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ニホンウナギの稚魚、シラスウナギが不漁だ。関東や東海、九州などの河口付近で冬から春にかけて漁が行われるが、今年の漁獲量は例年の半分程度に留まっており、乱獲やエルニーニョ現象などの環境変化が原因のようだ。平成19年には、欧州全域で採れるヨーロッパウナギの乱獲が問題となり、ワシントン条約で取引が規制されたばかり。4月上旬には、国内でウナギの完全養殖に世界で初めて成功したが、実用化はまだまだ先。日本の暑い夏を乗り越えるために欠かせないウナギ、価格の上昇が心配だ。(今泉有美子)

■稚魚の漁獲量がここ数年で激減 ウナギ養殖を断念した業者も

回遊魚の宝庫として知られる広大な相模湾を臨む神奈川県藤沢市。目の前に広がる江ノ島周辺は、かつては関東有数のウナギの養殖地として知られたが、現在は養鰻業を営む家はほとんどない。シラスウナギの不漁が続き、多くの養鰻業者がウナギの養殖をあきらめたためだ。

同地で、約40年にわたって養鰻業を営んできた「安藤養鰻場」も、数年前からウナギの養殖をやめ、他県から買い付けた親ウナギの卸業のみを行っている。親子で同養鰻場を経営していた安藤昇さん(43)は、「シラスウナギの価格が上がって、やればやるだけ赤字になるので、養鰻は数年前にあきらめました。今年は特に漁獲量が悪いようなので、ウナギの値段もはね上がるのではないでしょうか」と不安顔だ。

シラスウナギの漁獲量は、どれだけ減っているのか。関東有数のシラスウナギの名産地として知られる、茨城県・霞ケ浦。その一角「常陸川」の今年のシラスウナギ漁獲量は、地元漁協によると10キロにも満たず、例年の1割程度となった。漁協の職員は、「こんなに採れない状態が続けば、秋の放流分の親ウナギが確保できなくなってしまうかもしれません」と肩を落とす。

■放流する親ウナギの数にも影響 避けられない今後の漁獲量減少

シラスウナギ漁は、冬から春にかけて河口付近で行われる。シラスウナギが照明に集まる習性を生かし、河口にライトを照らして網ですくうのが一般的だ。資源を守るため、漁期は自治体ごとに定められている。

茨城県では、少しでもウナギの資源を増やそうと、夏までに出荷できるサイズに達しなかった若いウナギを、9~10月にかけて放流しているが、漁獲量が少ないため、放流分の確保は難しそうだ。

不漁に嘆くのは茨城県だけではない。鹿児島県では、3月末時点の漁獲量が県全体で684キロに留まり、過去5年間の平均の約1千キロを大きく下回った。3月末と定めている漁期を特別に4月15日まで延長したが、「それでも漁獲量はいつもの7割を少し超えた程度だった」と県の担当者はため息をつく。

水産庁のまとめによると、今シーズンの全国のシラスウナギ漁獲量は、3月末時点で約6・4トン。24・7トンだった21年と比べると、3割にも満たない。

ウナギの生態に詳しい東京大海洋研究所の木村伸吾教授は、「これだけ毎年減っている理由の一つは、間違いなく乱獲です。加えて、今シーズンはエルニーニョ現象の影響で、稚魚がうまく海流に乗れなかった可能性もある。エルニーニョの年は、いつも漁獲量が低いことがわかっています」と話す。

■ヨーロッパウナギはすでに規制対象に かば焼きが食べられなくなる?

そもそも、シラスウナギの資源不足は数年前から海外でも指摘されてきた。欧州全域の河川で採れるヨーロッパウナギの稚魚は、乱獲が原因で資源量が大幅に減少し、欧州連合(EU)が「乱獲で1980年代の2%以下に減少している」と主張。平成19年にオランダ・ハーグで開催されたワシントン条約締約国会議で、ヨーロッパウナギの稚魚は国際取引の規制対象となることが決まった。

これにより、現在はヨーロッパウナギの稚魚は原産国の許可がないと輸入はできないことになっている。木村教授は、「ニホンウナギの資源量の減少をみると、ヨーロッパウナギのような規制がかかっても不思議ではない。クロマグロのように、海外からの指摘で会議の場に上る可能性もあるだろう」と指摘する。

ここで心配なのが、かば焼きの価格の高騰だ。シラスウナギの値段は漁獲量によって変動するが、水産庁のまとめによると、1キロ当たりのシラスウナギの取引価格はここ数年、20~50万円前後で推移していた。しかし、今年は60~150万円で取引されており、例年の10倍近い値段が付いてしまっている。

日本養鰻漁業協同組合連合会(静岡市)の大岡宗弘会長は、「今年は昨年のウナギが残っているから乗り越えられるかもしれないが、来年もこの調子だと、価格の上昇は避けられないでしょう。親ウナギの放流を行って、資源量を何とか確保していきたいと思っています」と厳しい口調で語る。

私たちにできることはあるのか。

大岡会長は、「『天然ウナギ』というブランドに惑わされないでほしい」と話す。

大岡会長によれば、天然のウナギとは、川で育った野生のウナギを指すが、“天然もの”として重宝され、高い値が付いているという。しかし、天然ウナギは外洋に出て卵を産む大切なウナギだ。捕ってしまえば、さらに資源は枯渇してしまうという。

「天然ウナギといえば聞こえはいいが、日本の汚い川で育ったウナギに比べれば、清流に作られた養鰻場で育ったウナギの方が味もよい。親ウナギの確保のためにも、天然ウナギはできるだけ食べないでほしい」

大岡会長は、そう忠告している。

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