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28.≪第3シリーズ≫ 第4話 火つけ船頭

2014年11月11日(火) 01時55分05秒 テーマ:鬼平犯科帳

女房の密通を知った船頭・常吉は

                 火つけの味を覚えてしまいーーー


 平蔵が日頃、船での見廻りの際に使う船頭の名は常吉(つねきち)。「口無しの常吉」と異名を取るほど無口な男だが、その日はいささか荒れていた。女房のおさきと同じ長屋に住む浪人・西村虎次郎との密通を知ったからだが、女房にも西村にも文句が言えず、鬱憤(うっぷん)がたまっていた。


 むしゃくしゃする日々を送りながらも、ひょんなことから火つけの楽しみに魅せられてしまった常吉。ある夜、放火をしようとして近江屋(おうみや)の裏手に出たのだが・・・・・。



江戸の華・火事と、火つけ


3年弱に1度、大火が発生


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明和の大火の図。坊主くずれの長五郎(僧名・真秀)が大円寺の和尚に破門されたことを根に持ち庫裡(くり)に火をつけたことが原因。(『目黒行人坂火災絵巻』部分/消防博物館所蔵)



 「火事と喧嘩は江戸の華」の言葉があるように、江戸では町を越えて燃え広がる、いわゆる”大火”が頻発した。江戸・明治期の江戸・東京の史料を集めた『東京市史稿(変災篇)』によると、江戸時代264年間で100件以上の大火があったという。大坂や京都などに大火がなかったわけではないが、件数はそれぞれ10件もなく、江戸が突出して多かった。


 江戸で大火が多かった原因の第1は、人口流入により100万都市に膨張し、家屋が密集していたことだ。家は木造で、照明にも火を使っていた時代、ましてや、冬は乾燥した「からっ風」が吹く。一度火がつくとまたたく間に燃え広がった。


 特に、江戸三大大火と呼ばれたのが、明暦の大火(明暦3年〈1657〉1月)と、明和の大火(明和9年〈1772〉2月)、そして文化の大火(文化3年〈1806〉3月)だ。


 このうち、明和の大火は火つけが原因だった。目黒の大円寺から出火し、麻布から神田、千住まで広がり、死者約1万4700人、行方不明者約4000人を数えた。火つけ犯は坊主くずれの無頼漢。平蔵の父である、時の火付盗賊改方長官・長谷川宣雄の配下に捕縛された。



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火の見櫓(やぐら)を上る八百屋お七。人形浄瑠璃や歌舞伎で上演されるにつれ、話は誇張されていった。(芳年『松竹梅湯嶋掛額』部分/国立国会図書館所蔵)



 一方、本作で伊勢屋の火つけ犯を推理する同心・木村忠吾が口にした「八百屋お七」は、近松門左衛門が「好色五人女」の題材にしたため広く知られるようになった実在の人物。天和(てんな)の大火(天和2年〈1682〉12月)によって焼け出された八百屋一家は、菩提寺の円乗寺(えんじょうじ)に避難した。そこで娘のお七が寺小姓と恋仲になる。やがて家が再建され一家は戻ったが、お七の小姓への思いは募るばかり。もう一度火事が起きたら会えるかもしれないと、あちこちに火をつけた。


 江戸時代、火事を起こした者にはきびしい罰則が待っていた。不注意で失火した家も財産没収、江戸所払いなどになった。火つけは、たとえ小火(ぼや)で終っても、市中引き廻しのうえ、火あぶりの刑に処される。お七の火つけは、小火ですんだという説もあるが、罰則通りの刑が科されている。明和の大火の無頼漢も同様だ。


 本作で平蔵は、常吉の投げ文が源七一味召し取りのきっかけになったことなどから、火つけの現場を取り押さえた時も軽い刑にとどめた。だが、これは明らかな脱法行為。事が露見したり、常吉が再度火つけをしたりすることがあれば、平蔵は間違いなく切腹もの。平蔵も佐嶋与力も、それを重々承知していたのだ。



放火に手を染める 無口な船頭

・常吉役・・・下条アトム

1946年、東京都出身。新劇俳優の一家に生まれ、高校卒業と共に民藝俳優教室に入って、舞台などに立つ。69年、TVドラマ「信子とおばあちゃん」でデビュー。70年、山本迪夫監督作品「悪魔が呼んでいる」で映画初出演。その後、森崎東、野村芳太郎、山田洋次ら、名監督作品で、さまざまな角度から描かれた現代青年役を好演。性格俳優として評価される。




原作を読む! 


鬼平犯科帳(16) 第4話「火つけ船頭」


平蔵が情けをかけるドラマ 厳格に法を執行する原作

 

 ドラマで常吉は、女房の浮気に怒ることもできない大人しい男に描かれている。だが原作では密通が続いていると知ると恨み、女房の島流しが決まると(ざまあ、見やがれ)と喝采する。

 

 ドラマでは平蔵が、はかなげに飛ぶ蝶を優しい視線で追うシーンが3回登場する。根は悪党ではない常吉をかばう、平蔵の優しい心情を表す伏線としての演出と見るのはうがちすぎだろうか。だが原作にはそうした描写は一切なく、火つけに本当の悪漢はいないとしながらも、法を厳格に執行する。


