「近代国家」は大量の廃棄物を吐き出し続けなければ存続 し得ぬものである。中でも廃棄物としての「水」、すなわち「下 水」は日々大量に垂れ流されている。そしてその処理を放置 すれば瞬く間にあらゆる都市は疫病が蔓延する不衛生極ま りない場所と化してしまう。 例えば、阪神淡路や東日本等の大震災時においては毎 回、下水処理が機能不全に陥り、深刻な混乱を巻き起こし た。被災地で不足しているのは決して食料や水や毛布だけ ではない。人は衣食住のみに生くるにあらず、下水処理もま た人が人で有り続けるために必要不可欠なものなのだ。こう した度重なる経験も経て、熊本地震では食料や水のみなら ず用便施設の迅速なる供給にも救援者の労力が大きく投入 された。 近代化と言えばとかく近代的な建築物や精緻な機械の発 展という「ポジティブ」な側面で語られることが多い。しかしこ うした下水を含めた廃棄物の処理という「ネガティブ」な側面 においても、その高度化やイノベーションが近代社会の発展 において必要不可欠だ。 こうした認識から、近代国家たらんと努力し続けた日本は これまでに莫大な費用をかけて下水道インフラを整備し続け てきた。その下水道インフラのトータルの価格(資産価格) は、港湾や空港等よりも大きい82兆円(2009年度時点)。 これは、日本のすべてのインフラ資産全体786兆円の10.4% にあたる。またこうした「ストック」(資産)を形成する「フロー」 についても、おおよそ18兆円の公共投資の内の約1割に相 当する1.8兆円が下水道インフラの維持・形成に投入されて いる(2009年度時点)。 つまり下水道インフラは、普段我々の目に触れることが少な くその重要性が一般世論やマスメディアで語られることは稀 であったとしても、政府はその重要性を深く認識しつつ、日々 粛々とその整備とメンテナンスを繰り返してきたのである。 「下水資源」イノベーション この下水道インフラにおいて今注目されているのが、下水 を資源と見なすイノベーション、すなわち「下水資源」イノ 京都大学大学院教授・内閣官房参与 藤井 聡 ベーションである。 先にも指摘したようにこれまで下水といえば「汚染処理」と いう「ネガティブなものを除去する」という側面から認識され るのが一般的であったところ、資源やエネルギーという「ポジ ティブなもの」を取り出す仕組みも議論され始めたのである。 そもそも「自然界」では、太陽エネルギーに駆動される形で 「水」が絶えず循環している。 そして、自然界の一部を構成する人間界における水循環も また、巨大な自然界の水循環の一部を構成している。自然 界から人間界への流れは一般に「上水」と呼ばれ、その逆の 流れは「下水」と呼ばれる。人類は「上水」において自然界の 水を飲料等が可能な水準の質に改善し人々に届け、「下水」 において人間活動によって汚染された水が自然界を汚染し ない程度の質にまで改善したうえでその水を自然界に返す、 という営みを営々と続けてきた。 これと並行して人類は水力発電等の形でこの水循環をさ まざまに活用してしてきた。 すなわち「下水」を資源として活用し、エネルギーを取り出 すという取組みもまた、自然界の巨大な水循環の一部を活用 しようとする取組みの一つなのである。 もちろん、こうした発想の萌芽は前近代に見いだせる。 農業のための肥料としての活用がその典型だ。しかし近 代社会において導入された「下水」システムにおいては、もっ ぱら「処理」に重点がおかれ、必ずしもその「活用」は十分に は進められていなかった。 そんな中、近年のさまざまなイノベーションを経て今、その 可能性が急速に拡大しつつある。そもそも82兆円もの資産 価値を持つ巨大な下水インフラにおいて日々大量の下水が 処理され続けていることを踏まえるのなら、下水を上手に活 用することで、大量の資源、エネルギーを抽出することが可 能となることは明白なのである。 下水「天然ガス」エネルギー 下水エネルギーの中でも、いち早く活用されてきたのが「メ タンガス」である。 そもそも下水は大量のメタンガスが発生する。これを廃棄 物としてそのまま大気中に放出すれば、CO2よりも20倍超も の効果を持つ悪質な「温暖化ガス」となってしまう。