1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>

33.≪第3シリーズ≫ 第13話 尻毛の長右衛門

2015年08月22日(土) 02時13分55秒 テーマ:鬼平犯科帳

布目の半太郎は、

   恋と忠義心との板ばさみとなりーーー


 尻毛に長右衛門一味の連絡(つなぎ)役・布目の半太郎と引き込み女のおすみは恋仲で、今度のお盗めが終わったら世帯を持つと、堅い約束をかわしていた。しかし、半太郎が2人の仲を長右衛門に許してもらおうとしたまさにその時、おすみを女房にしたいと、長右衛門が半太郎に切り出した。恋と頭目(おかしら)への忠義心との間で板ばさみとなってしまった半太郎は、すべてを捨てて江戸を出奔しようとしたところを、不運にも無礼討ちに遭い、命を落としてしまう。ひとり残されたおすみはーーー。



本格の流儀~「鬼平」の大盗たち


「鬼平」に欠かせない盗賊たち


 「『鬼平犯科帳』に欠かせない登場人物といえば?」と聞かれたら、何と答えるだろうか。


 主役の長谷川平蔵はもちろん、久栄、火付盗賊改方の与力や同心ら、彦十やおまさといった密偵、平蔵を取り巻く友人達・・・・・。数え上げればきりがないが、絶対に忘れてはいけない存在がある。それが盗賊だ。


 「鬼平」シリーズに登場する盗賊たちは、殺生をいとわない畜生ばたらきの兇賊と、本格の盗賊とに大別される。


 本格の盗賊とは、

1,盗まれて難儀をする者には手を出さぬこと

2,人を殺生せぬこと

3,女を手込めにせぬこと

の「盗(つと)めの掟3ヶ条」を守る盗賊達のことだ。


 ちなみに、この掟は原作者・池波正太郎の創作。生前、池波には、もと泥棒ながら一度も捕まることなく隠居したという知り合いがいて、その人物から聞いた話が掟のヒントになっているのだとか。



本格派の特徴とは?


 本格の盗賊達といえば、「鬼平」ファンなら、簑火の喜之助、夜兎の角右衛門、初代・狐火勇五郎らの大盗をすぐに思い浮かべるに違いない。彼らに代表される本格の盗賊達には、いくつかの特徴がある。


 そのひとつが、準備に費やす時間の長さだ。盗みに入った先での殺傷沙汰を避けるために、引き込みを潜入させ、屋敷内の図面を起こし、蔵の錠前の型をとるなどの準備を周到に行う。実行に至るまで、2~3年かけるのは当たり前だった。


 また、それほどの手間をかけながら、本作の尻毛の長右衛門や、第1シリーズ第18話「浅草・御厩(おうまや)河岸」の海老坂の与兵衛のように、事前にトラブルが起きたら、実行はきっぱりあきらめることも。費やした歳月や金銭を惜しんで強引に盗みを行えば、負傷者や死亡者を出してしまわないとも限らない。それよりは、盗みをきっぱり断念して、盗めの掟を優先させるほうを選ぶ。この余裕こそが、本格の本格たるゆえんだろう。



現場に残す”本格”の自負


 盗めをした記念とばかりに、”お土産”を残すような洒脱な行いをする者も、本格派の盗賊に多い。


 第4シリーズ第3話「盗賊婚礼」の一文字の弥太郎はその好例。弥太郎は、彦十が「急ぎばたらきの奴らに見習わせたい」というほどの本格派で、「一文字」の千社札を現場に残すのがお約束だった。


 第2シリーズ第8話「雨引(あまびき)の文五郎」の雨引の文五郎に至っては、押し入った先に名札を残すだけでは飽き足らず、平蔵宛てに、自分の人相書き付きの挨拶文を送りつける豪胆ぶり。


 人を食った振る舞いとも、”粋”な演出ともいえるが、いずれにせよ、現場に証拠を残せば、追補されるリスクは高まる。それを承知のうえで、あえて危険な橋を渡るのは、自分の仕事にプライドを持っているからこそ。”お土産”には、本格としての自負が込められているというわけだ。



土壇場に見る本格派の美学


 真のお盗めを全うする者たちは、時として平蔵をもうならせる。


 例えば、第1シリーズ第14話「あきれた奴」の鹿留(しかどめ)の又八の場合。又八は、一度は捕縛されたものの、火盗改メ同心・岡村啓次郎の計(はか)らいで逃亡する。そのまま姿をくらませることもできたが、又八はそうはしなかった。半年ほどかけて、同じく逃亡中だった相棒を捕らえて役宅に出頭。盗人でありながら、岡村の信頼に応えるべく律儀に戻ってきた又八に、さしもの平蔵も感じ入った様子を見せた。


 本作の長右衛門の往生際も、特筆に値する。逃げられないと悟った瞬間、手下に「お縄を受けようじゃないか」と促(うなが)して両腕を差し出した態度は、「本格盗賊たるもの、いざという時も人を決して殺めず、潔くあるべき」という美学の表れ。最後まで悪あがきをし、平蔵に手向かう兇賊たちとは対照的な長右衛門の振る舞いに、平蔵も思わず「さすがは尻毛の長右衛門」と賞賛したほどだ。