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28.≪第3シリーズ≫ 第3話 馴馬の三蔵

2014年10月20日(月) 23時59分56秒 テーマ:鬼平犯科帳

粂八兄貴分

        馴馬の三蔵のお盗めを偶然知ってーーー


 盗賊・鮫洲(さめず)の市兵衛の女だったお紋は、盗賊時代の小房の粂八とわりない仲になり、市兵衛から逃げたいと訴えた。粂八は、兄貴分・馴馬の三蔵(さんぞう)の女房・おみののもとにお紋を預ける。ところがお紋とおみのが何者かに殺されてしまった。三蔵は行方をくらましてしまうが、粂八は市兵衛を犯人だとにらんで追い続ける一方、三蔵に対する恩と負い目も忘れたことはなかった。月日が流れ、密偵となった粂八は、料理屋「万亀(まんかめ)」に居座り盗めをしかけようとしている三蔵を偶然発見する。



からくり屋敷・料理屋「万亀」


からくりに見る、盗賊の知恵と技の集大成


 ある日の昼下り、料理屋「万亀」で、命の洗濯をする”猫どの”こと同心・村松忠之進と木村忠吾。2人がいる部屋の床脇の壁は、何と”どんでん返し”になっていた。他にも料理屋「万亀」には、隠し階段や、壁が引き戸になった部屋があり、厠(かわや)の反対側にも扉があるという。実は「万亀」は、ただの料理屋ではなく瀬田の万右衛門(まんえもん)一味が巣喰う盗人宿だった。


 盗人宿とは、盗賊たちが連絡を取り合ったり、盗んだ金品を隠したりするための場所。一味の者を主人に据えて、表向きは堅気(かたぎ)の商いをすることもあれば、荒寺などを使うこともあった。いつ何時、火盗改メや町奉行所の調べが入るかわからないので、からくりを施(ほどこ)して逃走経路を確保してあることも多い。第1シリーズ第26話「流星」に登場する、鹿山の市之助らの盗人宿などはその好例。万一の際、床板を外せば船に乗って川に出られるような工夫がなされていた。


 一方、盗みに入るために施す”盗み細工”も盗賊がらみのからくりのひとつだ。盗み細工とは、平常は大工として働いている盗人が、のちにその屋敷に押し入るために施す細工のこと。外堀に秘密の入り口を設けたり、木に滑車を仕掛けたり・・・・・。鮮やかなからくりは、第1シリーズ第15話「泥鰌の和助始末」、第2シリーズ第13話「四度目の女房」を鑑賞してほしい。


 いずれにせよ、からくりはお盗めを首尾よく運び、万一の時はお縄から逃れるための、盗賊たちの知恵と技の結晶といえる。しかし、それとて鬼の平蔵にはほとんど通用しなかったのだから、”労多くして功少なし”といったところだろうか。



密偵・粂八 恋物語


本作で明らかになった小房の粂八の悲恋話に、ぐっときたファンも多いはず。


粂八、そして平蔵の恋愛観とは?


 幼い頃の思い出は、おん婆に手を引かれて雪のなかを歩いた記憶だけ。そんな孤独な生い立ちの粂八にとって、お紋がいかに大切な存在だったか。それは、お紋の寝顔を見守り、汗を拭いてやろうとする粂八のしぐさを見るだけでしみじみと伝わってくる。馴馬の三蔵が、自分の女房おみののことを、”生涯に一度だけ本気で惚れた女”と説明しているが、それは粂八にとってのお紋も同じだった。だからこそ、粂八はお紋を殺された恨みを忘れられず、同時に、最愛の女房を殺された三蔵に対して心底申し訳なく思ってきたのだ。


 一方、平蔵も母親の愛情を知らず、孤独な幼少時代を送ったひとり。粂八の胸の内はよく理解できたに違いない。粂八の心のなかで今も生きるお紋をこれからも大事にするようにと伝える表情や、すべてを打ち明けようとする粂八を「口に出しては、味ない、味ない」と赦(ゆす)すラストシーンに、平蔵の情の深さがよく表れている。


 さてその後、粂八はお紋を思い続けて独り身を通したのか、それとも、別の女と幸せになったのか。ファンとしては気になるが、その点については、ドラマシリーズでも原作でも明らかにされていない。


女房の敵討ちを決意する 粂八の兄貴分の盗賊


馴馬の三蔵役・・・金内喜久夫・・・1933年、福岡県出身。63年文学座研究所に入所し、65年の「花咲(チェリー)」で初舞台を踏む。その後、舞台と平行してTV、映画で活躍。悪役から刑事役まで、無骨な役柄で人気を得る。舞台では75年に「五番町夕霧桜」で十三夜会奨励賞、08年に「舞台は夢~イリュージョン・コミック~」などで第43回紀伊國屋演劇賞を受賞している名優である。


ー鬼平犯科帳DVDコレクション28  原作18巻 第2話「馴馬の三蔵」ー





原作を読む! 


鬼平犯科帳(18) 第2話「馴馬の三蔵」


粂八の悲しい過去が! ファン必読の名編


 原作には、粂八が、お紋の敵である瀬田の万右衛門を捕縛するくだりはない。だが、平蔵に隠し事をしたことで密偵としての自信を失っていた粂八が、万右衛門を殺めることなく火盗改メに裁きを委ねる場面はしっかりと描かれており、ここに粂八の密偵としての覚悟がにじみ出ているように思われる。

 

 ラストシーンは、原作、本作ともに、シリーズ屈指の名場面。粂八にみなまで言わせずに立ち去る平蔵と、その気遣いに男泣きする粂八の姿に胸が熱くなる人も多いはず。



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すべてを聞かずに立ち去る平蔵と、その思いやりに涙する粂八。屈指の名シーンだ。



