白銀が狂女の哄笑の二度目でヱビスビール買うてきた所でこの前は終わった。
無論、何もなかった様に白銀はピラフを作り始め、ヱビスビールを飲み始める。

詳しい事は秘密らしい。
どうにも哄笑の送り主は、例の団体臭い。
この後は哄笑の騒ぎは無かったが、その哄笑さえ何らかのヨリマシを使った可能性があるそうだ。
この前の話は双子の女子大生がヨリマシだったが、彼女達は強い能力を失った。
連中が助けられなかったら、失踪扱いだろうなと白銀が言う。
生贄を捧げて呪詛をするんだから、ただじゃ済まないだろう。
まぁ、そんな事言ったら、文字なんてもんだって亀卜やらの占いとかオカルトから派生したもんだ。漢字がある種のおどろおどろしさをその各々の字に湛えているのは、海外の音価のみを示すアルファベットよりもその原初性を示している。
そこそこ喰って飲んだ後、白銀に帰る際に、お札を貰った。
道教の急急如律令だったな。
特定の方角に貼るように言われた。
その後はお蔭で哄笑は無い。
しかしながら、話はこれで終わりじゃ無いのだ。
白銀は新聞販売店にいる。
配達もすれば、朝刊の中継とかでワゴンを運転することもある。
この話の数週間あと朝刊配達の時、それは起きた。
天気では九月の前の蒸し暑い快晴の日である筈が、配達する時間に激しい雨が将に最中に降り出した。
しかも中継地点に次の新聞が置いてない。
この日の中継は白銀だった。
電話をしようとしたら、変わりに川村さんという集金役が代わりに来た。
聞けば、白銀が事故った。
…あああ。
やられたか。
車は大破。
あいつは左腕骨折で都立病院に収容された。白銀のいるグループの他の人達は害は無かったが、彼だけがやられた。

見舞いに行ったとき、そのことには一切言わなかったが、退院してから彼に呼ばれた。
突然の雨もかなりヤバいサインだったそうだ。邪魔されたのを根に持っていたんだろうと相変わらずの態度で話し出してくれた。
今で言うゲリラ豪雨みたいな濃密な降り方で、下手すりゃハイドロプレーニング起こしかねない危うさで、あの朝の目黒の静かな住宅街に有り得ないものを目撃して、それが突っ込んで来て、避けきれずに車ごと壁にぶつかったらしい。
よく死ななかったな。
そう言ってやると、防御の魔術は心得てるさと言いやがった。
覚悟していたのか。
瑣末なことは一切省略して言う奴だが、こいつの魔術の知識は正確だった。
謎は残る。
その敵の団体は何者か。
ミリオンのGON!みたいな与太か都市伝説風味の怪奇な連中か。
それは聞けなかった。
霊能力を持つものを拉致しても揉み消せる程の連中ならかなりヤバいが。
白銀が与太なのかは此処では問題にしない。与太でないのは自分が何度も見ているし、ツッコミ所もかなりあるが、実際に聞いた話としては、2チャンネルのガセ話よりは信じられる。
そのうち、怪談朗読(♂)に読んでもらえれば幸いだが。
まだまだ聞いた話は沢山あるよ。

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霊感のない人間には、霊と言うものが見える連中にどう見えるかは全く解らないものだ。精々夢の世界でそんなものに出逢えるか出逢えないかだ。
日本人の大半が神様に手を合わせ、祖霊を彼岸と盂蘭盆会にもてなす。
元々は目に見えるものではないから、概念としては存在は信じられる。
見えない者をネタに、怯える人々を脅し金を巻き上げる連中には付け込まれないようにするに越したことはないが、正邪の区別は出来る方が良い。
その手のオカルトネタが好きな癖に、幽霊を見たこともないし、超自然現象にも遭ったことがない。
心霊写真も撮った事がないから、不可知論者なんだろうな。
霊感のある人と言うのは、どう見えるかなどを鈍い連中にはあんまり懇切丁寧には説明しない。徒労だし、逆に見えない方が幸せだよと結論付けてしまう。
稀に鈍い奴でもESPとか霊感の強い人と一緒に居ると、何らかの現象を味わう事がある。SFものもかなり好きだが、あの感じを味わう事件だった。

