うっちーこと宇都宮芳綱です

元ネタはこの時の大助さんとの戦いです

それではど~ぞ

極・勝永の視線は出撃した部隊に注がれていた。
「彼らのために我らが残ることになるとは、馬鹿げていますな」
声の主に視線を向けると細川忠興が立っていた。
端正な顔をした美丈夫であるが、目つきが鋭くその視線は冷ややかだった。
「仕方あるまい。大助氏は引退するというのだ。彼らにとってこれが最後の戦いになるかもしれないのだからな」
そう言うと極・勝永は視線を出撃した部隊の方に戻した。
話は出撃前に遡る。
勝永のそばに鶴姫が近付いて来た。
「いよいよね」
「あぁ」
今期初の出撃であると同時に、おそらくこれが最後の出撃になるという思いに、勝永の緊張感はピークに達していた。
「お前たちに感謝しないとな。お陰でわしも出撃出来る」
そう言いながら忠次が近付いて来た。
「今度こそスキルが発動するといいですね(笑)」
鶴姫はいつものように忠次を茶化した。
「そうだな。次はいつ出撃出来るか分からんし、発動して欲しいものだ・・・」
忠次から怒声を浴びせられると覚悟をしていた鶴姫は拍子抜けしてしまった。
実際、弓攻部隊だけでなく槍攻部隊でも、コスト3.5以上の者で構成出来る状態であるため、極とはいえコスト3の忠次の出番はなくなっていたのだ。
沈黙が支配する中、出撃の合図が届き、それぞれ持ち場に着いた後、大助氏の陣に向けて出撃した。
勝永は前回から何も強化されていない自分がもどかしかった。
だが、大助氏のため、自分のため、持てる力を出し切って戦うつもりでいた。
大助氏の陣容は槍馬、そして弓の代わりに焙烙だということが判明した刹那、両軍は苛烈なる戦闘状態に突入した。
勝永は死力を尽くして戦った。
スキルも発動した。
それは皆も同じだった。
だが、味方は次第に劣勢に追い込まれていった。
そんな中、勝永の前面に一人の眉目秀麗な武将が現れた。
「毛利勝永殿とお見受けいたす。我が名は真田大助。いざ、尋常に勝負!」
「ほぉ、大助氏の寵愛篤い人物とは貴殿であったか。相手にとって不足はない。いくぞ!」
言い終わるや否や激しい打ち合いが始まった。
斬撃を打ち込み、逆に受け止め、あるいは払い、10合20合と戦い続けた。
「勝永!」
名を呼ばれた勝永は大助から距離を取り振り返った。
そこには切羽詰まった表情の鶴姫が独りでおり、それによって一兵残らず全滅した事、そして撤退が発令されたことが分かった。
「我らの負けだ。さらばだ!」
そう言って立ち去ろうとした勝永を真田大助は呼び止めた。
「感謝する。貴殿のお陰で最後に戦うことが出来た」
大助の顔には満足な笑みが浮かんでいた。
「それがしも貴殿が最後の相手で良かった」
そう応えると勝永はその場を後にした。
二人が連れ立って歩いていると前方に忠次がいた。
「お主らは今回も全滅か。まあそういうわしも危うくそうなる所だったがな」
「酒井様、嬉しそうですね。スキルが発動したからですか?」
確かに忠次の顔は晴々としていた。
「やっぱり戦いは良いな。戦ってこその我らだ!」
「・・・」
勝永は何も言わなかった。
言う必要もないほど当たり前のことだったからだ。
しばらく行くと前方に極・勝永が立っていた。
「存分に戦ったか?」
「戦いました。やはり大助氏は強かったです・・・」
「そうか」
そう言うと極・勝永はその場から立ち去った。
見送る勝永の顔を見た鶴姫はハッとした。
そこには全てをやり遂げた者が見せる穏やかな表情が浮かんでいたからだった。
かつて鶴姫はそのような顔をした者を幾人もスロット2に見送って来た。
勝永も同じ運命をたどるのであろうか。
鶴姫は身動きせず、勝永の顔を見続けていたのだった。
- 完 -
追記です


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