平蔵も認める本格盗賊


 盗みは犯罪であり、”悪”であることは自明だ。それを肝に銘じつつも、本格の盗賊たちは、”本格である”ことに確固たる誇りを持ち、「盗めの掟3ヶ条」を守り抜いた。


 しかしながら、こうした本格派の流儀は「割に合わない」「時勢遅れ」と否定され、流血もやむなしとする兇賊が主流となっていく。時には、本格の盗賊が、兇賊と化した手下や仲間の裏切りに遭い、悲惨な最期を迎えることも・・・・・。


 だからこそ、”いまどき珍しい”本格派盗賊は、平蔵をして「あっぱれ」と言わしめ、「鬼平」ファンの心を惹きつけて止まない。彼らの見事な手腕にうなるのも、「鬼平」の楽しみ方のひとつだろう。



平蔵もうなった 子分思いの大物盗賊


尻毛の長右衛門役・・・小林昭二

 1930年、東京都出身。舞台を経て、犯罪捜査物「殺人容疑者」で映画デビュー。テレビ作品や日活アクション映画の悪役を通じて頭角を現し、「ウルトラマン」(66年)のムラマツ隊長役、「仮面ライダー」(71年)シリーズの立花藤兵衛役でブレイク。また、横溝正史シリーズでは、市川崑監督の信任を得て、重要な役どころで連続起用された。96年、肺がんで鬼籍に入った。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(14) 第2話「尻毛の長右衛門」


おまさの女心がにじむ ラストシーンは必読

 

 ドラマのラストシーンで、久栄は「若い女には、誰にでもおすみのような激しさがある。ただ、それを表に出すかどうかは人それぞれ」と語っているが、このせりふは、原作ではおまさの発言となっている。原作のおまさは、平蔵に若い女の胸の内を説明したあと、目をきらりと光らせ、平蔵に熱い視線を送る。少女の頃から平蔵を慕い続けながら、思いを打ち明けることなく秘めてきたおまさ。その女心を巧みに描写した名場面だ。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 33-


AD

32.≪第3シリーズ≫ 第12話 隠居金七百両

2015年07月07日(火) 02時01分19秒 テーマ:鬼平犯科帳

辰藏が惚れたのは、


もと盗賊の父親をもつお順だった


 平蔵の息子・辰藏が惚れたのは雑司ヶ谷・鬼子母神参道の茶店の娘・お順。ところがお順の父親は、かつて白峰一味の首領・太四郎の片腕と呼ばれた盗賊・堀切の次郎助(じろすけ)だった。ある日次郎助の店に太四郎の使い・薬師の半平がやってきて、七百両の隠居金を預かってほしいと言い出した。その金を狙って太四郎の子分・奈良山の与市が、次郎助の近辺をうろつき始める。白を切りとおす次郎助だったが、与市はとうとう、お順をかどわかしてーーー。



古地図でたどる雑司ヶ谷


辰造と弥太郎、地元の遊び場


 平蔵の嫡男・辰蔵が茶店の娘に惚れたことから、盗賊同士の争い事へと思わぬ展開を見せる「隠居金七百両」。物語の主な舞台となる雑司ヶ谷は、現在の豊島区雑司が谷に相当する。当時は江戸市中の西郊、豊島郡・野方領内の村で、古くは「蔵主ヶ谷」「僧司ヶ谷」「曹司ヶ谷」とも表記された。その名の通り、山に囲まれた谷あいの地域で、護国寺の広大な敷地をはじめ緑豊かな田園地帯だ。辰蔵が暮らす長谷川平蔵私邸の北西に位置し、すぐ隣には

”悪友だち”阿部弥太郎が住む高田四屋町(現・豊島区高田)がある。



150707_2154~01.jpg
①隠居金の隠し場所

助次郎は鬼子母神の本堂の下に隠居金を隠す。

②茶店「笹や」

山椒味噌(さんしょうみそ)の焼団子が名物。


 古地図①の鬼子母神は次郎助が隠居金を隠したところ。護国寺と並ぶ当地の名所だ。特に10月の御会式は盛大に行われ、多くの参詣者が集まった。安産と保育の神様であるため、辰蔵のような独身青年の興味をひくとも思えないが、屋敷が近いこともあり、散歩がてらにしばしば立ち寄っていたのだろうか。


 ②は次郎助と娘・お順が営む茶店「笹や」。鬼子母神の参道にある。人出の多い場所だけに、茶店を経営するには大変都合の良い立地条件といえるだろう。さもなくば次郎助親子の無愛想を絵に描いたような接客ぶりでは、とても商売にならなかったのではないか。



150707_2152~01.jpg

③南蔵院

かどわかされたお順を追う辰蔵だが・・・・・。


 ③の南蔵院は、お順が盗賊・奈良山の与市たちにかどわかされ、監禁される寺院。鬼子母神から南へ10分ほど歩いた場所にある。


 かどわかされる直前、赤い着物のお順が橋を渡って行く姿を下方から捉えた印象的なシーンが登場する。原作によるとこの橋は、江戸川(現・神田川)に架かる姿見橋。その名も美しい姿見橋の正体には2説あり、現在の面影橋と同じ橋を指しているのだとも、それとは別の橋だったともいわれている。いずれにせよ、橋がコンクリート製となった現在、当時の”面影”は残っていない。