しかしこ 「下水資源」イノベーション:都市に眠る宝の山 連載:インフラ・イノベーション 第4回 119 インフラ・イノベーション 「下水資源」イノベーション:都市に眠る宝の山 されていったのだが、その流れの中で「発電」にも活用されて いくようになっていった。 上記のガスを燃やして、火力発電を行うわけだ。 現在、こうして産み出された電力は、下水処理場内部で活 用されたり、あるいは、地域の電力会社に販売されたりして いる。 しかもこの下水ガス火力発電は、政府が導入した「FIT」制 度によって近年急速に拡大しており、いま、小さな下水発電 ブームが生じている(例えば2015年5月に放送されたNHK のクローズアップ現代では、「全国に広がる 下水発電ブーム」 という見出しで、その普及状況が紹介された)。 FIT制度というのは、太陽光や風力、水力などの、海外か らの資源輸入に頼らない「再生可能エネルギー」を普及させ るために導入された制度だ。 電力会社がさまざまな主体から電気を買い取る際に、(石 炭火力発電などの非再生可能エネルギーよりも)少々「割高」 に購入する仕組みだ。下水資源を活用する発電はもちろん、 再生可能エネルギー発電であり、FIT制度の対象となる。 しかも再生可能エネルギーの多くは、風力や太陽光等が その典型であるように、天候などに左右されるため、電力の 「安定供給」ができない。一方で下水ガス火力発電は、天 候に左右されないため、安定供給が可能である点も、その大 きなメリットとなっている。 そもそも発電事業において、この「安定供給」性は極めて重 大な意味を持つ。その点において住民への電力安定供給の 点から言って、下水ガス火力発電は、太陽光や風力よりもより 「優良」な発電事業と位置付けられるのである。 こうした背景もあり、全国のさまざまな下水処理場で下水 ガス火力発電所が作られていった。例えば、2013年から 2015年までの3年間で全国で新しく作られた下水ガス火力 発電所は30か所。これらも含め、現時点でトータル80か所 以上にまで、全国の下水ガス火力発電所が拡大している。 結果として今、全国で発生するバイオガスの約20%程度がこ うした火力発電に活用されている。 以上のようなさまざまな活用方法を経て、現在、バイオガ スの約75%が有効利用されるに至っている(図-1)。 れを資源とみなせば貴重な「天然ガス」エネルギーとなる(し たがって、下水から排出されるメタンガスを天然ガスとして 有効利用するということはすなわち、地球温暖化対策として も重要な意味を持つ、ということになる)。 実際、下水処理場が作られるようになった当初、このガス の多くがただ単に捨てられ、地球温暖化の進展に貢献してし まっていたのが実態だった。しかし、それでは「もったいない」 とばかりに活用されるようになっていった。 最初にそれが活用されたのが、そのガスを「燃やす」という ものだった。 そもそも、下水処理において「効果的」にメタンガスが得ら れるのは、下水処理の過程で「発酵」のプロセスが用いられ る場合だ。このプロセスは全国に2,200ある下水処理施設 の内の約300施設において採用されている。この300の施設 においては、下水を沈殿させた結果得られる汚泥を発酵さ せた時に高い濃度のメタンガスを含んだガス(以下、「バイオ ガス」)が発生する。 この「バイオガス」は当初、それを作る「発酵プロセス」の促 進それ自身に自己利用されるようになっていった。バイオガ スを燃やして汚泥を温め、発酵を促進させたわけだ。これに 加えて、下水処理の最終プロセスで行われる焼却処理にも 一部活用されていった。つまり下水処理場は、その下水自身 を「再生可能エネルギー資源」と見なし、それを活用すること で駆動されるようになっていったのである(一般に、こうした 利用は、オンサイト利用、と言われる)。 いうまでもなく、もし、この自己生産されるバイオガスを使 わなければ外部から電力やエネルギーをもってくることが必 要となる。したがって全国の多数の下水処理場におけるバイ オガスの活用は、国家スケールのエネルギー政策として重要 な意味を持つ。 