下心までも溶かすこの夏の猛暑。 | 明け行く空に…。  ~ひねもすひとり?~

下心までも溶かすこの夏の猛暑。

午後の仕事は車で1時間ほど北上した町での会議。
エアコンの効きに難のある愛車ではなく、この春に納車になったばかりの会社の車での移動は快適極まりない。
国道に設置された温度計には36℃の表示。
絶対に車から降りたくはない。
会場に着いたとしても、駐車場から箱までの数メートルの移動ですら嫌だと、路上で赤い文字を点滅させる温度計はオレに訴える。
 
でもね、移動途中に見つけた海水浴場の前を通りすがった時、オレは車を緊急停車させる。
もちろん、ビーチで狂喜乱舞する水着のねーちゃんを視界に捕らえ、鋭気を養うためだ。
外は36℃?立ってるだけで汗だく?そんなもん知ったこっちゃ無い。
水着にはそれら負の要因を全て払拭する力があるんだよ。
あぁ、夏万歳。
 
近くの駐車場に車を滑り込ませ一歩外へ出ると、そこは地獄。
まじで灼熱。
アッサムリーダーも真っ青な灼熱。
もうね、2秒で下心に勝てなかった己の弱い心を呪った。
額やら背中、終いには脇の下までもが一瞬でびっしょりになり、オレは逃げるようにまた車へ向おうとする。
そうすると、もはや日焼けとはいえないくらいに黒く、正にタイマーの加減を失敗した焼きすぎのトースターみたいな肌の色をしたおっさんがオレの前に立ちはだかる。
 
「お兄さん、駐車料金終日600円だよ、えへへ」
 
何ですと?
こんなただの空き地に車を停めただけで600円?
この野郎、その焼きすぎた黒焦げのパン生地に、日焼け止めの代わりにマーガリン塗ってやんぞと思いましたが、まぁオレも大人なもんですからそんな言葉は熱気と一緒に飲み込む。
しかしオレも水着のねーちゃん眺めに来ただけで600円の出費は惜しい。
ここは早々に立ち去れば事無きを得ることも出来たかもしれないが、既に頭の中は水着一色、真っ赤な水着の色に染まってしまっていたので、熱により融解寸前の脳をフル回転させる。タプタプと音をたてながら回す。
ふと見渡すと、駐車場の片隅に設置された公共のトイレの存在を確認した。
しめたっ!とオレは颯爽とポケットからティッシュを取り出し、下腹を苦しそうに押さえて言った。
 
「す、すいません!う、う○こが、うん○が今にも漏れそうで……ちょっとだけ車置かせてくださいっ!?」
 
そういってオレは全力疾走しトイレへと向う。
もちろん向うと見せかけてビーチへまっしぐらだったのは言うまでも無い。
 
さてと、難は去ったと近くにあった売店でアイスを購入したオレは、防波堤の上へと腰を下ろしてさっそく水着のねーちゃんを眺める。
もはや暑さなど全く感じない。
それ程の達成感を感じながら、アイスの冷たさを口内に充満させ、尻には熱されたコンクリートから伝わる熱さという違和感を感じたがそれを無かったことにして、全力でビーチを眺めた。
 
確かにね、目の前を行き交う目的の光景はオレに元気を与えてくれる。
だが、本日の猛暑はそれを上回るほどにオレから体力を奪う。
既に手に持ったアイスはダラダラと溶け出して、木の棒を伝ってオレの手にべたつく不快感を与えてくれる。
もはや限界と一気に残ったアイスにかじりつくと、そこにアタリの文字が……。
 
仕方なくオレはさっきの売店にトボトボと向かい、もう一本のガリ○リ君を手にし車へと向った。
その前に、パラソルの下で暑さを凌ぎぐためうちわをパタパタとさせながら、大音量のラジオで高校野球の放送を聞いているさっきの焦げたおじさんへのお礼を忘れないオレってかっこいい。
もちろん、2本目のソーダ味を手渡しながら。
 
ま、既に袋の中ではドロドロに解けてしまっていたけどな。
 
 
つーかね、やっぱ夏はエアコンの効いた車内とか社内にいるのが一番だと感じたってことですよ。
水着もいいが、どうせなら快適な室内で眺めたいと心から思いました。
 
 
そんな感じで。