若年性認知症を発症した会社員

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 Fさんは50歳代の男性、30年以上メーカーに勤務している会社員です。真面目な性格のFさんは周囲から信頼され在庫管理をまかされていました。Fさんの変調に気がついたのはずっと一緒に仕事をしていた同僚の女性です。絶対にあっているはずの数字にときどきミスがみられるようになりました。また話しかけても明るく返事をしていたFさんの声に元気がなく沈み込んでいるように見えます。ミスのことにふれても困ったような表情を浮かべるばかりで仕事ぶりに改善がさっぱり見られません。会社でも困ってしまい嘱託医に相談したところうつ病の可能性があるということで受診されました。Aさんは実直そうな中年の男性ですが日付や場所など簡単な見当識に関する質問に対して躊躇するような様子をみせ言い間違いのような細かなミスがみられます。症状の経過をみてもうつ病なら多少はみられる気分の波がなく徐々に進行している印象がありました。詳しい検査を提案すると、Fさんは困りますと断りました。

 

 

 Fさんは認知症を発症している可能性が高いと思われます。初期の認知症とうつはよく似た症状を示すことがありますし、うつ病と診断して治療していて次第に認知症症状があきらかになることは日常の臨床で少ないことではありません。F]さんは自分で気がついているからこそ不安で周囲に気が付かれないように必死でカバーしていたと思います。小さな子供がいるということもまだまだ仕事をやめられないという気持ちにさせていると思います。しかし治療の可能性があるうつ病と徐々に進行していくことが確実な認知症ではやはり対応に大きな違いがあります。診断を下すだけではなくその人のおかれた社会的立場を考え対応していかねばならない難しさがあります。

女性の社会進出の陰で

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 Dさんは40歳代の独身女性。勤めている会社の女性総合職の1期生として採用されました。能力的にも高く人間関係もそつがないDさんは順調にキャリアをのばして同期の男性と互角に管理職に昇格し本社での重要な役割をまかされる位置についています。Dさんの後に総合職が誕生していますが、後輩たちにとってもDさんは目標になっていると同時に頼られる存在です。女性登用の機運もあり将来は役員への登用も考えられる立場にあります。しかし1年前ぐらいから次第に心身の不調を感じるようになりました。疲れが取れきれずだるさを感じる、頭痛が続く、食欲もなくなり、趣味のダンスにもいく気がしない。更年期かと考え婦人科を受診しましたがホルモンには問題はないといわれました。精神的なものかもしれないと言われ受診しました。

 Dさんは意欲低下、喜びの消失など典型的なうつ病の症状を呈していました。抗うつ剤を投与しましたが症状の改善は不十分であり相談の上しばらく休養をとることにしました。Cさんはいままでの生活を思い起こし、無理をしてきたと実感したそうです。自分が道を切り開かねばという思いが強すぎたように思うと述べていました。女性の社会進出にあたって日本は遅れていると指摘されています。総合職の女性が誕生してから20年余り。これから重要な地位をめざす女性が増えてくるものと思われます。男性社会の中でさまざまな難しい問題があったとおもいますが、それを乗り越えて頑張っている女性にエールを送りたいと思います。しかし時には自分のこころと体に無理が来ていないか振り返る必要がありそうです。