戻ることのできない日々を思い出し、

必死に手にかき集めても、

結局は虚ろな寂しさが残されるだけなのである。

思い出はどんなに、

緻密に懸命に組み合わせていっても、

一枚のパズルには仕上がらない。

「別れの後の静かな午後」より



僕がしていることは、


歪なピースを無理やりはめこんだ


不完全な一枚のパズルを眺めていることに


近いのかもしれない。


一つ一つのピースの絵柄さえ朧げで


自分でも何を眺めているのか分からない。



一人の自分は戒める。


もうこんなパズルは壊してしまえ。


完成することのないパズルなど、


全く意味のないものだろう?



そして、もう一人の自分は庇う。


今までも朧げなパズルを眺めて


生きてきたじゃないか。


それが自分自身じゃないのか?



今、僕の手には一つのピースが握られている。


それは、自らが過去に捨てたピース。


なのに、また拾ってしまったピース。


握られているピースは


目の前にある不完全なパズルの


どのピースよりも色鮮やかで美しい。


一度は捨ててしまったはずなのに。



正直、僕は迷っている。


このピースを使って新たなパズルを組み立てることに。


完成すれば間違いなく幸福に満たされるだろう。


しかし、僕は怖がっている。


完成させることが出来なければ、


今、眺めているパズルより僕を苦しめるだろうことを。



僕の手の中でピースは訴える。


早くしないと消えてしまうよ?