前回の続きである。
かなりヤバい話を聞いた後に、外より気温が低い白銀の部屋に戻り、飲物でも飲みながら第2話目を聞くところだったな。
ユルくオフコースが掛かっていた。
一話目はいきなりエグい話だし、魔術関係の話はやはり怖い。生体人間がやっている事は、幽霊話などなどとは一線を画す怖さがある。
ガキの頃少年チャンピオンにて連載されてた古賀新一のエコエコアザラクはマジキていた。朝松健の一連のマジカルホラーもかなり怖いな。
ちょうど荒俣宏の帝都物語が流行ってた頃だし、その手のマジカルサイキックものは大体揃っていたし。
やはり一番怖いのは人間だわ(笑)

先程の背後霊の話をネタにして、女性の霊がどんな来歴の人なのか聞いたり、背後霊が解答を保留しているとか、頓珍漢なやり取りが始まる。たしか、テレビの背後霊には秘密など無い筈だが(笑)
私の知らない世界は複雑すぎて訳解らない。日本では死神は死に立てホヤホヤの死者がやらされるし、背後霊とか支配霊とかは曰わく因縁があるらしい。
つのだじろうの漫画もよく読んだが、未だによくわからない。この事については詳しく聞けなかったので謎だ。
後に郷里に帰る前に、或る占い師に私の事を聞いたらしいが、やはり、髪の長い女性のイメージを伝えたんだとか。
しかしながら、これが本題ではない。
アーサー・C・クラークでさえ、人の背後には三千人の幽霊が居ると言ってるのだから、幽霊なのはべつにどうでも良いのだが、来歴を言わない奴が自分の私生活を背後で見ていると言うのは、気持ち悪い。
せめて何処で生きていた誰々だと言えよ(笑)
まあ、そう言うシステムなら、仕方ないが。
せめて話ぐらいしたかったねぇ。霊感無い奴には、何がなんだか解らないし。

そんな事をネタにしていたら、やおら白銀の様子が変わってきた。
「…ヤバ」
「…え? 何だよ、白銀」
「来やがったよ」
「何が?」
イラついて私が言うと、白銀はユルく言ったよ「お待ちかねの、攻撃だよ」
一瞬の静寂。
ほんの数秒だろう。
地震のあとの津波の様に、それは、フェードインかチューニングを合わせるかの様にやってきた。
成人女性の狂ったような哄笑。
ボリュームがオフコースの音源よりデカい。不意ながら失笑などや、コントの笑いなどではなく、調子っぱずれな背筋の寒くなる命を絞り出すかの様な気味の悪い哄笑だった。
白銀がニヤケながら言う「初めてだろ、こんなの?」
…当たり前だろ。
かなりのボリュームだ。
ユルくかかるオフコースが聞こえない。
確実に近隣から苦情が来るレベルだ。
「何なんだよ、これは?」
恐怖と言うよりも、突然の出来事に恐慌し、動けない。
出た言葉は、それだけ。
白銀は馴れたものなのか、徐に立ち上がり、コップ一杯の水を汲み、作業机にコトリと置く。
「…まさかこんなに早く来るとはな。これでかなり抑えられる筈だよ」
確かに哄笑はボリュームが下がり始めた。
「何なんだ、こりゃ?」
「こんな事やってりゃ、邪魔に思う連中って居るもんだよ。これって、何処に作用させてやってるか解るか?」
「まさか、頭か? あり得ん」
「聞こえたろ? 耳にではなく、直接オツム、心に攻撃している」
「あん? わたしゃ霊感無いんだぜ!」
「俺はかなり強いぞ。先輩にも修行してコントロール出来るようにしろと言われてるよ。お前は確かに霊感が鈍いけど、俺みたいな奴と居れば、見ちまうのさ」
チェシャ猫みたいに笑う白銀。
ボリュームの抑えられてる哄笑が、そこで押し返される。
隣の谷川さんはアルバイトでいないし、下の階は物置で人は居ない。
本屋(ほんおく)に大家の白戸さんは住んでいるので、余程の騒音でなければ苦情は来ない筈だ。
だが、この気味の悪い女性の哄笑は、近隣から間違い無く苦情が来るレベルの音量だった。
流石に白銀も舌打ちし始める。
「先輩に連絡する。これ以上の攻撃はないから、部屋から出るなよ! いいな(笑)」
わたしゃ言われた通り、白銀の部屋の真ん中で為す術もなく立ち尽くしていた。
白銀は颯爽と部屋から出て行く。
近所のカード電話を掛けに行ったのだろう。近隣の騒音の苦情が無いという事は、
白銀の言う通り、直接オツムに何らかの作用をさせる魔術と考えられる。
テレパシーとかも、こう聞こえて来るのだろうか。原理が解らないけど、霊感やら能力に優れる白銀とともに居れば、感化されてしまうのは有るだろう。
ラヂヲみたいだな。
ラヂヲ頭だな。
やがてウザい哄笑は、段階的に小さくなって、フェードアウトしていった。