 さて、辰蔵の恋の行方と隠居金を巡るサスペンスのほか、口は悪いが根は友達思いの弥太郎というキャラクターも、本作の大きな魅力だ。



150707_2153~01.jpg
④音羽9丁目の岡場所

辰蔵と弥太郎をなじみの遊女たちが大歓迎。


 弥太郎は辰蔵と同じ市ヶ谷の坪井道場に通う剣術仲間。旗本の次男坊である彼が辰蔵に色恋の手ほどきを授けた行きつけの色街が④音羽9丁目の岡場所だ。ここは護国寺の門前町で、奥女中・音羽の拝領地であったことからその名がついた。当時は有名な岡場所で大変な賑わいを見せたが、天明7年(1787)、松平定信による寛政の改革で、取り払われてしまった。現在の文京区音羽は護国寺に向かう坂道に沿ってビルが並んだ、オフィス街となっている。





隠居金を守り通そうとする 昔気質のもと盗賊


堀切の次郎助役・・・芦屋雁之助

 1931年、京都府出身。18歳の時、父親のもとで芸人としてデビュー。漫才師を経て、作家・花登こばこのもとで喜劇俳優となる。その後、テレビ、映画にも進出し、公開コメディ番組「番頭はんと丁稚どん」(59年)で爆発的人気を得、「裸の大将放浪記」(80年)で国民的喜劇役者となった。日本の演芸界の重鎮であったが、04年心不全のため鬼籍に入った。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(7) 第2話「隠居金七百両」


辰藏の悪友だちで無二の親友 

              阿部弥太郎が大活躍?

 

 誘拐犯に逆襲された辰藏が、通りかかった酒井同心に危ういところを助けられ、「それでも長官の倅か」と叱責されるドラマの場面。原作では阿部弥太郎が犯人に斬りつけられ、それを知って駆けつけた平蔵に救われる。辰藏より剣術が弱い弥太郎はほとんど失神状態で、あきれた平蔵に頭をポカリとやられる羽目に。

 

 一方、ドラマでは奈良山の与市と死闘を演じる次郎助だが、原作では腸捻転であっけなく急死してしまう。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 32- 








AD

32.≪第3シリーズ≫ 第11話 夜鷹殺し

2015年06月19日(金) 17時44分24秒 テーマ:鬼平犯科帳

江戸の夜を荒らす夜鷹殺し 

        おまさはおとりとなるがーーー


 夜鷹を狙う連続殺人事件が発生した。犠牲者のひとりは密偵・彦十の知人、かざぐるまのおつねだった。夜鷹を蔑む町奉行所に業を煮やした彦十の気持ちを汲み、平蔵が犯人究明に乗り出す。早速、おまさをおとりにして夜鷹殺しを追跡する捜査が開始されたが、なかなか犯人は現れなかった。ところが平蔵不在のある日、彦十とおまさが夜鷹殺しに遭遇、おまさは刀傷を負ってしまう。その後、彦十が追跡に成功、犯人が入っていったのは、ある旗本屋敷だった。




平蔵のむかしなじみ 相模の彦十


人間味あふれる性格が魅力


 盗賊どもに”鬼”と恐れられる火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を、「銕つぁん」呼ばわりできる唯一の密偵。それが、相模の彦十だ。


 原作によると、本作の「夜鷹殺し」事件が起きた時、彦十は56歳。殺害された夜鷹・おつねの悪口を言う御用聞きに、後先考えずに食ってかかったり、夜鷹殺しに斬られたおまさを心配するあまり、肝心の尾行ができなかったり・・・・・。


 年甲斐もない振る舞いも時にはあるが、そうした点も含めて、情が厚く、人間味あふれる性格は実に魅力的。「鬼平」シリーズになくてはならない密偵のひとりだろう。


 彦十はもともと、本所界隈の岡場所を根城にする香具師(やし)だった。香具師は「テキ屋」とも呼ばれ、縁日などの人が集まる場所に露店を出して、さまざまな物を売るのが主な仕事。路上で商いをする際、独特の口上で商品の説明をするのが香具師の習わしだったから、彦十の達者な口は、この時の経験によって鍛えられたのかもしれない。


 また、ながれ盗めの盗人として、江戸はもとより、上方や地方でも活動していたようだ。ながれ盗めとは、いわばフリーランスの盗人。特定の盗賊一味に属することなく、諸方の盗賊の依頼を受けて働くため、自然と顔は広くなる。ゆえに、彦十のネットワークの広さはかなりなもの。彦十が顔なじみの盗賊に会ったのがきっかけで始まる事件が多いのも、当然といえる。




平蔵 むかしなじみ


 平蔵との付き合いの長さも、彦十を語るうえで欠かせないポイントだ。彦十は、平蔵が銕三郎の名前で放蕩の限りを尽くし、「本所の銕」などと呼ばれていた頃の取り巻きのひとり。第1シリーズ第2話「本所・櫻屋敷」で平蔵と二十数年ぶりに再会し、平蔵が火盗改メ長官だと知ると、すぐさま密偵になる決意をする。


 もちろん、密偵が盗賊から”狗(いぬ)”と軽蔑され、危険な目に遭う可能性も高い役目であることは、彦十も十分承知している。それでも「銕つぁんの役に立てるなら、ひからびた命なんて惜しくはない」と、心に決める。自分よりも年下で、そのうえ長い間会っていなかった相手にこれほど入れ込めるのは、彦十が若い頃の平蔵に、人として、男として、惚れ抜いていたからだろう。


