人生が突然華やかになった。彼女の存在は限りなく灰色で単調だったぼくの生活に彩りを加えてくれた。
土日を中心にデートをした。三宮で待ち合わせることが多かった。一緒に映画を観たり、食事をしたりした。
あれこれと話をした。彼女はぼくの話にじっと耳を傾け、ありったけの注目を与えてくれた。
彼女の愛は静かで深く、心にしみ込むように入ってきた。
それだけでおおいに励まされた。ふつふつとやる気が湧き上がってくるようだった。
「震災の時、わたし生き埋めになったの」
ある日、彼女は語り出した。
地が大きく揺れたその瞬間、家はつぶれ、彼女の全身に屋根が丸ごと落ちてきたというのだ。