10分も経たないうちに、白銀が戻る。
「収まったな。悪いな、結界張ってるから、あれ以上の現象は起きないし」
「…テレパシーなのか? あれは」
「…ああ、基本は祈祷も巫術も呪術も同じだよ。仏教だっていう悪魔払いがあるしよ。魔術も用途だから、白も黒も無いんだぜ」
まぁ、悪魔も神様も同じだって考えは割と解る。善悪二元論なんかで世界は納得出来ないし。
一神教だって、巧みに屈服させた多神教を取り込んだんだし。
やっていることは、仏でも四文字言葉の神様でも、慈悲深きあのカミサマでも同じ。
その方々を放埒に扱う連中に問題がある(笑)
それはSFでもオカルトでも同じ。
…おっと、話がずれた。
「お前は問題無かったのかよ、白銀」
「…誰だと思ってんだよ」
大胆不敵、傲岸不遜な笑いを笑いながら、
何をしてきたかを語る。
「団体は何処だか判らない。先輩も暇じゃあ無いからな。また来たら連絡しろだとさ」
また椅子に座り、余裕綽々で語り出す。
ただ、まだ息が荒い。
マジ何かやりに行ったんじゃないかね。
わざと聞かずに、話をその大先輩に移す。
探偵業で霊感が強い以外は聞けなかったが。どんだけ秘密が多いんだか。
白銀の彼女は寺の娘でかなり霊感は強い上に喧嘩が強いとか。
その前にいた彼女もあるが、それは今度。
で。
先程の騒ぎから三十分、また突然アレな女の哄笑がやってきた。
今度はチューニング無しだ。ラジカセを点けたらラヂヲが掛かったような、チャンネルが成立したんだな。
「ふん、また来たな」
やおら白銀立ち上がり、ニヤリとしながらすぐに階下に行く。
吾輩一人。
何よりも、この理不尽な狂女の哄笑は、恐怖よりは猛烈な怒りしか覚えなかった。
うぜぇ、消えろこの腐れ外道が!
口から怒号が出ていた。
まぁ、除霊方法も知らないし、修行もしとらんから、そのまんまだが。
目の前にそれがいたら、間違い無く何かやってたかも。
これは穿ち過ぎかも知れないが、怒りを促すヤバい魔術かも。
それで白銀が動くなと言ったのかも。
コワいな(笑)
若い頃だからこそ、わからん事もある。
後に呪怨観ても怒りまくっていた吾輩には貴重な体験ではある。
程なくして、哄笑が止んだ。
この静寂は厭だな。
オフコースの曲だなぁ。
白銀がトドメを差したんだと思っておく。
支離滅裂だが、彼が開口一番何を曰うか楽しみだな。

白銀が今は亡きサンチェーンなるコンビニ袋を携えて、数十分後に戻る。
「ヱビス買ってきたぞ! 呑むだろ?」

…おい、お前。
経緯はしっかり聞いてやるからな。

また後で。
今度とお化けがでる迄ね
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前回からの続きだ。

1987年お盆まえに二年前に有った話として聞いた。
この話の事件の年は1985年8月上旬で、丁度盆の前だった。白銀は私と同じ年齢だから、生きていれば48歳だが、かなり育ちは良いらしくて、東京都東部の南葛飾地区の区の不動産屋の長男だそうだ。これがまた髪ボサボサで長くて、無精髭生やしっ放しの巨漢であった。
怪談の他にも女性遍歴やら喧嘩の話もたくさん聞いたが、都市伝説まがいの話も聞かされたな(笑)