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27.≪第3シリーズ≫ 第2話 剣客

2014年09月06日(土) 01時20分54秒 テーマ:鬼平犯科帳

同心・酒井

殺害した浪人は盗賊の一味だった


 市中見廻りの最中に、着物の袖に血が付いた不審な浪人を見つけた平蔵は、忠吾に尾行させるが、まかれてしまう。ちょうど同じ頃、同心・酒井祐助の剣の師・松尾喜兵衛が何者かに殺害されていた。平蔵は、殺しの犯人が、忠吾にあとをつけさせた浪人ではないかとにらんで捜査を開始するが、一向に足取りがつかめない。一方、密偵・おまさは、旧知の盗賊の手下・定七を見かける。次第に浪人と定七のつながりが浮かび上がってきてーーー。



師思いの誠実な同心・酒井祐助


役目への忠誠心は人一倍 火盗改メを支える筆頭同心


 本作の主人公である酒井祐助は、火盗改メ・筆頭同心。木村忠吾や沢田小平次ら同心の中ではリーダーに当たる。筆頭与力の佐嶋忠介が平蔵の右腕だとすれば、酒井同心はさしずめ左腕といったところだろうか。あまり派手なことをするキャラクターではないが、第1シリーズ第1話「暗剣白梅香」の冒頭シーンに顔を出して以来、ドラマ全体を通しての登場場面はかなり多いと言っていい。


 そんな”目立たぬ重要人物”ーーー実はかなり腕の立つ剣術遣いであることが本作で初めて明かされるーーー酒井祐助の言動に注目してみよう。


 たとえば第1シリーズ第3話「蛇の眼」。一瞬目が合っただけの男を盗人と看破した平蔵に「長官の勘ばたらきは外れたことがない」と感嘆することしきりだ。その様子から見て取れるのは、長官への尊敬の念。この言葉と彼の表情には、へつらいでもなければ  とも違う、純粋な尊敬の気持ちが表れている。


 なればこそ、人一倍役目にも熱が入るというものだ。第2シリーズ第21話スペシャル「熱海みやげの宝物」では、小田原町奉行所が事態を引っかき回すのに業を煮やして「この奉行所はイモです!」と苛立ちをあらわにする一幕も。


 もちろん、これは酒井の真面目さゆえに出た言葉で、ふだんの彼が同僚や密偵たちに声を荒げるようなことはない。同心たちにとって平蔵が「父」的な存在であるとするならば、酒井は「兄」。その優しく頼もしいまなざしは「暗剣白梅香」で、役宅の庭で剣の稽古に励む木村忠吾にかける「転げて骨でも折る前に、こっちへ来てお茶をいただけ」という言葉などからも想像できる。




久栄や同僚、密偵の協力で恩師の敵討ちを果たす


 このように、真面目だが割とソフトな印象を与えてきた酒井の、骨太な側面を描き出したのが本作だ。敬愛する師匠を殺され、同門の人々から罵倒されても、公私混同してはならぬと役目を優先する。そんな酒井の胸中を慮(おもんばか)って、さりげなく彼を支える久栄、おまさと彦十、同心たちの心遣いが胸にしみる。そして、周囲の人々にそうさせたいと思わせる酒井同心の魅力は何かと考えた時、「一途」という言葉が思い浮かぶ。それは職務に対しても、尊敬する人や供に働く者に対しても変わることはない。それが彼の”武士道”なのではないだろうか。



江戸時代の葬儀


 殺された松尾喜兵衛には身寄りがなく、弟子の酒井祐助が喪主となって葬儀を取り仕切った。梵字(ぼんじ)を書いた幟(のぼり)を掲げた葬列の様子がドラマの中で描かれているが、これは「野辺送り」といって、棺(ひつぎ)を墓地へ運ぶ儀式だ。酒井をはじめ参列者の多くは白い衣服を身につけている。黒い喪服が定着したのは大正末期といわれ、江戸時代は白が主流だったようだ。また、現代は簡略化さあれることが多いが、当時の通夜は、文字通り夜通し行われたという。原作には、門人たちはもちろんのこと、近所の人々も大勢集まったと書かれている。


 江戸時代の葬儀といえば当時は土葬がメイン。特に7歳以下の子供は、家の床下に埋めることがあったが、これは「子供が生き返ってくる」と信じられていたためだとか。


 また、第2シリーズ第15話「密告」のお百のように身よりのない者は、無縁仏として葬られた。




演じる俳優によって様々な個性を見せる”酒井祐助”


 酒井祐助の役はドラマの配役としては二枚目のポジションで、3人の俳優が演じている。

①第1シリーズの篠田三郎版は涼しげな美男子で、優しさと知性を漂わせている。

②第2シリーズの柴俊夫は、明るく元気で、茶目っ気のある役作り。

③第3シリーズ以降を担当して酒井のキャラクターを確立したのは勝野洋だ。

 無口でポーカーフェイスの勝野=酒井は、いかにも武士らしい落ち着いた佇(たたず)まいだ。





不遇な身を持て余す 腕の立つ剣客


石坂太四郎役・・・中尾彬(あきら)・・・1942年、千葉県生まれ。美術大学入学後、「真昼の誘拐」(61年)で映画初出演。これがきっかけで日活の第5期ニューフェイスに合格、大学を辞めて俳優活動に入る。それまではチンピラ役などでの映画出演が多かったが、「月曜日のユカ」(64年)で、都会的な二枚目として注目され、その後は、理知的でニヒルな役柄を多く演じる名優である。現在は、バラエティ番組でも人気を集めるほか、画家としても活躍している。





原作を読む! 