ただしこのバイオガスは、下水処理場だけで使える量を上 回る分が、常時、発生しているのが実態だ。結果、すべての バイオガスの内、発酵促進や焼却のために活用されているの は約半分程度に過ぎない。 これは誠にもって「もったいない」話だ。 ついてはさらにこのガスの有効利用を目指して行われたの がバイオガスの「オフサイト利用」だ。これはバイオガスをさら に精製し、下水処理場外でさまざまな用途に汎用できる「天 然ガス」として活用する方法。例えば現在では、長岡市や金 沢市、神戸市で、こうした下水から作られた「天然ガス」が北 陸ガスや自治体の企業局、大阪ガスに販売されるに至ってい る。つまり天然ガスは必ずしも外国から輸入せずとも、都市 の下に眠る足元の下水インフラから、取り出すことができる のである。 下水道から電力をつくる(1) ガス火力発電 このように、下水処理の過程で発生するガスが有効利用 図-1 バイオガスの利用率の年間推移 120 Journal of Civil Engineering 土木施工 2017 Jan VOL.58 No.1 しかしこれは逆に言うなら、25%がいまだ使われずにただ 単に捨てられる状況にある、ということだ。エネルギー問題 は日本国家の安定的成長、ひいては存続にとって最重要課 題。したがって下水ガス火力発電の拡大も含めたバイオガ スの有効利用は、公益、国益の視点から重要な意味を持っ ているのである。 下水道から電力をつくる(2) 汚泥燃料火力発電 天然ガスは、下水から得られる極めて有力な資源だが、そ れは下水から得られるさまざまな恩恵の一つに過ぎない。し かもそもそも上述のメタンガス発電が可能なのは、汚泥を発 酵させるプロセスを採用している全体の七分の一程度の300 施設においてだけ。一方でいずれの施設においても発生す る「汚泥」は、いくつかの特殊なプロセスを経ることで火力発 電を行うための「汚泥燃料」に作り替えることができる。 例えば、宮城や広島や福島、福岡では、特殊な製法で「粒 状」に加工したり「炭化」させたり、廃食用油等を混入させた りする等の方法を通して作った「汚泥燃料」が、実際の商用 の火力発電機の燃料として活用されている。 こうした「汚泥燃料」火力発電は、上述のガス火力発電より もいまだ実績は少なく、現時点の実績で全国で13か所(平 成27年度末)と限られた状況ではあるが、膨大な量の汚泥 が日々生じていることを考えれば、そのイノベーションをさら に重ね、普及していくことは重要な課題だ。 下水道から電力をつくる(3) 水力発電 一方、再生可能エネルギーの一つとして現在注目を集め ているのが「小水力発電」である。これは、巨大ダムの建設 を伴う大水力発電とは異なり、我々の国土を流れるさまざま な水の流れを活用してタービンを回し、発電するというもの。 言うまでもなく下水道システムでは日々大量の水が流れて いる。今、その下水における水の流れを使った小水力発電 を行う機材が商用販売され、その適用が徐々に拡大しつつ ある。下水道の流量は安定していることから、天候に左右さ れない安定電力の一部として期待されている。 下水の「熱利用」 以上に加えて、下水の持つ「熱」を直接活用する方法もい ま、大きな注目を集め始めている。これは下水の処理プロセ スで出てくる処理水(あるいは、下水それ自身)が、通常の外 気温よりも「高い」ことに着目し、それを特定の装置(熱交換 装置等)を使って取り出し、空調や路上の融雪等に供給して いく、というものである(なお、夏においては逆に、下水の温 度の方が「低い」というケースもあり、それを活用した冷房装 置も考案されている)。 この熱利用は天然ガス生成のような複雑なプロセスを経る こともなく比較的容易に導入できることから、その適用範囲 は広く、ポテンシャルは実に大きい。 ただし今、東京のソニーシティや後楽園地区、札幌、新潟 等の各自治体等、その活用事例は着実に増加しつつあるも のの、全体としてみればその適用は限られているのが実態だ。 今後のさらなる普及が、エネルギー政策の観点から今、強く 求められている。 