 平蔵にとっても、彦十が特別な存在であることはいうまでもない。第2シリーズ第15話「密告」で、盗賊・伏屋の紋蔵の顔に見覚えがあると思った平蔵が、すぐに彦十に顔を改めさせていることからもわかるように、過去の自分を知り、共通の知人も多い彦十は、ひときわ頼りになる”相棒”なのだ。


 そんな彦十を相手に「爺つぁん」「銕つぁん」と呼び合っていると、平蔵もつい、むかしの自分に逆戻り。若かりし頃を彷彿(ほうふつ)とさせる伝法な言葉遣いや、火盗改メ長官という公の顔とは違うやんちゃな表情がぽろりと出てしまう。こうした2人のやりとりを、楽しみにしているファンも多いのではないだろうか。




江戸の夜を跋扈(ばっこ)する 夜鷹狙いの辻斬り


川田長兵衛役・・・中野誠也

 1939年、千葉県出身。大学中退後、劇団俳優座で初舞台。60年代前半から、テレビ、映画にも活動の場を広げ、教師、軍人、歌人と、さまざまな役柄を演じる。70年代以降は時代劇や刑事ドラマの悪役を多く演じてきた。2001年度、読売演劇大賞優秀男優賞を受賞した日本演劇界のひとり。演出もこなし、2012年には大作「カラマーゾフの兄弟」を手掛ける予定。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(4) 第8話「夜鷹殺し」


人の心の闇を見つめる 平蔵の言葉が響く一篇

 

 ドラマ、原作ともに、配役もストーリーもほぼ同じ。ただ、川田長兵衛の夜鷹の殺し方は、陰部が刀でえぐられたり、指や鼻が切り落とされたりと、原作のほうがぐっと陰惨な方法で描かれている。それだけに、普段は律儀でまじめだった川田の心の闇が際立ち、「人のこころの底には、なにが、ひそんでいるか、知れたものではない(原作より)」と語る平蔵の言葉も重く響く。ちなみに、同心・木村忠吾が夜鷹に扮したおまさを買おうとするくだりは、ドラマ独自の粋な演出だ。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 32-


AD

31.≪第3シリーズ≫ 第10話 網虫のお吉

2015年05月04日(月) 16時15分03秒 テーマ:鬼平犯科帳

網虫のお吉にがんじがらめにされた

         同心・黒沢勝之助はーーー


 同心・木村忠吾は、初午(はつうま)の日の市中見廻りの最中に、手配中の女賊・網虫のお吉を目撃した。あまりのいい女ぶりに惹かれた忠吾はふらふらとお吉のあとを追い、同僚の同心・黒沢勝之助との密会を知ってしまう。


 その後の探索で、黒沢は苅野の九平一味を探るため、お吉を抱き、金を巻き上げていたことがわかった。お吉はかつての苅野の九平の手下で毒婦と呼ばれていたが、今では足を洗い、琴師・歌村清三郎の女房におさまっていた。





江戸が真っ赤に染まった初午


赤いのぼりを立てて 初午を祝った稲荷社


 同心・木村忠吾が、市中見廻りの最中に、手配中の女賊・網虫のお吉を見かけたのは、初午の日で賑わう烏森(からすもり)神社(現・東京都港区新橋)の境内。初午(はつうま)は、2月の最初の午の日に、全国各地の稲荷神社で行われる(ただし、当時は旧暦)。


 稲荷神は商売繁盛、五穀豊穣の神として古くから信仰されていたが、邸内に稲荷をまつっていた田沼意次が老中に出世したことで、開運の神としても信仰を集めた。


「江戸に多きもの、伊勢屋、稲荷に犬の糞」と俗にいわれるほど江戸には稲荷社が多かった。稲荷といえば赤い鳥居がシンボルで、さらに初午の日にはどの稲荷社も「奉納正一位稲荷大明神」と染め抜いた赤いのぼりを立てたため、初午の日は、江戸が真っ赤に染まったという。






男をからめとる 蜘蛛のような女賊


網虫のお吉役・・・風祭(かざまつり)ゆき


 1953年、東京都出身。新藤兼人(かねと)監督作「竹山ひとり旅」(77年)で映画デビュー。その後、にっかつ作品「赤い通り雨」で主演、ロマンポルノの黄金時代を支えた。このキャリアは風祭の演技力を伸ばし、一般映画やドラマにも数多く出演。演技派の呼び声も高い。03年の「キル・ビル」出演は、Q.タランティーノ監督からの、たってのオファーだった。


ー鬼平犯科帳DVDコレクション31  原作16巻 第2話「網虫のお吉ー






原作を読む!


