きょうはスケーリングについて。
スケーリングは、この登山にたとえるとわかりやすいかもしれません。
例えば、富士山は、自分がいま、どのあたりを登っているかわかりますね。それは何合目という目印があるからです。
スケーリングとは、例えば、最高のクラスとはどういう状態かを聞いて、それが最高にできた時を10(山頂)として、全くできない状態を1(麓)として「今の状態は、何合目?」と聞く、そんなツールです。
ここでは山登りにたとえましたが、単純に1~10とか、1~5の数字を使うことも多いようです。
スケーリングをどのように使うかに関しては、より具体的な方がわかりやすいと思いますので、児童心理2月臨時増刊の中に書かれていた例をひかせていただきます。(P65)
この例は小学校の2年生のクラスでWOWWを取り入れた例です。
このクラスの先生は、きっと子どもたちと話し合ったのだと思いますが、学級目標を「ともだち」というものにしたようです。
でも目標が「ともだち」なんて言ってもあまりにも、漠然としていて、それが一年後、確かに達成できたかどうかなんてわからないですよね。
そのため学習面と生活面から、ともだちって、具体的に、どんな姿なのかを話し合ったんだそうです。
そして出てきたのが、
・わからないことは教えあう
・困っている人がいたら助け合う
・つらい思いをしていたらやさしく言葉をかけあう
など。
小学2年生であってもしっかりと「ともだち」の姿をイメージしたんですね。
ここでスケーリング。
こんな質問をします。
「ここで出てきた『ともだち』のいくつかの項目で、それが完全にできている状態を10、全くダメな状態を1とすると、いま、いくつくらいかな?」
すると子供たちは、5と答えたんだそうです。
具体的に友達ってどんな状態かを明確にしたからこそ、5という答えが出てきたのですね。
そして、みんなで「ともだち度」を一致団結してあげていく、という目標達成を約束したんだそうです。
黙って作業する、掃除を一生懸命する、宿題パーフェクトなど、一致団結してそれが行えると、子どもたちはハートマークをゲットし、それを視覚化できるようにボードに貼っていった。
もちろん、先生は、日頃から、子どもたちのうまくいっていることを見つけて子どもたちをコンプリメント。
そうすることによってクラスは、とてもまとまったクラスに成長していったとか。
その点に関して先生は、授業に集中して参加しにくい子も、クラスの温かい雰囲気に包まれて、いつの間にか溶け込み、ルールが守れたり、集中できるようになった、とも書いています。
やはり、問題の中の例外を探してコンプリメント(アドラー心理学では、勇気づけ?)をすることは子どもたちを変える大きな原動力になるのですね。
ここでスケーリング活用の注意点について!
いまの状態が5だとして、それを10に向かってチャレンジしていくのはいいのですが、もし、いきなり10を求められたとしたら、子どもたちはどう思うでしょう?
いつも数学で50点の子が、次のテストで100点を取らないといけないよと言われたら、かえってやる気を失ってしまいますね
だから、WOWWやそのベースになった、解決構築アプローチでは、こんな質問をするようです。
「いま、5の状態だけど、6の状態になったとしたらそれは、どんな状態だと思う?」
このように、いきなり10を目指すのではなく、いまの5の段階から6になった状態を想像してもらい、そこにどんな違いがあるかを子ども自身に考えてもらいます。
そして、「そうなるために今できることはなんだろう?」
と聞いて具体的な行動に落とし込む。
そして少しでも変化したならコンプリメント。
少しの変化、うまくいっていることに注目してコンプリメントをすることによって、その行動が強化され、子どもたちは少しずつ変化していくわけです。
いかがでしょう?
スケーリング、使えそうだと思いませんか?
参考図書
児童心理2012、2月号臨時増刊