いきなり話されたのが、例の事故に関係のあるという話だ。
この前話した通り、彼等のグループは、探偵屋の扱えないぶっ飛んだ事案を扱う。
幾らかツッコミ所は有るだろうけど、
此処は色付きで話を受け入れよう。
ある家族から、失踪した双子の姉妹を探してくれと依頼が来た。
聞くところに依ると、家出するような子達ではないし、親子関係や大きなトラブルも、悪い噂も無かったそうだ。
誘拐という雰囲気でもないし、目撃情報も途中で途切れたように消えているのだそうだが。
警察は捜索願は受けたらしいが、グループの代表である探偵屋の娘さんがその依頼者の姉妹と知り合いで、仲も良いそうなので、依頼が来たらしい。
代表によると、その姉妹はヨリマシの能力が有るのを知っていて、その方面かも知れないと、メンバーを呼んだ。
ヨリマシと言うのは、神やら悪魔やら、霊を呼ぶ時の触媒役とか、イタコみたいな役らしい。
まぁ、付き合いがあった霊感の強いという代表さんなら、彼女達のそんなエピソードも聞いているだろうし。
朝松健の魔術ものでもあるまいに、そんな事があるのかと思うが、200年前のアメリカでさえ、魔女狩りがあったんだし、大日本帝国だって、太平洋戦争中に国内の宗教団体に命じて呪詛をやったんだ、完全に否定するもんでもない。
こう言う心性を軽視すると、人間がますますくだらなくなる。
話を戻す。
警察も動いているらしいが、手掛かりが無い。家族も、そんな能力なら共に暮らしているなら多少は感じている筈だ。
そうしないと話が進まないな(笑)
彼女達はそれぞれ別の大学に通っているらしくて、授業が終わりアルバイトの帰りまでの同僚達の目撃情報があると判っているそうで、それ以外は判らないと。
「それ、その代表さんが彼女達からなんか前から聞いてたとかじゃ無いのか?」
腑に落ちないからわたしゃ合いの手を入れるしかない。
「…まあ、そう言うことにしとくよ。秘密もかなりあるからさ」
…っておい(笑)
証拠を積み重ねる捜査では、このゴーストバスターズどもの出番は無いが、こう言う訳の判らない事件の時は、水を得たようだ。霊感ゼロのわたしゃ、感心して聞くしかない。
魔術的な儀式を行う事さえ能力が強いと判るとは聞いたことはあるが、余りに浮き世離れし過ぎてはいる。
連中はそんな能力に長じているか、財力があり、機動力があるそうだ。
白銀もニンジャだかカタナだか知らないが単車を使えるらしい。代表に群馬県と埼玉県の境の山に行くように指示されたそうで、グループで直ぐに飛んだそうだ。
どう拐かされたかまでは詳しくは見えないようだが、代表によると、何時も何かにつけ見られているような感じがするとか相談を受けていたと聞いたし、それは益々強くなっていると聞いていたとか。
詳しい経緯は白銀は守秘義務と言い教えてくれなかったが、そう言う怪しい結社は確かに存在して、誘拐をやることも有るんだとか。ここまで来ると、結末まで聞かないと気持ち悪い。
今でこそ悪趣味系のサブカル本でその手の話は枚挙に暇はないが、話がまるでミリオンのGON!の都市伝説みたいだな(笑)
場所は詳しくは聞けなかったが、群馬埼玉の山間の人里離れた場所へ代表の指示通り向かった。
遠隔で魔術的な儀式が判るなら、している方も力が強ければ判る筈なのでは?
「…ああ、あっちも急いで儀式をやろうとしているんだと」
と白銀。
ゴーストバスターズなんで、みなそれなりの神秘学の知識はある。
「…それって、あれかな?」
「ああ、あれだよ。呪詛だよ」
…書いていて背筋が寒くなったな(笑)

つまり、双子の女子大生たちは、依りましの能力の為に、拐かされたと言うことだ。
下手すると、生命の危機もあるから、バスターズは直ぐに急行した。

ここでフィクションなら禍々しくラヴクラフト風に書くべきなんだろうが、白銀はユルく話す。
現場に向かう時、怪しい車が何台かすれ違ったと。
ある場所で、まだ何人かが儀式らしいことをやっていたが、そこをバスターズが妨害をした。
白銀は急拵えの祭壇に、縛られてヨリマシだか生贄だかにされそうになった気を失った双子の姉妹を見た。
妨害された連中は、蜘蛛の子を散らすように逃亡したと。
他にも白銀達はとんでもないものを見ていた。
黒い山羊の姿の、何かだ。
怪しい結社の残党が逃げ出すと、それはどんどん薄くなって消えたそうだ。
あり得ねぇな。
その日が8月12日だったそうだ。
姉妹を救出して帰途、群馬県側の方がヤケに明るかったとか。マジかよ。