150510_0144~01.jpg
 

鬼平犯科帳(16) 第2話「網虫のお吉」



女に溺れた同心に 非情な結末を与える原作

 

 網虫とは蜘蛛の別名。だが、原作では、お吉は男好きする肌を持った女とされているだけで、網虫と呼ばれるにふさわしい逸話は出てこない。その点、ドラマでは蜘蛛のような女=毒婦とする逸話がふんだんに盛り込まれている。

 

 ドラマでは平蔵は同心・黒沢に情けをかけ、浪人に斬り倒されるままにし、殉職扱いとする。だが、原作では「黒沢には情けをかけるものは何ひとつなかった」とし、浪人ともども召し捕ったうえ、黒沢には切腹を命じる厳しい裁きを行う。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 31-


31.≪第3シリーズ≫ 第9話 雨隠れの鶴吉

2015年04月10日(金) 02時43分03秒 テーマ:鬼平犯科帳

雨隠れの鶴吉は疎遠だった

             父・源右衛門宅に招かれーーー


上方の盗賊・釜抜きの精兵衛一味の引き込み役・




標高725m~箱根の関所


”出女”の調べの厳しさは全国一


 稲荷(とうが)の百蔵の手の者が見張っているのを知りつつも、雨隠れの鶴吉とその妻・お民は、箱根の関所の門をくぐって大坂へと戻っていく・・・・・。





12年ぶりに江戸に 帰ってきた盗賊

雨隠れの鶴吉役・・・石原良純

 1962年、神奈川県出身。叔父は石原裕次郎。その縁もあって芸能界入りし、デビュー作の映画「凶弾」(82年)で、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞、芸能一族の血筋の良さを示す。現在は、気象予報士の資格ももち、バラエティでも活躍するタレントの印象が強いが、実は、アクションからホームドラマまでを演じられる実力派男優なのだ。



原作を読む! 


鬼平犯科帳(11) 第7話「雨隠れの鶴吉」


平蔵の弟分・録之助の ”過去の女”が登場

 鶴吉とその実父・万屋源右衛門を引き合わせるのは、原作ではお元という女性。お元は鶴吉の乳母で、録之助とは”いい仲”だった。そんな過去の関係をからかう平蔵に、録之助は照れつつも「ああしたことがあると、却ってこの、男も女もねえ、さっぱりとした友だちづき合いができるもんでね」と説明している。

 

 また、伊豆の温泉で録之助、鶴吉、お民の3人が顔を合わせるラストシーンで、録之助は湯から出るお民を見て「いいお尻だ」と褒めているが、残念ながら、ドラマではお民の美尻は披露されなかった。


ー鬼平犯科帳DVDコレクション31  原作11巻 第7話「雨隠れの鶴吉」-










たんぽぽの花の思い出

2015年04月03日(金) 23時14分49秒 テーマ:鬼平犯科帳

たんぽぽの花を見ると・・・


150406_0952~01.jpg




150406_0951~01.jpg


 今年、1月31日に亡くなった母は、自慢できる人だった。

頭が良くて、絵を描くのも上手、運動は特に駆け足が速かった。

その上、美容師、調理師免許、お花の師範、着物を縫うのもプロ。

父が母と一緒になる時、「卒業した学校へ行き調べた」とも聞く。


 頭は良くても「痴呆症」になってしまった母。

病院に駆けつけた弟に、言った最後の言葉は、「ありがとう」。

その母が、生前タンポポのことを教えてくれたことがあった。

「タンポポには西洋タンポポと日本タンポポがあるんだよ」と・・・・・





※「南魚沼産・コシヒカリ」

2015年03月19日(木) 15時35分21秒 テーマ:鬼平犯科帳

南魚沼産・コシヒカリ



141115_2035~01.jpg


上手なお米の保存方法


ヒビ割れ防止

お米がヒビ割れると炊き上がりがダンゴ状となりごはんの粒がしっかりしません。

●直射日光のあたらないところに保存してください。

●フタのある容器に保存してください。

(天日や風にさらすと水分が蒸発してお米がヒビ割れします。)



異臭防止

お米は臭いを吸収しやすく、いったん臭いがつくと洗米してもとれにくくなります。

●洗剤・灯油・魚などの臭いの強いもののそばには、おかないでください。



水漏れ防止

お米は大変水分を吸収しやすく、湿ったお米はカビや細菌の発生源となります。

●湿気のない、涼しいところに保存してください。

●昼間と夜間の温度差の少ないところに保存してください。

(夜間に冷えた空気は、袋や米びつの中で水滴となります。)



虫の発生防止

保管状況の悪化、温度湿度の状況によって虫が発生することがあります。

●お米の保存容器はこまめに清掃してください。

●お米は古いものを使い切ってから新しいものを容器に入れてください。

●風通しの良い冷暗場所で保存してください。



販売者 JA魚沼みなみ農業協同組合

住 所  〒949-6773 新潟県南魚沼市津久野下新田15

TEL 025(770)0507   FAX 025(770)0508



30.≪第3シリーズ≫ 第8話 妙義の團右衛門

2015年03月04日(水) 02時32分48秒 テーマ:鬼平犯科帳

密偵・高萩捨五郎

         妙義の團右衛門の恨みを買いーーー


 第2シリーズ第10話「盗賊二筋道」で、盗賊から足を洗い、平蔵の密偵となった高萩の捨五郎。ある日、むかしなじみの妙義の團右衛門に再会した。團右衛門は捨五郎に、江戸での盗めを助けてくれるように頼むが、捨五郎は密偵としての務めから、團右衛門の押し込み計画を平蔵に逐一報告する。そんな折、平蔵の密偵であっることが團右衛門にバレてしまった。怒った團右衛門は、平蔵と捨五郎の裏をかき、ふたりへの恨みを一時に晴らそうとする。



