳しい方はコメントをお願いします。
また、グラム染色に用いる脱色液やラッカー塗料に輸出の許可が必要であるというのは驚かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。グラム染色に用いる脱色液について、濃度など閾値を設けることで本当に機微な貨物だけを規制するべきかと思います。また、ラッカー塗料について、輸出令別表第1の3の項にある「化粧品、シャンプー、調製界面活性剤、インキ、ペイント、接着剤、調製不凍液又は調製潤滑剤であって、個人的使用のため小売用の包装(瓶、缶、チューブ等に詰められたもの)にしたものを除く。」のような規定を設けるべきではないでしょうか。
次回は輸出令別表第1の3の項(1)軍用化学製剤原料です。


6. 参照資料
*1 ジェトロ:輸出貿易管理令の運用についての一部を改正する通達(輸出注意事項22第12号)
 http://www.jetro.go.jp/biznews/attachment/4b97394879180.pdf

*2 CISTEC/JMC:安全保障貿易管理説明会 資料<政省令改正等の説明(輸出令別表第一関連等)>平成22年3月

*3 経済産業省:「他の貨物の部分をなしているもの」の許可要否判断フロー
 http://www.meti.go.jp/policy/anpo/qanda/kagakuhin_gaiyousiryo_.pdf

*4 グラム染色の手技(小栗豊子氏(亀田総合病院 臨床検査部技術顧問)による)
 http://img01.ecgo.jp/usr/tmamt/img/090430155700.pdf


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コメント

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4 ■Re:Re:Re:改正前後の差異について

>弁護士 小林正啓さん

早速の返信コメントありがとうございました。

火薬類取締法に掲げる火薬、爆薬又は火工品(「火薬類」という)として規定された化学物質が混合された貨物という解釈ではなく、火薬類取締法には規定されていない化学物質であっても、火薬類として供せられる貨物は、該当と判定される可能性があるという意味ですね。

しかし、火薬類取締法に掲げる火薬類以外も該当と判定される可能性があるのでは、「火薬類」の用語の解釈は規定として不十分ではないでしょうか。

ともあれ、先生の記事を楽しみにしております。連絡をお待ちしております。

3 ■Re:Re:改正前後の差異について

>katsutoshiさん
早速のご回答ありがとうございます。
輸出令第1項(3)の「用語の意味」欄に記載された、「火薬類取締法…に掲げる火薬…を含む」とあることの意味は、火薬類取締法が規定する火薬類は、輸出令1項(3)の「火薬類」に該当するし、それ以外にも、火薬類取締法が規定する火薬類以外のものも、輸出令1項(3)の「火薬類」に該当することがある、ということです。
火薬と同じ成分を含有する貨物が、輸出令第1項(3)によって輸出規制を受けるか否か、という問題は、その貨物が同条項の「火薬類」に該当するか否か、という問題であって、ご指摘の通達の有無によって解釈が変更される、というものではありません。
今回の通達の妥当性については、私も疑問に思っていますし、火薬と同じ成分を含有する貨物が輸出規制を受けることについてのご見解にも同感ですが、この二つの問題は、別の問題ではないかと考えます。
この問題については、私のブログに書きたいと思っていますので、書いたら改めてご連絡します。
大変示唆に富むエントリをありがとうございました。

2 ■Re:改正前後の差異について

>弁護士 小林正啓さん、コメントありがとうございました。

「改正前は火薬類を含む貨物は規制対象ではなかったこと」の積極的な根拠はありません。改正前、運用通達の解釈に「火薬類取締法(昭和25年法律第149号)第2条第1項に掲げる火薬、爆薬又は火工品(輸出令別表第1の1の項(1)及び(2)に該当するものを除く。)をいう。」と規定されていました。また、火薬類取締法第2条の定義によると火薬類を含む貨物について規定されていませんでした。これらのことから火薬類を含む貨物は規制対象でなかったと考えました。

「改正後は火薬類を含む貨物も規制されたこと」の根拠は、運用通達の解釈が「~をいう。」を「~を含む。」に改正されたためです。

ただし、「他の貨物の部分をなしているもの」の許可要否判断により、改正に関係なく、火薬類を含む貨物を輸出しようとする者は、輸出の許可が必要です。

この「~含む。」という規定は他の項番でも用いられており、私の解釈には誤りがあるのではないかと考えていたところです。
そこで、9月18日更新予定の記事で、輸出令別表第1の4の項に規定されたヒドラジンの誘導体とフェロセン誘導体を比較して、「~を含む。」という規定についてもう少し深く述べる予定でした。

「~を含む。」という規定について、誤った解釈のまま、記事を書くことに抵抗もありますので、ここで解釈がクリアになれば幸いです。先生のお考えをご教授いただければ幸いです。

1 ■改正前後の差異について

「改正前では、火薬類のみが規制されていましたが、現行では、火薬類を含む貨物であれば該当貨物となりました」とのことですが、なぜそう言えるのか、改正前は火薬類を含む貨物は規制対象ではなかったこと、改正後は火薬類を含む貨物も規制されたことの根拠を教えていただけませんでしょうか?

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