下水から「水素」をつくり、FCVを普及する 以上のように、さまざまなイノベーションを通して下水資源 からガスや電力、熱が生み出されるようになってきているの だが、中でもとりわけイノベーティブなものが下水から「水素」 を産み出すという試みだ。 水素エネルギーは今、俄に注目を浴び始めた「古くて新し い」エネルギー。そして、低環境負荷の自動車、いわゆるエ コカーの普及は、温暖化対策の中でとりわけ重要な国家的 課題となっている。その中で、大量の温暖化ガスを排出する ガソリン車、あるいは、電気自動車EVに変わる全く新しい自 動車として「燃料電池自動車」(FCV)が注目されている。そし てこのFCVに必要なのが「水素」である。 FCVは走行過程において全く温暖化ガス等の有害物質を 排出しないのがその最大の特徴だが、今、FCVはトヨタ、ホ ンダ等がその開発・商用販売等を進めている。筆者も一度 乗車したことがあるが、その加速等は極めて円滑でガソリン 車に全くひけをとるものではない。そしてEVよりもより魅力的 なのが、1回約3分の充填での650~750キロも走行可能だ という点だ。 ところでこのFCVが、真に「エコ」の視点から有益であるかど うかは、その製造過程で温暖化ガスをはじめとした有害ガス を排出するか否かにかかっている。同時に、その普及におい ては「水素ステーション」の整備が喫緊の課題となっている。 これらの点に着目して今試みられているのが、下水から水 素を生み出し、それを使った水素ステーションを運営する、 という取組みだ。この取組みはいま、福岡市が三菱化工機、 九州大学、豊田通商とともに作った共同研究体によって、国 交省の支援を受けつつ福岡にて進められている。 そもそも下水からは大量の温暖化ガスが排出されるのは先 ほど指摘した通りだが、その過程で排出されるバイオガスを 活用すれば、その温暖化ガスを大幅に軽減できる。福岡では、 この点に着目し、メタンガス(CH4)と水蒸気(H2O)を反応さ せて水素を生成し(なお、その過程で排出される二酸化炭素 は、吸着剤で除去している)、それを下水処理場に設置した 「水素ステーション」で、FCVに供給する試みを進めている。 こうすることで、下水処理過程で生ずる温暖化ガスを大幅軽 減すると同時に、FCVの普及を通してさらにガソリン車からの 温暖化ガスの軽減を図ることができる、という次第だ。 「下水資源」イノベーション:都市に眠る宝の山 121 インフラ・イノベーション 今、COP21(気候変動枠組条約第21回締約国会議)を受 けて温暖化対策が急務となっているわが国にとっては、この イノベーションは極めて効果的なものだと言えるだろう。加え て言うまでもなく、この取組みを通して資源の乏しい日本で 石油依存を軽減させることにもつながることも踏まえれば、こ のイノベーションはわが国にとって極めて重大な意味を持ち 得るものだ。このイノベーションが全国に展開され、わが国 のエネルギー問題、温暖化対策に大きく貢献できる近未来 を祈念したい。 さまざまな活用方法:肥料と建設資材 以上、主として下水のエネルギー活用に着目した新しいイ ノベーションを論じたが、下水はさらに多くの可能性を秘め ている。 そもそも日本古来方からそう活用されてきたように、現代に おいても下水は農業における「肥料」に活用されている。今 下水が持つ総有機分(バイオマス)の内の約1割が、この肥 料を中心とした緑農地用に活用されている。以上に論じた「バ イオガス」は下水の総有機分の1割強、汚泥燃料はそのたっ た1.8%にしか相当しないものであることを踏まえれば、この 肥料としての有効利用は下水が持つ大きなポテンシャルの一 つだ。 そして今、特に大きな注目を集めているのは「リン」だ。 リンは肥料等としての価値が高く、海外から年間40万トン 程度を輸入までしている。そして適切な下水処理をすれば 純度の高いリンを取り出すことができることが知られている。 したがってこれを効率化すれば、下水からのリンを「国産資 源」として活用し、輸入リンを削減することにつなげることが 可能となる。 例えば今、その「六分の一」に相当するリンが下水道に流 入していると言われている。