地球で過ごす日々の中の「ドキドキムンクの叫び」や、「ワクワクドキドキ」や、「キラキラキラキラ」を書いてゆけたら、 幸せです。

 

 

「永訣(えいけつ)の朝」の詩を、何度も何度も、声に出して朗読していたら、本当に雪が降ってしまった…。

 

 

あめゆじゅだよ、あめゆじゅ。とてちて、はんにゃづきだよ。

 

これはもう、雪を取りに行くしかないね、松の木の枝から。ついでに、二つのご飯茶わんも持って行こうね。雪を盛ったら、松の葉も差しちゃうよ。

 

 

♪ はんにゃづき ♪ の 今日はどんな日?

 

 

          実家の庭で。茶碗をふたつ、並べてみた。

          欠けていないけど。

          じゅんさいの模様は、ないけど。

          白いけど。

          これはこれで、良し。  


 

♪ はんにゃづき ♪ の 今日はどんな日?

          本当に真っ白。どこをとっても、白くてきれいだよ。

 

 

同日、賢治によって書かれた「松の針」という詩にも、松の葉が出て来る。

 

あつい頬に、松の葉をあてたトシが

(ああいい さっぱりした

まるで林のながさ来たよだ)

ああいい さっぱりした

まるで 林の中に来たようだ

と言っている。


そして、もう一つ、「無声慟哭(むせいどうこく)」という計三篇の詩をもって、しばらくの間、賢治の詩作の筆は止まる。
 

♪ はんにゃづき ♪ の 今日はどんな日?
多分、真っ白い雪の世界に、仏の世界を見たのではないかな。
これを食べて安心して仏様の所へお逝きと。        

 

 

 

 

「永訣(えいけつ)の朝」 (続き)

 

あぁあのとざされた病室の
くらいびょうぶやかやのなかに
やさしくあおじろく燃えている
わたくしのけなげないもうとよ
この雪はどこをえらぼうにも
あんまりどこもまっしろなのだ
あんなおそろしいみだれたそらから
このうつくしい雪がきたのだ
   (うまれでくるたて
    こんどはこたにわりゃのごとばかりで
    くるしまなぁよにうまれてくる)

 

 

(また、生まれて来る時は、今度は、こんなに自分の事ばかりで、苦しまないように、生まれて来る)

 

臨終の間際、父・政次郎は、病気ばかりしてきた娘を、はかなんで、

「今度、生まれて来る時には、人間になど、生まれて来るんじゃないぞ」

と言った。それに対して、トシが答えた言葉。

 

 

 

自分の為にではなく、人の為に苦しむ人間に生まれて来たい…という、このけなげな妹の為に、賢治は祈らずには、いられなくなる。

 

 

おまえがたべるこのふたわんのゆきに
わたくしはいまこころからいのる
どうかこれが兜率(とそつ)の天の食に変って
やがてはおまえとみんなとに
聖い資糧をもたらすことを
わたくしのすべてのさいわいをかけてねがう

 

二椀の雪は、トシとみんなに恵みがあるようにと、賢治も、トシの遺志を継ぐべく、自分のすべての幸いを賭けて、祈る。

 

今、読みながら、気がついたのだが、トシの死をもって、賢治はすでに、死んでいたのではないか。

 

 

そう思うと、風の中に又三郎を見(幻覚?)、夜空に銀河鉄道の響きを聴く(幻聴?)。肉体は生き続けていたが、精神は死んでいたのではないか。その後、賢治が書き続ける童話は、死者の目線のようにも、受け取られる。

 

 

 

 

♪ はんにゃづき ♪ の 今日はどんな日?



 

ベル今日の あめゆじゅとてちてはんにゃづき度 100P