愛宕山と神明宮が東西を守る芝


活気あふれる、江戸有数の名所


 妙義の團右衛門は、愛宕山で高萩の捨五郎と再会。二人はその後、芝神明宮(芝大神宮)のはす向かいにある料理屋「弁多津(べんたつ)」へおもむくーーー。



140720_0000~01.jpg


 本作の舞台となった愛宕山や弁多津は、いずれも芝(現在の東京都港区芝公園周辺)にある。この界隈は、東海道沿いで人通りが多く、増上寺や芝神明宮といった名所があったことから、江戸でも有数の繁華街だった。



140719_2355~01.jpg


140719_2345~01.jpg

 そんな活気あふれる町の様子を一望できるのが、愛宕山だ。徳川家康が京都から勧請(かんじょう)し、火伏(ひぶ)せの神として崇敬(すうけい)を集めた愛宕権現(愛宕神社)を頂きにまつるこの山は、標高26m、8~9階建てのマンションくらいの高さしかない。しかし、天然の山としては江戸府内の最高峰。あまりの急傾斜に駕籠(かご)を使った者もあるという男坂か、その脇にある勾配の緩(ゆる)やかな女坂のどちらかを進んでようやく頂上に立てば、江戸の町並みから品川の海、房総の山々の大パノラマが広がっていた。浮世絵にも描かれたこの絶景と、参詣を目当てに多くの人々が愛宕山を訪問。付近には、観光客を相手に商売する店も密集していた。お八重が勤める水茶屋も、そうした店のひとつだったのだろう。



140719_2354~01.jpg


140719_2345~02.jpg

 

 愛宕山から15分も歩けば、将軍家の菩提寺・増上寺近くの芝神明宮に着く。「飯倉神明宮」とも呼ばれた同社は、毎年9月11日~21日まで11日間にわたって開催される「だらだら祭り」の別名もある例大祭で有名だ。祭りの期間中は生姜が売られ、「芝神明の生姜を食せば風邪を引かない」といわれていたとか。
また、「め組の喧嘩」で知られる文化2年(1805)の、火消しと力士の大乱闘の地としてもおなじみ。原作によると、軒を連ねる茶店や料理屋にも、浅草や深川とは別の趣があったようだ。「殿さま栄五郎」(第2シリーズ第1話)の冒頭で、火間虫の虎次郎配下の仲間割れから火盗改メとの斬り合いに発展した岡場所は、ここ芝神明宮の門前だ。


 現在の芝公園は東京タワーがそびえ、オフィスビルが林立する近代的な都市へと変貌した。しかし、愛宕山や芝神明宮は現存しており、江戸時代から変わらず、街を静かに見守り続けている。



料理屋 弁多津


 本作では、妙義の團右衛門がのっぺい汁をほめている料理屋・弁多津。他の回にも登場していて、第5シリーズ第5話の「消えた男」では、佐嶋与力が「あなごの白焼きで呑むと格別」とご満悦だ。


 また、本作の茶屋女が「弁多津を知っているなんて隅に置けない」と言っており、第7シリーズ第5話「礼金二百両」では木村忠吾も「小林様の密会場所どもなるとさすが高価な・・・・・」とつぶやくなど、なかなかの格式であることもわかる。


 実在すればぜひとも行ってみたい名店「弁多津」。残念ながら、原作者・池波正太郎の創作であったようだ。


女好きが仇となって 捕縛された兇賊


妙義の團右衛門役・・・財津一郎

 1934年、熊本県生まれ。帝劇ミュージカルの研究生となり、53年に森繁久弥主演の舞台に初出演。TV番組「てなもんや三度笠」に、怪浪人・蛇口一角役で出演し、爆発的人気を得た。その後映画界に進出し、フランキー堺と共に主演した前田陽一監督作「喜劇・ああ軍歌」(70年)で喜劇役者の本領を発揮。74年、ゴールデン・アロー賞演劇賞受賞。





原作を読む! 


鬼平犯科帳(19) 第2話「妙義の團右衛門」


平蔵の密偵への思いがにじむ ラストシーンが印象的
 

 原作とドラマのいちばんの違いは配役。原作の馬蕗の利平治がドラマでは高萩の捨五郎になっている。原作の利平治は、盗み先の情報を調べる”嘗役”としては一流だったものの、尾行にはうとく、妙義の團右衛門と別れたあと、自分をつける者の存在に気づかず役宅に直行。團右衛門らにすぐに密偵だとバレて、惨殺されてしまう。

 

 そんな團右衛門の仕打ちに激しく怒った平蔵は、ラストシーンで團右衛門の鼻を切り落とす。ドラマに較べてかなり血なまぐさい結末だが、こうした行動も、密偵・利平治を心底大切に思っていたからこそ。平蔵の情の深さがうかがえる印象的な場面だ。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション30  原作19巻 第2話「妙義の團右衛門」ー




30.≪第3シリーズ≫ 第7話 谷中いろは茶屋

2015年02月08日(日) 02時24分41秒 テーマ:鬼平犯科帳

忠吾れあげる娼妓(しょうぎ)お松

                彼女のひいき客の正体はーーー


 同心・木村忠吾は”いろは茶屋”の娼妓・お松に入れあげてしまい、見廻りの役目にもまったく身が入らない。お松に会うためには揚げ銭が必要だが、通い詰めの忠吾は、そのための金も尽きかけていた。そんな時、相思相愛のお松と忠吾のために、気前よく十両を差し出してくれた男が。その男は、お松を可愛がり、何かと目にかけてくれるひいき客・通称”川越の旦那”だった。一見、優しく気のよさそうな男だが、実は、墓火(はかび)の秀五郎という盗賊一味の首領だった。