鬼平犯科帳(6) 第3話「剣客」


剣士・沢田小平次同心が 恩師の仇討ちを果たす


 小野派一刀流の剣士でもある同心・沢田小平次が、逆恨みによって暗殺された恩師のかたきを取る仇討ち話。ドラマでは、主人公が勝野洋 扮する酒井祐助に変った他、原作には登場しない久栄も姿を見せる。

 

 クライマックスは何と言っても、縁側の立った沢田が敵の頭上を飛び越え、一瞬の抜き打ちを決める対決シーン。血湧き肉踊る立ち回りでの作品を手がけた池波正太郎の手腕が、いかんなく発揮された名場面だ。そのダイナミックな殺陣は、ドラマでもほぼ忠実に再現されている。


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東北自動車道 羽生パーキング 上り線

2014年08月26日(火) 01時16分08秒 テーマ:鬼平犯科帳

ようこそ、江戸へ。


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 江戸時代、ここ羽生の隣町に、江戸の要所「栗橋関所」がありました。


この「栗橋関所」は、東海道、中山道と並ぶ五街道のひとつ、


日光街道に位置する関所で、約二五〇年にわたり、


「入り鉄砲と出女」を取り締まる重要な役目を担ってきました。



 『鬼平江戸処』は、江戸の玄関口だったこの地に、


時を隔てて蘇った現代の「江戸の入口」です。


ここには、東京への入口として、そして江戸時代への入口として、


古き良き時代の江戸の世界が生き生きと広がっています。



 空間だけでなく、時間をも超えていく豊かなクルマの旅をーーー。


ネクスコ東日本がお贈りする新しいくつろぎ処、どうぞごゆっくりお楽しみください。




★胡瓜(きゅうり)とみょうが梅酢漬


ちょっと贅沢八種の味 福神漬


★しいたけ野沢菜ピリ辛煮



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住 所  長野県千曲市大字中355

TEL   026-274-3001

フリーダイヤル 0120-86-5878



かすたーど かすてら焼き 火盗


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株式会社 長登屋 NNI


住 所  埼玉県川越市上老袋146-3

フリーダイヤル 0120-090330




羽生パーキング





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27.≪第3シリーズ≫ 第1話 鯉肝のお里

2014年08月21日(木) 01時30分43秒 テーマ:鬼平犯科帳

一味から逃れた鯉肝のお里に

         ある盗みの話が持ちかけられてーーー


 ある飯処で偶然見かけたお里の振る舞いに、不審を抱いた密偵・おまさ。おまさの報告を受けて、お里が女賊であることを見抜いた平蔵は、伊三次にお里を探らせることに。お里はかつて、盗賊・白根の三右衛門一味の引き込みを務めていたが、今は一味から逃れて、義父・長虫の松五郎の家に住みついていた。松五郎から金を少しずつくすねては、男漁(あさ)りと賭博に明け暮れる毎日を過ごすお里。やがて三右衛門一味がお里を見つけ出し、盗めの話を持ちかけてきてーーー。



粋をくゆらす喫煙ブーム


老若男女が愛したたばこ


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羅宇(らう)に竹が用いられるようになって煙管の軽量化が進むと、長い煙管がお洒落だとされた。(喜多川歌麿『咲分ヶ言葉の花 おかみさん』/たばこと塩の博物館所蔵)



 役宅の牢に捕われたお里と、縁側に座る平蔵。それぞれが煙管(きせる)で一服する姿で本作は終る。この印象的なエンディングにも描かれている通り、当時、たばこをたしなむ人は、身分、性別を問わず多かった。


 そもそも、日本にたばこが伝来したのは江戸時代の少し前だったといわれている。ポルトガル人がたばこを吸うところを初めて見た日本人は「南蛮人は腹の中で火をたいとる!」と驚いたとか。やがて、たばこは日本全国に普及。幕府は喫煙やたばこの耕作・売買を禁じる法度(はっと)をたびたび出すものの効果はなく、愛煙家は増えていった。江戸のたばこ屋・三河屋弥平次は『狂歌煙草百首』のなかで「たばこを吸わないのは100人に2人か3人」と記している。これが事実なら、江戸っ子の喫煙率は97%以上。人気のほどが伺える。


 たばこが一般化すると、江戸っ子は”いかに粋にのむか”を競った。当時は、現代のような紙巻きたばこはなく煙管が主流。そのため、実用性はもちろん、ファッション性も兼ね備えた煙管がつくられるようになった。



江戸っ子好みの煙管


 煙管は、刻みたばこを入れて火をつける「火皿(ひざら)」、口をつける「吸口(すいくち)」、フィルターの役割を果たす「羅宇(らう)」、煙管の頭部である「雁首(がんくび)」からなるが、その材質、形状、意匠は実に多彩。例えば、雁首や吸口に彫刻をしたり、羅宇に蒔絵(まきえ)を施したりと、工夫を凝らした品が登場。





原作を読む! 


鬼平犯科帳(9) 第2話「鯉肝のお里」


平蔵が強い信頼を寄せる 2人の密偵の仲に変化が・・・・・

 

 ドラマ「鯉肝のお里」と原作には大きな違いがある。それは、密偵・大滝の五郎蔵とおまさの関係だ。ドラマでは、お里の動向を探るためにおまさとともに長屋に暮らすのは相模の彦十。だが、原作では五郎蔵で、2人は男女の仲に。

 

 「似合いの夫婦になる」と、2人を長期間の張り込みにつかせた平蔵の思惑通りに事が進んだのだ。ドラマのおまさと五郎蔵を見て、やきもきした読者も多いのではないだろうか。


ー鬼平犯科帳DVDコレクション27  原作9巻  第2話「鯉肝のお里」-



26.≪第2シリーズ≫ 第21話 熱海みやげの宝物≪其の参≫

2014年07月18日(金) 00時03分59秒 テーマ:鬼平犯科帳

地方奉行所と火付盗改方

両者は犬猿の仲だった・・・・・?


