選挙制度②

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前回選挙制度に触れた日の朝刊に「衆議院選挙制度に関する調査会」が、年明けから小選挙区の1票の格差の是正に向けての改革案作りに着手するとの記事が出てました。


選挙制度マニアという珍しい元議員としてはかなり注目の記事です。


記事によれば区割り計算に関して「最大剰余式」から「ドント方式」なども検討するとのこと。


待て待て!


現行の区割りは「最大剰余式」ではないような・・・


そもそも1票の格差の是正に向けた直近の動きは2013年の通常国会にて法制化された「0増5減」でした。 


山梨、福井、徳島、高知、佐賀の5県で選挙区が3から2に減り、17都県の42選挙区で区割りが変更されることにより、最高裁が違憲状態と判断した平成21年衆院選の「1票の格差」は最大で2倍未満に縮小し、違憲状態を解消したことになっていました。

※衆議院議員選挙区画定審議会設置法(画定審)というものが存在します。画定審は必要に応じ て衆議院の区割りに関する調査とその結果を内閣総理大臣に通達するという審議会で、今日のように1票の格差が問題となる場合においては、国勢調査の人口に基づいて区割りの変更等を審議する、法律上担保された審議会です。



出前の「0増5減」に話を戻しますと、これは緊急是正であり、抜本的な改正でないのです。

 

っというのも区割りの改定に正式な計算方式がない。

 

94年の小選挙区制導入時の計算方式は「1人別枠方式」でした。

これが格差の温床になってしまっていることはだれしもが認めるところで、条文上は削除されていますが、いまもってこの計算方式を基に、0増5減を若干無理に行ったという状況です。

そもそも「1人別枠方式」とは「各都道府県+最大剰余式」で算出します。


ですので、事前に最大剰余式の説明が必要です。

最大剰余式とは、まず議員一人当たり人口をもとめ、それによって各地域の人口を割る。その計算結果の整数の部分と小数点以下の部分とに分け、それぞれを議席配分に用いる。まず整数についてはその数をそのまま配分する。残議席については、小数点以下の数値が大きい順に各地域に配分するっという方式。

つまり日本の総人口÷小選挙区議席数=がπになり、各県人口÷πにより各県の定数を確定します。


1億2707万÷295=が議員一人当たりの人口になりますから、約43万が議員一人当たりの人口となります。


私の静岡県ですと県内総人口3697651÷430000=8.59となり定数は8。

8以下の分数は後程の残数議席分配で重要になります。

このように各県を計算し、議席を確定していきますが、295全てが埋まらず残数が出ますので、残数は分数が多いところに分配していきます。

これで計算すると小数点以下の59により、静岡県は9議席となります。


このように各県で確定した議席を県内の中で、画定審法3条に基づき、生活権や行政権、交通などなを考慮し、なるべく人口差が出ないように、県内の区割りを確定していきます。


学説上の議席分配方式としては格差是正に値する区割りが可能となります。


これでいけば最大人口の東京都は31区、最少人口の鳥取は1区です。 


しかし現在は東京は25区しかなく、鳥取は2区まであります。

ここまできて初めて1人別枠方式の説明に入れます。


1人別枠方式とは1+最大剰余式ですから、まず47都道府県に1議席づつ割り当ててから、残りの議席を計算していくので、議員一人あたりのπが43万にも関わらず、定数2に必要な86万人口以下の県でも、事前に+1がありますので議席数が2となってしまいます。つまりそういった県の議員1人あたりの人口が43万よりはるかに下回りますから、そこが最少となり人口が多い地域との格差が2倍を超えてくるといことです。


0増5減は緊急是正ということで、02年の区割り改定時、1人別枠方式で算出した区割りに基づき、11年の国勢調査の人口を基準に5減と同時に、人口が多い選挙区の端のほうを隣の選挙区に付けた感じです。これによって格差は最高裁が違憲とする2倍未満となりましたが、現在の住民基本台帳の人口では2倍超の選挙区が存在します。 


また今年は国勢調査がありますので2倍超の選挙区が正式に出てきてしまう見込みです。


よって冒頭の1票の格差是正の取りまとめ案という話になるわけです。 


ついでに今回検討されるドント式ですが・・・

ドント式とは日本の比例代表制で各政党への議席配分にも用いている方式です。

 

各地域の人口を1、2、3・・・と自然数で除していき、その商の大きい順に議席を分配していく方式。計算例は表で示さなければなりませんので割愛しますが、やはり鳥取は1区で東京は30前後となるはずです。


このように格差是正のための学説的担保がある数式があるわけですが、なかなかそうならない。


そもそも1票の格差の議論は憲法上の平等の概念からくるわけですが、とはいえ大都市の議員が増えて、人口が少ない県の議員定数が1になるということにも疑念が残るからです。

こういったことも考慮し94年の小選挙区制導入時には1人別枠方式となった経緯もあります。 

なかなか政治的には悩ましい問題となるわけです。

しかし憲法に抵触する事柄ですから、格差は是正しなければなりませんし、人口に基づかなくてよい議員定数のあり方を求めていくには、憲法改正を行う必要があります。


そこで比例代表ということにも注目をしなければなりません。「比例代表はいらない」という主張もありますが、比例代表制は小選挙区制度の問題となる死票(落選者に投票され意思が反映されない票)を担保する意味もありますし、学術上の計算割りだした区割りにより、人口が少ない県の少数の民意の担保ともなりえるでしょう。 


また画定審法のなかに計算方式を律として明記することも検討の余地ありです。


長くなりましたが・・・ 


最近では直近の選挙に関して

「小選挙区比例並立方式では少ない投票数で、多くの議席を獲得してしまうのは問題だ!」

「とにかく定数を減らせ!」

などの議論があります。 


しかしですよ・・・

政治家たるもの単なるポピュリズムでそれを語るのどうなんでしょうね?


たしかに民意反映のフラストレーションに触れたり、定数減ありきの議論は雰囲気で有権者うけはいいんでしょう。


しかし格差是正を行うだけでも上記したような計算や様々な問題がでてくるわけです。


極端な話ですが、小選挙区議員定数を半分にしたのなら、最大剰余の議員一人あたりの人口は約86万人となります。つまり鳥取県と島根県の合区で初めて1議席です。


これで民意が反映できるかも議論をしなければ、減らすにせよ増やすにせよ本質的な議論にはなりません。


「とにかく定数削減だ!」


という議員さんには


「削減時に民意をより反映するための区割り計算方式は?」


と聞いてみるべきですね。

 

長くなりましたが

選挙制度は政策のなかの政策です。

経済政策にしても社会保障政策にしても、様々な課題に着目して有権者が候補者や政党を選択する際に、より強くかつ平等に民意が反映されることを目指すのが選挙制度政策ですからね。

衆議院のなかにも「政治倫理の確立および選挙制度改正に関する特別委員会」が設置されてます。

私も所属していた委員会ですので、かならず復帰を目指します!

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