「鬼平」の人気者・木村忠吾の魅力


ドジで無邪気な強運の持ち主


 同心・木村忠吾は火盗改メきってのムードメーカー。捕物の現場にもかかわらず鉢合わせした大盗・墓火の秀五郎に「その節はどうも」と挨拶してしまう底抜けの無邪気さと屈託のなさ・・・・・。そんな忠吾の魅力をコミカルに描いたのが本作だ。


 職務上知らねばならぬ盗賊の事情よりも、うまい蕎麦屋や美女に詳しい忠吾のことだから、何かと失敗しては叱られているのだが、実は手柄もけっこう立てている。本作でも、秀五郎を成敗して大手柄を立てた。


 ただし忠吾の場合、ほとんどが”偶然”による手柄。本作も、通い詰めたお松のひいき客が秀五郎だったという”偶然”が忠吾の成功を支配しているが、その手の話は枚挙にいとまがない。たとえば、羽織を釘に引っかけたことから盗み細工が露見する「四度目の女房」(第2シリーズ第13話)。捕物の現場で「(瀬田の万右衛門は)いったいどこへ逃げたか・・・・・」とつぶやきながら壁に寄りかかったら、その壁が回転して、隠し部屋に縛られていた万右衛門を発見する第3シリーズ第3話「馴馬の三蔵」などがそれに当たる。


 とはいえ、やはりしょっちゅうドジは踏んでいて、第2シリーズ第8話の「雨引の文五郎」では、張り込み先にもかかわらず酒を勧められ、結果的に賊を取り逃がしてしまい、平蔵から大目玉を喰らう。ただしここからが忠吾流。数日後には悪びれる風もなく、しゃあしゃあと長官への不満を口にし、先の失敗もちゃっかりと一緒にいた沢田同心との連帯責任にしてしまった。立ち直りの早さはほとんど天才的なのだ。


 ただ、そんな忠吾にエライところがあるとすれば、”偶然”の手柄を褒められても「私は何もしておりません」と言える素直さだろう。抜け目のない盗賊たちとの駆け引きに日々神経をすり減らす平蔵にとっては、可愛くてたまらない間の抜け方なのかもしれない。


 それでいて、第3シリーズ第6話「いろおとこ」では、後輩・寺田同心の秘密を見破るなど鋭いところを見せている。もう少し成長すれば同心としての今後が期待できるかも・・・・・と思えるのはこんな時だ。


 一方、同僚や密偵に対しては、思ったことをすぐ口に出す無神経なところがある。しかし、本人に悪気はなく、失敗も多いため、憎めない。役目において点数稼ぎに走ることもないから、警戒心も起こさせない。だから忠吾は嫌われない。ときには密偵の伊三次やおまさにまで、ムキになるのがおもしろいと、からかわれる始末だ。


 そんな忠吾の人物像をひと言で表すとすれば”かわいい弟”ではないかと思うが、いかがだろうか。



考察・いろは茶屋


140719_2231~01.jpg

(『根岸谷中辺絵図』部分/国土地理院所蔵)



140719_2246~01.jpg
※どこからどこまでが「谷中いろは茶屋」という形では現存しないが、「貞享(じょうきょう)の時代から谷中・天王寺門前に開かれた遊所」(原作)より推定。


 


 最近では隣接する根津(ねづ)・千駄木(せんだぎ)とあわせた一帯が「谷根千(やねせん)」と呼ばれ、下町の代表のように扱われている谷中。もとは閑静な寺町だったが、貞享(じょうきょう)年間に岡場所として発展する。五重塔と富くじで有名な感応時(現・天王寺)の門前に娼家が軒を連ね、その数全部で47軒。いろは47文字にひっかけて”いろは茶屋”と呼ばれるようになった。周囲に寺院が多かったため、客の大半は僧侶で、「武士はいや 町人好かぬ いろは茶屋」と揶揄(やゆ)された。


 遊女は上方出身者が多く、忠吾いわく「おっとりとしていて品がある」(第7シリーズ第5話「礼金二百両」)。ちなみに大坂・道頓堀にもいろは茶屋と呼ばれる地域があったが、こちらは芝居小屋に専属して飲食をまかなう芝居茶屋であった。


 さて、谷中いろは茶屋の値段は昼遊び一朱(現代の貨幣価値では約二千五百円)。原作によると他の岡場所より少々高い設定のようだ。最低でも一両(約十万円)はかかる吉原ほどではないが、かといって安っぽくもない。そんな程よい高級感も、谷中いろは茶屋の魅力だったのだろう。




木村忠吾に、亡き息子の 影を見た大盗

墓火の秀五郎役・・・長門裕之

 1934年、京都府生まれ。戦前から子役として活動していたが、43年の「無法松の一生」の少年役で注目される。その後、大学時代に俳優活動を再開。56年の太陽族映画の第一作「太陽の季節」のほか、今村昌平監督とコンビを組み、「にあんちゃん」(59年)「豚と軍艦」(61年)で、日本を代表する名優となった。2011年、肺炎の合併症で鬼籍に入った。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(2) 第2話「谷中・いろは茶屋」