 火盗改メを立てる素振りを見せつつも、江戸者を見返してやろうと兇賊・高橋九十郎探しに躍起になる小田原藩奉行所。一方、火盗改メ側は筆頭与力の佐嶋が手柄を譲る余裕を見せたり、筆頭同心・酒井祐助が「この奉行所はイモです」とこきおろすなど、相手を一段下に見ている節が。本作における両者のやりとりを見る限り、火盗改メと小田原藩奉行所の関係は一筋縄ではいかないように思える。


当時、江戸市中で、犯罪の取り締まりや治安維持を担った主要機関は、江戸町奉行所と火盗改メの2つ。江戸町奉行所の長(おさ)である江戸町奉行は寺社奉行、勘定奉行とともに三奉行と呼ばれる重要な役職で、幕府は、江戸町奉行に相当する役職を、直轄地(天領)のうち、特に重要な地方都市にも配置した。それが、京都、大坂、駿府の各町奉行をはじめとする遠国(おんごく)奉行だ。ちなみに、単に「町奉行」といえば江戸町奉行を指し、他の奉行は都市名を冠するのが通例だったという。以上のような幕府の職制に従い、諸藩も町奉行(名称は藩によって異なる)を設置。本作の小田原藩奉行所も、こうした藩の町奉行が率いる機関のひとつだ。


一方、火盗改メは江戸郊外でも捜査できる権限があったため、地方の町奉行所と連携し、犯罪者の捜査・逮捕にあたることもあっただろう。いわば、地方警察署と警察庁による合同捜査だ。両者の思惑やプライドがぶつかり合うであろうことは、江戸の奉行所も現代の警察も同じだと想像してみるが、いかがだろうか。



江戸幕府の捜査機関


下図の各町奉行の権限は基本的に町方(まちかた)に限られるが、火盗改メは江戸内外、町人、僧侶等の区別なく捜査を行うことができた。


                                 将軍ーーーーーーーー

                                                      |

        ーーーーーーーーーーーー|ーーー|     大名

                                        |           |

    若年寄                      老中    寺社奉行                                                        

                    |ーー|ーー|                  |

           奈 京 大   遠       (江戸)                 藩     

           良 都 坂            町                     

           奉 町 町        奉                   (藩の役所)

           行 奉 奉            行                 

      改       行 行             ( 南・北)                


        捜査・裁判                                      捜査・裁判


*1665年「盗賊改」、1683年「火付改」を設置。「火付盗賊改」となったのは1718年。

 長谷川平蔵が長官だったのは1787~1795年。












26.≪第2シリーズ≫ 第21話 熱海みやげの宝物≪其の弐≫

2014年07月15日(火) 23時59分01秒 テーマ:鬼平犯科帳

平蔵に惹かれた孤独な老盗賊


盗賊としての利平治


 馬蕗の利平治は、上方が本拠の本格盗賊・高窓の久兵衛(きゅうべえ)一味の嘗役。頭目の信頼厚く、病気療養中は五十両もの見舞金を渡された。盗賊としての性根は座っていて、口を割らせようと痛めつけても、けっして吐くことはないと、利平治に付きまとう横川の庄八も認めるほどの筋金入りだ。


 また、道中、庄八が高窓一味を乗っ取った高橋九十郎と通じていると察すると、足をくじいた芝居をし、時を稼いで江戸入りを遅らせるなど、盗賊らしい用心深さも持ち合わせる。



むかしなじみの利平治と彦十


 利平治が相模の彦十と出会ったのは17~18年前。その頃彦十は高窓一味にいて、兵庫・有馬温泉で療養中の利平治に、頭目の見舞金を届けにいった。そこで、お互い親子の縁が薄い身の上とわかった2人は意気投合する。原作によれば、喜んだ利平治は彦十を宿に10日も泊めたらしい。


 本作で利平治は再会した彦十にある頼み事をし、礼金を渡そうとする。と、彦十は、顔をゆがめて2人はそういう付き合いだったのかとなじるシーンが印象的。利平治は良かれと思ったことが、彦十には水臭く感じられたのだろう。



平蔵に惹かれる利平治


 利平治は、盗賊の頭目というふれ込みの平蔵が、見ず知らずの自分をどうして助けてくれるのか、不思議でならない。だが、平蔵にとって、大事なのは、まず彦十。その彦十が大切に思うむかしなじみだからこそ、自分を助けてくれることを知る。


 また、街道から大きく外れた自分たちを佐嶋与力たちが見つけられるかと、やきもきする彦十に対し、悠然と構えている平蔵もいい。配下に対する絶大な信頼が見て取れる。


 利平治が平蔵に惹かれたのは、この、人を信じ切る平蔵の器の大きさ。彦十は幸せ者だと、しみじみ語る利平治のせりふは含蓄(がんちく)がある。



平蔵に口説かれ密偵に


 高橋一味を始末したあと、平蔵は利平治を放免する。ところが後日、利平治は平蔵を訪ね、仕置きしてくれと願う。若頭が身罷(みまか)り、生きていても意味がないと思い極めたためだ。