「…それって………」
「そうだよ。連中はあれに乗ってた誰かを殺そうとしたんだよ」
わたしゃあの時、フジテレビで浅香唯扮する一休さんを見ていた。急にテロップが出始めて日航機が行方不明とか出ていたな。1930時辺りだから、既にあの機は墜落していた筈だ。
未だに謎のある事件だし、この事故では恐ろしい話を見たり聞いたりしている。
拐かされた双子は無事保護されて、入院のあと無事に退院して普通に暮らしているそうだが、ヨリマシとかの能力は消えてしまったとか。また、拐かされた記憶が無いとか。
「……それ、ヤバすぎるだろ。危険無かったのか?」
「…まぁ、あるけども秘密だよ」
「…って、おい」
「馴れりゃ、平気さ。さあ、折角だから飯でも作ろうか、一休みだ(笑)」
不敵な笑みを浮かべながら、夜食代として持ってきた缶詰めとか米を品定めしながら、白銀はビラフの準備を始めようとする。部屋にはユルくCDプレイヤーでオフコースが掛かっていた。
腕が止まって、呟くように白銀が言う。「偶にはそう言うウザイのが来るよ。でも大したことはないよ。今夜辺りは何か来るかもな」
「…脅かすなよ、まったくもう」
クーラーもない木造アパートの四畳半の部屋で丑三つ時に確かにする話じゃないな。
白銀はニヤケて夜食の準備をする。
わたしゃ飲み物を買いに近隣のコンビニに向かう。
それは丁度日航機123便が御巣鷹山に墜落した日の二年後の朝だった。
私も話を全て信じた訳じゃないが、背筋が寒くなる話だった。
真夏日の夜だし、夜気は蒸し暑い…。
あれ?
白銀の部屋、扇風機だけだよな?
何で外の方が暑いんだよ。
…まぁ、気のせいかもなぁ。
白銀のよく言う、妖怪『気の精』
アホか(笑)
今は亡きサンチェーンなるコンビニで飲み物(念の為、アルコールではないよ)を購いながらクーラーで汗を引っ込めながら、白銀の部屋へ戻る。
白戸荘と言う名前のアパートなのだが、下は電気屋兼駄菓子屋の大家の物置部屋で、二階は白銀と谷川さんというイケメンしか住んでない小さな建物だ。
その夜は谷川さんは掛け持ちのバイトで不在。その建物には私と白銀しかいない。
元々白戸さんは本屋にいるから下には人はいない。
部屋にはオフコースが流れていたが、外からは聞こえない。
白銀の部屋に戻ると、仕込みの始めが終わり、机でロッドリングを弄ってイラストを描き始めていた。
やはり、部屋の気温は明らかに外より涼しい。
「…なんか、外より涼しいんだけど、冷房無いよな?」
「ないよ。こんな話してりゃ涼しくなるだろ(笑)」
白銀はオカルトやってるくせに底抜けに明るい。
「…だって、猫男、怖い話聞きたいんだろ? まだまだネタは沢山あるんだぜ」
と言いつつやおら白銀が振り向き加えて言うのだが。
「横にいる女の子、誰?」
目が点になる。
「…」
また白銀はチェシャ猫みたいにニヤリ笑って「あ、ゴメンゴメン。何か関係のある霊さんだ(笑)」
この調子だ。
この話も後日談があるが、後の話に回す。
「勘弁してくれよ」
「いわゆる守護霊だよ。結界張ってるから変なのは来ないよ」
おいおいおい(笑)
「さっきの話、後日談は他にも有るのか?」
「ああ、まだ続いてるよ」
「どうせ、依頼人の守秘義務とかじゃないのか?」
「まぁ、そんな急かすなよ。一応話して良いかどうか代表に聞いて、ヤバく無いのを話してるんだから」
「マジヤバすぎねぇか」
「大丈夫、大丈夫(笑)」
そして、次の話を始めようとする。
暑さを感じないほど、部屋の温度が下がったような気がした。
まだまだ始まりに過ぎないのだ。


続く。
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