温和な事務方の同心として 木村忠吾が初めて登場

 

 川越の旦那こと盗賊・墓火の秀五郎と、同心・木村忠吾の不思議な交友関係がドラマの大きな見どころだが、原作では、ふたりが直接体面することはない。「川越さん」の正体は最後まで謎のままだ。

 

 なお、本作で初登場を飾った同心・木村忠吾は、24歳・独身という設定。同僚にからかわれても何ひとつ言い返さないほどおとなしい性格で、捕物には参加せず書類作成」の仕事をしている。もっとも、このあと彼は原作でも口達者なお調子者として、みるみる成長(?)していくのだが。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 30- 








29.≪第3シリーズ≫ 第6話 いろおとこ

2015年01月06日(火) 02時14分18秒 テーマ:鬼平犯科帳

同心・寺田源三郎は、

     かつての兄の密偵・おせつと親密な仲になりーーー


 同心・寺田源三郎は、やはり火付改メ同心だった兄・又太郎を殺した大盗賊・鹿熊(かぐま)の音蔵の行方を追っていた。兄に瓜二つの源三郎は、ある日自分の顔を見て驚いて逃げた女が、兄の死の真相について何か知っていると確信して情報を聞き出そうとする。女はかつて兄の密偵を務めていたおせつだった。おせつの伯父・市兵衛が、音蔵のむかしなじみだということもわかり、市兵衛の手引きで音蔵の盗人宿に案内してもらうことになったのだがーーー。



江戸庶民に愛された寺・回向院


あらゆる命を供養する


 本作で、同心・寺田源三郎と密偵・おせつが出会った回向院は、明暦の大火を契機に開かれた寺院。大火の犠牲者は10万人超、大半が身元不明で、その亡骸を葬るために、幕命(ばくめい)で「万人塚(ばんにんづか)」という墓を建立した。大火のほかに海難などの自然災害による犠牲者はもちろん、無縁仏、動物の慰霊まで、生あるものすべてを供養する寺院として現在まで続いてきた。



140719_1737~01.jpg
回向院は、当時勧進相撲でも多くの人出を集めた。(『東京名勝図会 本所回向院』/東京都立中央図書館特別文庫室所蔵)



出開帳と相撲で大賑わい


 本作の風景でもなかなかの人出で賑わっているが、それもそのはず、回向院(えこういん)は江戸時代から庶民に大いに愛された寺社だ。その理由は、出開帳と勧進相撲(かんじんずもう)のふたつにあった。


 出開帳(でかいちょう)とは、地方の寺社が所蔵する秘仏、秘宝を江戸などで一般公開する宗教行事だが、娯楽の少ない当時、集客が見込めるイベントでもあった。開帳が行われる寺社の境内には多数の参詣客を見越して、屋台や見世物小屋などがずらりと並んだ。安永7年(1778)に開催された長野・善光寺の出開帳は、60日間で160万人を集めたという。



鬼平の協力者たち


三次郎

 軍鶏鍋屋(しゃもなべや)「五鉄」の亭主・三次郎は平蔵とはむかしなじみ。店を火盗改メと密偵との連絡場所として提供するほか、彦十やおまさを寄宿させている。簡単な尾行もこなし、町で見聞きした情報を平蔵に伝えることもある。


録之助

 高杉道場の後輩で托鉢坊主の井関録之助は、平蔵に仕事を手伝ってくれと頼まれた際の「命がけだぞ」との言葉が気に入り、協力を惜しまない。


お熊

 本所・弥勒寺門前の茶店「笹や」の女主人・お熊も銕三郎時代からの付き合い。「五鉄」同様、店を連絡場所に提供。役宅に町の情報を伝えに走ることも。




かつて、火盗改メの同心を 謀殺した兇賊


鹿熊(かぐま)の音蔵役・・・浜田晃

1941年、神奈川県出身。早稲田大学在学中に自由舞台、文学座演劇研究所を経て、60年代前半から、映画やドラマを中心に活躍。凄みのある風貌でさまざまな悪役を演じる。特撮ドラマでは、「仮面ライダーストロンガー」に登場した冷徹な怪人”一つ目タイタン”が有名。昨年「仮面ライダーオーズ」にも出演、フアンの喝采を呼んだ。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(12) 第1話「いろおとこ」


人気者・木村忠吾の 見せ場をつくったドラマ
 

 寺田源三郎は原作では金三郎といい、平蔵も一目置くほどの剣の遣い手。ドラマでは源三郎とおせつが男女の深みにはまったことをにおわせるが、原作にはそこまで踏み込んだ描写はない。

 

 ドラマでは平蔵が役目辞退を願い出る源三郎へ、同心・木村忠吾がおせつの墓前で不器用な生き方をした2人へ、それぞれ処世術を述べるシーンがあるが、原作にはそうした部分はない。また、亡兄の未亡人・お篠の懐妊を看破したのは、ドラマでは女好きな忠吾だが、原作では無骨な与力・佐嶋忠介だった。


ー鬼平犯科帳DVDコレクション29  原作12巻 第1話「いろおとこ」-















1 | 2 | 3 | 4 | 5 |最初 次ページ >>

AD

Amebaおすすめキーワード

Ameba人気のブログ

Amebaトピックス

ランキング

  • 総合
  • 新登場
  • 急上昇