 平蔵は、望み通り遠いところに送ってやろうと言う。だが、そのあと一転して伝法な口調で、どうせ死ぬならその前に、俺のために働く気になってくれないかと持ち掛けた。


 これまで何人もの心を鷲づかみにしてきた、”男たらし”な言葉に、すでに平蔵に惹かれていた利平治もやられてしまう。残る人生を預けようと決意した瞬間だった。




「鬼平犯科帳」”一度きりの密偵”


平蔵に見込まれて密偵になりながらも、

その後ドラマには2度と登場してこない者たちがいた。


 本作は「利平治が密偵となったのはこの日からであった」と、密偵として大いに活躍したかのような余韻を残すナレーションで終る。だが、利平治はその後、ドラマに登場しない。


 実は原作では、利平治は「殿さま栄五郎」をはじめ何度も登場して、平蔵そして火盗改メのために活躍する。最後にはその活躍を恨む兇賊の手に掛かって殺害されてしまうほどだ。しかし、ドラマではこの利平治の役どころは、それぞれ他の密偵たちの活躍に置き換えられており、利平治は出て来ない。


 原作にもドラマにも1度しか登場しない密偵ももちろんいる。が、利平治のように原作では何度か登場するが、ドラマには二度と登場しない。あるいは別名に置き換えられるものも少なくない。


 印象的なのは岩五郎だ。原作では第1巻から登場する密偵第1号で、何度も活躍する。しかし、佐嶋与力直属の密偵という設定だったせいか、ドラマには基本的に登場しない。原作で岩五郎が話の中心となる「浅草・御厩河岸」は、ドラマでは松吉という別の密偵に置き換えられた。ところが「密偵たちの宴」では、原作では岩五郎は登場ぢないが第3シリーズ第19話のドラマ版では設定を微妙に変えて登場。しかし、その後彼の活躍を見ることはできなかった。


●松吉・・・第1シリーズ第18話「浅草・御厩河岸」
         もと錠前破り。盗賊・鶍(いすか)の喜左衛門に招かれた甲州・石和でお縄になり密偵に。         
         原作では岩五郎という名だった。


●関宿の利八・・・第1シリーズ第20話「山吹屋お勝」
         大盗賊・夜兎の角右衛門の配下だったが、平蔵のはからいで足を洗い、火盗改メの密偵と  
         なり、専(もっぱ)ら木村忠吾の手先を務める。


●岩五郎・・・第3シリーズ第19話「盗賊たちの宴」
         通称「豆岩」または「チビ岩」。岩五郎は「密偵たちの宴」の原作には出ていないが、ドラマ

         ではこの1回にのみ登場、設定も変えている。


●砂井の鶴吉・・・第4シリーズ第11話「搔堀のおけい」

         五郎蔵を慕うもと手下。押し入った商家の下女を手込めにして破門に。ラスト、平蔵が五郎 

         蔵に預け、密偵に仕立てることになった。


●仁三郎(にさぶろう)・・・第9シリーズ第2話「一寸の虫」

          3年前、盗賊一味と一緒に召し捕られたが、長谷川平蔵にその人柄を見込まれ、獄門首

          になるところを助けられた。


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26.≪第2シリーズ≫ 第21話 熱海みやげの宝物≪其の壱≫

2014年07月07日(月) 23時52分54秒 テーマ:鬼平犯科帳

彦十のむかしなじみ・馬蕗の利平治が持つ

                      ”盗賊の宝物”とは


 熱海に湯治(とうじ)に来ていた平蔵は、お供の相模の彦十から、嘗役(なめやく)の盗賊・馬蕗(うまぶき)の利平治が同宿していることを聞いた。嘗役は単独行動が常だが、利平治には連れがいた。不審に思った平蔵が彦十に様子を探らせたところ、利平治の連れは、利平治の持つ”盗賊の宝物”が目的だということがわかった。平蔵は、盗賊の頭目に扮して、利平治を無事に江戸まで送り届けると、彦十に約束する。やがて東海道を行く平蔵たちの前に、”宝物”目当ての盗賊一味が立ちはだかった。




将軍家の献上湯だった熱海温泉


全国でも指折りの名湯 熱海温泉の魅力


 働き詰めの長谷川平蔵が、体調を崩してしまい、湯治に出かけた。そこで出会った嘗役(押し込み先を物色する役目)の盗賊・馬蕗の利平治の持つ、嘗帳という”宝物”を探り当てるまでの顛末(てんまつ)を描いた本作。物語の舞台のひとつ熱海温泉は、当時から全国でも指折りの名湯として大変な人気を集めていた。


 その人気を決定付けたのは、初代将軍・徳川家康。慶長2年(1597)に初めて熱海を訪れた家康は、ここの温泉がいたく気に入り、慶長9年(1604)に2人の息子を連れて再訪、数日間にわたって滞在した。さらにその半年後には、京都で病気療養中だった武将・吉川広家(きつかわひろいえ)への見舞いとして熱海の湯を運ばせている。


 この”宅配温泉”は、四代将軍・家綱の時に始まった「お汲湯(将軍家御用汲湯)」という制度の原点となった。お汲湯(くみゆ)とは、将軍家への献上湯のこと。年に数回、お汲湯が命じられると、将軍家から指定された27軒の湯戸(宿)の主人が大湯(湯元)から湧き出る源泉を汲み、真新しい檜(ひのき)の樽に詰める。これを人足たちに担がせて、昼夜を通して江戸城へ運ばせた。所要時間15時間。汲んだ時には100度近くあった熱湯が、お城へ着く頃にはちょうどよい湯加減になっていたという。


