きくな湯田眼科-院長のブログ

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横浜市港北区菊名にある『きくな湯田眼科』


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次のようなご質問を受けましたので、ここでお答えしたいと思います。


質問:現在、LED電球や、LEDテレビ、LEDバックライトのパソコンなど普及していますが、そういったものは目に悪影響を及ぼすのでしょうか?
白色LEDにも青色LEDの波長が含まれているという話を聞き、私はテレビやパソコンを良く利用するため心配です。
また、私は緑内障を患っているため、特に気になります。


網膜は紫外光(波長400nm以下)、有視光(波長400~700nm)、赤外光(波長700nm以上)に対して障害を受ける可能性があります。光の網膜に与える影響は照射光の波長、パワー、持続時間、大きさ、網膜の照射部位により決定されます。なお、光は波長が短いほどエネルギーが高くなりますので、青色などの短波長の光の方が危険性は高くなります。


光の網膜に対する傷害性には3つあります。
1.切断
2.焼灼
3.光化学反応


1の切断は高エネルギーのレーザーをpicosecond(10-12秒)かmicrosecond(10-6秒)ほど短時間照射した場合に生じます。網膜は切断され、穿孔する可能性もあります。工業用レーザーの誤照射などで起こりえます。


2の焼灼は高エネルギーの光(レーザーを含む)をmicrosecondから1秒ほど照射した場合に起こります。光照射により、網膜温度が10℃以上上昇した場合、網膜は熱凝固され、その部分はダメージを受けます。太陽を望遠鏡で観察した場合などに起こりえます。眼科では糖尿病網膜症、網膜静脈閉塞症などの治療として新生血管を防止する目的でレーザー網膜凝固を行いますが、この光の焼灼作用を応用したものです。下の図はいろいろな波長のレーザー光で網膜の凝固される部位が異なることを示しています。


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3の光化学反応は光を1秒以上長時間照射することで起こります。網膜に含まれる色素などの分子が光子(フォトン)を吸収すると、吸収された光子のエネルギーが電子を励起し、これによりラジカルを生ずると、このラジカルが直接あるいは間接的に組織障害を引き起こします。このように光を吸収しラジカルを発生する分子を光感受性物質(photosensitizer)といいます。


多くの光網膜障害はこのメカニズムにより生じています。例えば、太陽光を肉眼で見続けた場合、網膜像の大きさは大体160ミクロン程度の大きさ(中心窩の大きさは大体350ミクロンです)で、縮瞳により瞳孔径が3mm程度になると、最大限網膜温度は4℃程度の上昇でとどまります。(もし瞳孔径が7mmとすると、網膜温度は10℃以上に上昇し熱凝固が起こります)従って裸眼での太陽光による網膜障害は熱凝固作用によるものではなく、この光化学作用によるものと考えられます。


網膜には様々な光感受性物質が含まれており、それぞれ吸収スペクトルは異なっています。従ってこれらの物質を介在した網膜光障害は様々な波長の光で起こることになります。下の図は網膜に含まれる色素などの吸収曲線と、光障害をおこす光の波長とその程度を合わせて一つのグラフにしたものです。(少々分かりにくいですね)


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網膜の視細胞には杆体と錐体があります。前者は網膜周辺部にあり、ものの動きや明暗に関係する情報を得る視細胞で、後者は網膜中心部にあり、ものの形、色などの情報を得る視細胞です。暗いところでは主として杆体が働き、明るいところでは主として錐体が働いています。


杆体には視物質のロドプシンが含まれています。ロドプシンはレチナールとタンパク質のオプシンが結合したものです。光が当たるとレチナールがシス型からトランス型に変わることでオプシンの立体構造が変化し、Gタンパクを介してサイクリックGMPをセカンドメッセンジャーとした反応が起こり、光情報は電気変換されることになります。


400~550nmの波長の光が視覚情報を与える以上に強く網膜に当たると、光障害を引き起こす可能性が出てきます。この領域の波長は大体杆体の吸収スペクトルに一致しています。この光障害は1966年にNoellがラットの網膜で初めて証明し、class 1の光障害(white light photopic retinopathy)に分類されています。(なおラットには黄斑部はありません)


ヒトの太陽光障害の病理組織学的研究によると、錐体は杆体に比べ、光障害に抵抗性があることが認められています。しかし、頻回に強い青や緑の強い光の網膜への照射は青錐体・緑錐体の選択的障害を引き起こす可能性があります。(そもそも光とはエネルギーのかたまりです。これを利用して情報を得ている以上、そのエネルギーの犠牲になる可能性は常にあるのです。酸素も同じで、これを利用して生きている以上酸素の毒性に常にさらされることになります。)


class 2に分類される光障害(UV-blue phototoxisity)は紫外光によるもので、1976年Hamによって発見されました。この障害に関係する光感受性物質はリポフスチンLipofuscin と考えられます。リポフスチンは網膜色素細胞による視細胞外節の食作用やミトコンドリアなどの自家融解により加齢とともに網膜に蓄積してきます。上の図で、UV-blue phototoxicityのカーブと Lipofuscinの吸収曲線が類似していることに気がつかれるでしょう。


紫外光は角膜により300nm以下の波長はブロックされ、水晶体により300~400nmの波長がブロックされます。また、中心窩では錐体にルテインなどのキサントフィルxanthophyllが含まれていて紫外光を遮断する効果があると言われています。これらの作用により紫外光による網膜障害は軽減されていますが、長年の紫外線の影響が加齢黄斑変性に関係がある可能性などが残されており、紫外光はサングラス等で避けたほうが無難と考えられます。


以上が大体の光網膜障害の概説ですが、問題は青色ダイオードの光毒性についてです。


これについては小出らがサル眼を用いた実験を行っています。(日本眼科学会雑誌 2001;105:687-695)

この実験は成熟雄アカゲザル6匹を用い、中心波長460nm、照射パワー1.2mWの青色LEDを使用、アトロピンで散瞳し、細隙灯顕微鏡と集光レンズを用いて網膜黄斑部に照射径が3mmになるようにして、それぞれ12分、23分、34分、40分、45分、90分間青色光を照射した実験です。照射後30日目に屠殺し病理組織を見ています。(大変力の入った研究です。なお実験に供されたサルは人のためとはいえかわいそう。冥福を祈ります)


この結果は”23分以内の照射では何ら異常は生じなかった。34分照射したサルでは蛍光眼底造影でわずかな過螢光を認めたのみ。40分照射したサルで蛍光眼底造影で30日目後期の過螢光を認め、組織学的検査で視細胞外節が崩壊、網膜色素細胞がほぼ壊死に陥っていた。”と言うことです。このことから彼らは28.8J/cm2 以上の照射で青色光での網膜障害が起こることを指摘しています。


いずれにしろ強い光を長時間網膜に当て続ければ光障害は避けられませんが、今回見られた実験系のように、散瞳状態で意図的に照射するようなことでもない限り、通常このような光が網膜に連続して当たることはありません。逆に言うと、このような過酷な条件下でも23分程度であったら何ら網膜に影響を与えないと考えた方がよいと思います。



なお、光障害は網膜色素上皮、視細胞レベルで起こる現象で、視神経が特異的に障害される緑内障とは関係はありませんので、神経質にならなくとも良いと思います。

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