これを有効利用することができ れば、日本は年間173億円相当のリン(リン酸肥料換算)を 輸入する必要がなくなり、肥料の自給率を高めることが可能 となる、と言われている。とはいえ、下水からのリンの抽出は 近年はじめられたばかり。その大半がやはり、そのまま捨て られているのが実態である。 下水資源の有機分の四分の三が未利用 このように近年のさまざまなイノベーションを通して現在、 「有機分」として有効利用されている割合は徐々に増えてき てはいるのだが、トータルとして言うなら、有効利用されてい るのは総有機分のわずか25%に過ぎない。逆に言うならそ の75%が有機分として未利用のままなのである。 政府はいまこの利用率における「エネルギー利用率」(バイ オガスならびに汚泥燃料等での利用率)に焦点をあて、平成 32年までにこれを現在の15%から30%まで上昇させるため に各種施策を展開することを閣議決定しているが、その目標 を達成するためにも、効果的な施策展開を必要な財源を投 入しつつ本格的に進めることが必要だ。 なお、下水には「無機物」も含まれることから、そうしたもの も含めて下水汚泥の半分程度は建設資材等にも活用されて いる。ただし、こうした「無機物」としての利用よりも、有機物 は有機分として活用した方がはるかに高い付加価値を生み 出すことができる。ついては、今後はやはり上述の有機分と しての活用率の上昇が国家にとって強く求められている。 都市に眠る宝の山 日本は確かに資源の乏しい国。だからわが国の国家繁 栄のためには、海外からの輸入資源確保のための「外交」や 「外貨獲得」が必要不可欠である  と、広く国民の間で 共有認識されている。 しかし、そんな努力を図る以前に、国内での資源・エネル ギーの開発が可能であるのなら、それにより多くの国力を投 入することの方が、より合理的であることは明白だ。つまり、 「国内での資源確保」はわが国の存続と繁栄のために、超一 級に重大な意味を持つ取組みなのである。 そうした視点に立ったとき、ネガティブな処理対象に過ぎ ない文字通りの汚物として見なされ、表舞台で論ずることが 忌避されてきた下水は、まさに「宝の山」なのである。 その大都会の足元に眠る「宝の山」である「下水資源」に一 手間、二手間かければ、次のような実に多様な資源・エネル ギーを抽出することが可能となるのである。 ・天然ガス ・電力 (ガス火力、石炭火力、水力、等) ・水素 ・熱利用 ・リン    等 そして実際、こうした数々の資源・エネルギーを取り出すた 図-2 下水汚泥の有機分(バイオマス)としての利用状況 (2014年度) 122 Journal of Civil Engineering 土木施工 2017 Jan VOL.58 No.1 めの技術が、今日の数々のイノベーションを通して具体的に 開発され、その商用活用が具体的に全国各地で始められて いるのは、以上に論じた通りだ。 しかし本稿で一つずつ確認したように、都市に眠る下水資 源のポテンシャルは、いまだ十分に活用されていないのが実 態だ。比較的昔から活用されてきたバイオガスですら、せっ かく「ガス」として抽出できているにも関わらずその四分の一 が無駄に捨てられている。そして、下水資源が持つ有機分(バ イオマス)全体に着目すれば、75%がいまだ未利用の状況の まま放置されているのが現状だ。 そんな中、政府はようやく重い腰を上げ、下水資源である 有機分活用の拡大を、国策の一つに据えようとしている。事 実、まさに本稿を執筆していた平成28年11月、国土交通省 は、彼らが主体的かつ具体的に進めるプロジェクトの一つと して「下水道イノベーション~日本産資源創出戦略~」を掲 げるに至っている。 資源のない国日本  この常識を覆し、日本の国益を可 能な限り効果的に最大化していくためにも、我々はさまざま なイノベーションと、そのための研究開発・普及促進のため の投資を進めなければならない。そうした国家的事業の中で、 「都市に眠る宝の山」である下水資源の活用は、最も重大な 戦略の一つであることは間違いない。 書籍紹介 文藝春秋 文春新書1077 「スーパー新幹線」が日本を救う 藤井 聡 著 新幹線の整備が日本の命運を分ける! 東京や太平洋側への一極集中を解消し、ふる