 お汲湯(くみゆ)のルーツとしてますます高名になった熱海には、大名から農民まで、さまざまな身分の 湯治客が訪れた。平蔵一行が泊まる「次郎吉の湯」は、原作では「次郎兵衛の湯」で、「熱海でもそれと知られた宿屋」らしい。宿の主人と平蔵とのアワビ談義から察するに、なかなか豪華な食事も出るようだ。また、平蔵夫婦が寝起きする部屋の他、相模の彦十と小者の弁吉が花札をしているような小部屋も2部屋を借りている。彦十の言う通り、これはかなりの贅沢。


 当時、庶民は素泊まりが基本で、食事は宿の設備を借りて自炊するのが普通だった。目の前が相模湾という場所柄、新鮮な魚介類が豊富で安く買えたことも、熱海人気を高めた理由のひとつだ。



熱海七湯


●野中の湯・・・泥の中から湯が沸いていて杖で突くと吹き出したという。野中山のふもとにあり、湧出      地(ゆうしゅつち)が浅いため、入浴向きではなかった。


●大湯(間歇泉)・・・地面を揺るがす勢いで1日6回湯と蒸気が交互に噴出したという。熱海温泉の湯元だったが後に枯湯。現在は人工的に噴出させている。


●小沢(こさわ)の湯・・・小沢にあったため、土地の人たちから「小沢の湯」と呼びならわされた。温泉たまごで有名だ。


●清左衛門の湯・・・その昔、清左衛門という農民が馬を走らせていた時、この湯壺に落ちて焼け死んでしまったことから名付けられたという。


●風呂の湯・水の湯・・・豊富な湯気を利用して、饅頭(まんじゅう)を蒸したり酒を温めたりした”風呂の湯”と、塩分のない”水の湯”が隣り合って並んでいる。


●佐治郎の湯・・・別名を「目の湯」といい、眼病と火傷(やけど)に効くとされた。佐治郎という者の邸内にあったことから、この名が付いた。


●河原湯・・・かつて東浜と呼ばれた石ころだらけの河原に湧き出る源泉。七湯のうち唯一、地元の住民や近郷の人々が自由に入浴できた。




原作を読む!


鬼平犯科帳(13) 第1話「熱海みやげの宝物」


ゴボウのような容姿の馬蕗の利平治が初登場


 馬蕗とは、ゴボウのこと。ドラマでは、平蔵が利平治の嘗帳のありかをずばり言い当ててみせるが、原作では、高窓の若頭を見逃してもらう代償として利平治自ら平蔵に差し出す。また、ドラマではラストで身罷(みまか)ってしまう若頭だが、原作では利平治の昔の女の娘と深い仲になり、盗賊から足を洗う。嘗帳の預け先も、実姉ではなく、赤の他人である茶店の夫婦。原作の利平治は、ゴボウのような容姿に反してずいぶん肝が太い。


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25.≪第2シリーズ≫ 第20話 下段の剣

2014年06月08日(日) 23時41分14秒 テーマ:鬼平犯科帳

平蔵の息子・辰藏が惹かれた剣客は

               かつて江戸一の盗賊の用心棒だった


 平蔵の嫡男・辰藏は、最近剣の稽古に力を入れている。それは、辰藏が通う坪井主水(もんど)道場にふらりと現れた剣客・松田十五郎の剣に惹かれたからだった。辰藏の話を聞いた平蔵は、下段に構える独特の剣法から、松田が実は松岡重兵衛だと見破る。松岡h、平蔵が「本所の銕」と呼ばれ、道を踏み外しそうになっていたところを、体を張って踏みとどまらせてくれた恩人だった。その松岡が、旧知の盗賊仲間から押し込みの話を持ちかけられて・・・・・。




長谷川辰藏の成長物語


お調子者だが根はまじめ


 長谷川平蔵の嫡男・辰藏は、平蔵同様実在の人物だ。明和7年(1770)生まれ、平蔵25歳、久栄18歳の時に誕生した第一子であった。


 原作者・池波正太郎は、辰藏を、お調子者で酒と女に目がないという性格に設定した。そんな辰藏がドラマシリーズに初めて登場するのは、第1シリーズ第19話「むかしの男」。岡場所遊びが過ぎ、夜更けに帰宅して久栄に大目玉を食うなど、まさに原作の設定通りだと言ってよい。


 だが辰藏はお調子者である一方、根はまじめ。平蔵が日々「わしの留守中はお前が主だ」ときつく言っていることもあり、父不在中は自分が家を守るのだ、という意識を持って育った。「むかしの男」で、夜中に久栄の寝間から怪しい物音が聞こえると、怖じ気づくこともなく駆けつけて曲者と対峙(たいじ)した場面などからも、そんな辰藏のまじめで優しい性格がうかがえる。


 剣は坪井主水道場で念流を学ぶが、呑み込みが遅く、なかなか上達しない。悪(わる)友だち・阿部弥太郎に岡場所遊びを教えられてからは、稽古をさぼることも多かった。ところが本作の頃になると剣術の面白さに目覚める。きっかけは松田十五郎(松岡重兵衛)の「下段の剣」だった。その圧倒的な強さに惹かれた辰藏は、わざわざ松田(松岡)を訪ね、稽古をつけてもらう。後年、辰藏の剣は、坪井道場の四天王と呼ばれるほどに上達し、目覚ましく成長する。平蔵の役目に一役買うこともしばしばであった。


 史実の辰藏は成人すると長谷川平蔵宣義(のぶのり)と名乗り、27歳で江戸城西の丸に勤仕。のちの将軍家鷹狩の際に付き従ったこともある。また、57歳のとき山城守(やましろのかみ)に任ぜられ、従五位下(じゅごいのげ)に叙(じょ)せられた。



原作を読む!


鬼平犯科帳(7) 第5話「泥鰌の和助始末」


「1話で2度おいしい」濃密な読み応えの傑作


 原作は「泥鰌の和助始末」。第1シリーズ第15話の同名ドラマは、原作から和助のエピソードだけを、本作は松岡重兵衛の挿話だけを抽出ぢたもの。それほど原作は、いつにも増して中身が濃い。ドラマでは牛久の小助が松岡と組むが、原作では和助が松岡と組む。


 辰藏は原作にも登場するが、松岡の剣に憧れることはなく、立ち合うシーンもない。ドラマで平蔵は捕縛現場に出張らないが、原作では出張り、松岡の最期を看取る。平蔵が瀕死の松岡を抱きかかえ、旧知の2人が交わす言葉のやりとりが何とも哀切だ。


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25.≪第2シリーズ≫ 第19話 春の淡雪

2014年05月11日(日) 17時31分04秒 テーマ:鬼平犯科帳

同心・大島勇五郎不穏(ふおん)なきに

                 平蔵は事件のにおいを感じ取る


 同心・大島勇五郎は、密偵に使っている雪崩(なだれ)の清松(きよまつ)に百二十両の博打(ばくち)の借金があった。この借金をネタに、清松は大島に、盗賊・池田屋五平をゆする手伝いをさせる。まずは五平の娘・おうめを誘拐。清松は五平に、千両出せば娘を返すが、千両が用意できないなら、例えばお盗めをしてつくったとしても見逃してやるからと、大島の身分を明かした上で、悪事をそそのかした。大島の動きに不穏なものを感じた平蔵は、密偵たちに見張らせることに。とうとう取引の当日が来てーーー。



意外に苦しかった同心たちの暮らし


武士の貧困につけ込む悪人


 捕物の現場ではあまり頼りにならないが、どこか無邪気で憎めない同心・大島勇五郎。苦笑まじりとはいえ、上司のウケもそう悪いものではなかったが、裏では博打で大きな借金をつくっていた。これをネタに大島へ脅しをかけたのが、大島が密偵として使っていた雪崩(ゆきなだれ)の清松(きよまつ)。博打の借金を役宅へ取り立てに行くと脅された大島は、最初のうちこそ武士らしく鷹揚(おうよう)に構えていたが、結局は清松の言いなりになってしまう。


 実は、武士というのは身分こそ高いが収入は意外と低い。その額は役職によって決められており、現金ではなく米で支給される。換金すれば手数料を取られるし、その時によって相場は変動するから、米の価格が下落すれば損をしてしまう。大名や旗本ですら、江戸や大坂の大商人から借金をしていたという。


 そんななか、幕府から火付盗賊改方に与えられる予算はとても必要経費に追いつける額ではなく、長谷川平蔵宣以自身も、しばしば自腹を切っていたようだ。ドラマで描かれることはないが、実際は、そうした費用を捻出(ねんしゅつ)するために、銭相場にも手を出していたらしい。


 第2シリーズ第15話「密告」に、武士の貧しさを表す「百俵六人泣き暮らし」という言葉が出てくるが、武士の中でも最下級の御家人である同心の年俸は三十俵二人扶持(ぶち)と決まっていて、一俵を4万円として現在の価値に直すと、約156万円。ちなみに現在の警察官の平均年収は、約800万円だとか。清松に博打好きと言われた大島が、決して好きでやっているのではなく、給料ではろくな刀も買えぬからやむにやまれずやっているのだと返すのも、あながち強がりや言い訳というわけではなさそうだ。実際に町方の与力・同心が大っぴらにワイロを受け取っていたことを思えば、馬鹿正直に博打で多額の借金を抱え、最終的に切腹までした大島は、むしろ哀れにも思えてくる。


 それでも我慢して勤めていれば、いずれ与力に出世して給料も上がるだろう、と現代人は考えるものだ。ところが、同心はいつまでたっても同心のままと決められていた。つまり、出世の可能性はゼロ。平社員から課長になり、次は部長に・・・・・といった現代社会ではある程度用意されているはずの出世街道が、当時はなかったのだ。たとえ無遅刻無欠勤で仕事に励み、どれほど手柄を立てたとしても絶対に報われない。一攫千金(いっかくせんきん)を夢見るのも、無理もないことかもしれない。


 そんな同心の悲哀へつけ込むのが、清松のような小悪党たちだ。日頃は下手に出つつ、自分が悪事を働く時には逆に彼らを利用する。こうした手合いは実際、特に珍しくなかったようだ。北町奉行所にせっせと協力する一方で裏ではあくどいまねをしていた播磨屋吉右衛門という岡っ引きが、長谷川平蔵自身の手によってお縄になったという史実もある。




原作を読む!


潔い死にざまを見せた 若き同心と平蔵の哀しみ


 女のように色白で、ただひたすらにおとなしい原作の大島同心だが、ドラマでは冒頭2つのシーンによって、いわゆる”今どきの若者”的な肉付けを施し、大島のキャラクターに面白みを出している。


 大島を失った平蔵が揺るぎない自信の裏に秘めた覚悟と諦念(ていねん)を佐嶋与力に吐露(とろ)するというしんみりとした幕切れも、ドラマでは平蔵と久栄、天野与力がにぎやかに笑い声を立てるさわやかなラストシーンに変わっている。


ー鬼平犯科帳 DVDコレクション 25-












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